第2話『超大陸。その名はパンゲア』
ごめんなさい、今回は新しい人は出て来ません
藍の手から放たれる青い光は、やがて立体地図のようになった。
「これは……?」
「今、この幻想郷の上空にあるものの全容だ。これを調べていて結界の展開が遅くなったんだ。本当にすまない。さて……」
そう言って藍は一息置く。この様子は、まるで……。
「大陸……」
「そう。その通りだ。今、幻想郷の上空に存在するこれは、博麗大結界という枠の中に収まるように空間を捻じ曲げて収縮、圧縮してはいる。
だが……火山もあり、湖や川も、砂漠に渓谷もあり、それ以外はその土地の多くは密林に支配されている。その広さも非常に広く、地球そのものの大地と同じだけはあるだろう」
地球そのものにある大地と同じだけの広さの大陸が、幻想郷上空に浮かんでいるというのか。
「空に浮かぶものは、おそらく……過去に地球に存在したと推測される、全ての大陸の集合体とされる『超大陸』。即ち……『超大陸パンゲア』だ」
「パンゲア……」
超大陸パンゲア。古生代デボン紀の辺りにあったとされる、地球上で唯一の陸地となった大陸。その後、大陸移動やらなんやらでそれらは分裂し、色々変遷を得て現状の地球の姿となったわけだが。
「それで? 俺たちはどうすればいい?」
「パンゲアを移動させてきた元凶と交渉、和解するか説得して、転移させるといったところだな。最悪、破壊しても構わないが……そんなことをすれば、まずこちらへの被害もデカくなるだろう」
なるほどねぇ。
「どこに転移させるんだ?」
「まだ考え中だが……亜空間でも作ろうかと考えてる。冥界みたいにすればいいだろう」
へー、纏まってきたな。
「じゃあ、とりあえず俺たちは向こうの探索から始めないといけないわけだ」
「そうだな。とはいえ、人の存在しない状況でも生きられる古神か何かはいるだろう。まずはそいつを探してくれ。一時的に結界を消しはするが、お前たちが探索に行ったら保護のためにもう一度結界を張る。用心するようにな」
……ん?
「あのガーゴイルたちはなんなんだ?」
「そこはまだ解析が終わってない。おそらく、向こうにいる『誰か』のものだろうな」
あれだけ大量のガーゴイルを作れる何者か、か……。ガーゴイルというのは、突き詰めればゴーレムのようなもの。本来なら自我というものは存在せず、主命にのみ従う機械に近い。
それを作り出すのはそこまで難しくはない。難しくは、ない。が……あれだけ大量のものとなると、また話は別だ。誰か生産者がいるとして、その生産者が大量であるか、もしくは同時にたくさん作れる必要がある。
つまりは、ガーゴイル工場でもない限りは、相手の能力は非常に高いと予想しておいた方がいいだろう。
「このメンバーで行くのか?」
「なんだ? 不安でもあるのか?」
「まあ、な……」
「大丈夫だ、このメンバーじゃそうそう負けりゃしねぇ」
言われてみれば、それもそうだ。
この中では比較的能力の劣る幻真も、あの程度の敵ならなんとかできるだろう。それに、ピンチでも最悪俺たちで補ってやればいいし。
「それじゃあ、とりあえずしゅっぱーつ」
終作はそういうと同時に、次元の穴を俺たちの足元に作り出した。結界を消すとかいう話はどうなった!?
◇◆◇◆◇
「ヒュー。相変わらず数の多いことで」
終作はそう言いながら、次元の穴を作り出す。そこから大量の黒い柱のようなものが上空へ撃ち出され、それは次々とガーゴイルたちに飛来し、ガーゴイルを撃ち落としていく。
俺と白界、それに幻真は固まって、襲いかかってくるガーゴイルたちを撃退しながら終作の方を見た。
「くそっ……これじゃパンゲアに上陸するのも一苦労だ。白界、何か持ってないのか!?」
「あるにはある。けど……」
「やっちゃえよ白界!」
「はぁ……」
軽々しく言った幻真に対して、白界はため息をつきながらも上の方へ1人で向かう。
そして、ガーゴイルの注目が集まってきたところで白界は指をパチンと鳴らした。
「受符『魔の神たるは全能の業』」
その宣言とともに、白界の背後から門が開き、終焉の一角が姿を現わす。
夥しい数の悍ましいソレ……ギリシャ神話に語られる最悪の怪物、テュフォンが、その腕を、首を、命を伸ばしてガーゴイルたちに襲いかかる。
「いったいいくつの首があるんだ!?」
「千万は超えてる」
「なっ……」
それだけの攻撃があれば、ガーゴイルを一掃するのも容易い。
「今のうちだ、行くぞ!」
大和はそういうとテュフォンが首を出している白界の門を残し、幻真、白界、終作と共にパンゲアへ上陸すべく、高く高く飛翔した。
◇◆◇◆◇
「ここが……」
「パンゲア……」
パンゲアの上空から、パンゲアを見つめる。
パンゲアの縁の部分から内側に入ると、ねじ曲げられた空間の内部に入ったということか、パンゲアの姿は一変し、元々の認知していたものよりもずっと巨大になった。
その巨大な天空大陸を支配するのは……圧倒的なまでの、緑だった。
一面を木々が覆い尽くし、時折トンボのような虫が空を飛んでいる。
そして、そのトンボを狙った鳥によってトンボは食べられる。さらにはその鳥が急に現れた肉食の恐竜によって食べられる。
「なんだここ……」
「圧倒的なまでに厳しい自然環境、か」
「止まりなさい!」
俺たちは少し感動しながらその景色を見ていると、不意に少女の声が響いた。
「お前は?」
「私はアイリス。『目』を司るもの……あなた達のことも全部見ていたわ。目とは全ての恐怖の元となるものの一つ。怪物達の母胎にも近いわよ」
「お前はここの住人か!? 何が目的だ!」
「目的? 知らないわよ、そんなの。私たちは主人の命に従うだけだもの」
"たち"……?
他にも、いるってことか?
「まあ、とりあえず主人の元へ連れてってあげるわ」
アイリスはそう言うと、目のような形と模様の円盤の上に飛び乗る。まるでウル○ラマンに出てくるガ○Qみたいな見た目だな。知ってるやつの方が少ないだろ……。逆になんで俺はこんなものまで外の世界で学んでしまったんだろうか。
ていうか、それに乗って飛ぶのか……? すごい様相だぞ。
「とりあえず、ついて行くしかないか」
俺の言葉に3人は従って、アイリスの後を飛んでいった。