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幕間『己がメリクリ①』

今回は本編中断からの幕間です。描きたかったんです……!

次回もこんな感じだと思います。

 イルミネーションで彩られた町景色。幻想郷の中心に霊斗によって植えられた、大きなモミの木の下で。

 大量にいる若い男女に負けることなく、少年少女の見た目をした老いぼれはイチャイチャとしていた。


 片方……零は冬らしく、黒いコートの少し渋さを感じさせる装いだ。一方、神姫は真っ赤で白いモフモフのついたポンチョとミニスカ──要するに、サンタコスである。


 モミの木……クリスマスツリーに大量に飾られたイルミネーションが、2人を明るく照らす。


「姫ちゃん、今日なんの日だ」

「今日……クリスマスですよね」

「そう。だから、これ」

「うわぁ……! ありがとうございます、兄さん! 大好きです!」

「おっと」


 そう言って、零はどこからか赤いリボンの巻かれた緑の箱を取り出した。

 差し出された神姫は頬を赤く染め、喜びで零に飛びつく。

 零は驚きながらも、満更でもなさそうにその衝撃を受け止めた。


「うへへ……俺も姫ちゃんのこと、大好きさ」

「もう、兄さんったら。だらしない顔してますよ」

「姫ちゃんが可愛すぎるのさ。そういう姫ちゃんだって、頬、赤くなってるよ」

「それは……だって。兄さんが……」


 零の胸に顔を埋め、ボソボソと小さな声で言った言葉の続きは、零の耳には届かない。


「え、俺?」

「兄さんが、素敵すぎるんです……!」


 そう言って、神姫は恥ずかしさを隠すように顔を俯かせる。


「……やっぱり、姫ちゃん。俺、君のことが大好きだ……!」

「言われずとも、知ってますよ」


 ふふっと、そう笑った神姫は零の胸から顔を出して、零にむかって微笑んだ。

 零は神姫を抱きかかえたまま、能力で次元の穴を開き、背中から飛び込んでいった。その後のことは、誰も知らない。


◇◆◇◆◇


「パルスィ!」

「あら、アルマ。何かしら」

「クリスマスって知ってるか?」

「クリスマス……知ってるような、知らないような」

「おいぉい……」

「冗談よ。烏天狗から新聞受け取ったわ」


 そう言って、パルスィはクスクスと笑う。


「そうか。なら話は早え。パルスィ、振り返ってごらん」


 そう言って、パルスィが振り返った視線の先──そこには、冥界に植えられたクリスマスツリーと、その根元にプレゼント箱があった。


「……凄い」

「パルスィのために用意したんだ。君だけのためのクリスマスの準備だ」

「嬉しい……!」


 そう言って、パルスィはクリスマスツリーの方へと駆けて行く。


「ねぇアルマ? 開けてもいいかしら!」

「勿論だよ、パルスィ」


 アルマが許可を出すよりも早く、パルスィはプレゼントの包装を破り、中からネックレスを取り出した。


「うわぁ……!」


 なんの変哲も無い、ただ緑色の宝石が嵌め込まれただけのネックレス。

 しかし、それは彼らの絆を体現する、世界で1つだけのステキな贈り物だ。


「アルマ、ありがとう! 嬉しいわ!」

「いいってことさ。あの子達にも、何かしら用意してあげよう」

「そうね。あ、そうそう。人間たちは、クリスマスは鶏肉の丸焼きを食べるそうよ。私たちもやりましょ」

「おお、そりゃ楽しみだ!」


 そう言って、アルマは朗らかに笑った。

 パルスィもアルマの腕にひっつきながら、アルマに対して微笑みを向けた。


◇◆◇◆◇


「あら、何かしらこれ」


 月を支配する姉妹は、月の都で赤い箱を見つけた。それを影から観察する青年は、悲しげに地上へと戻ろうとする。


「あら、お客さん。どこに行くの?」


 転移を使うその直前、青年……白は女性に引き止められる。魅力に満ち溢れた、彼が最も大切にする2人だ。だが、今の彼らの幸せを崩すわけにはいかない。


「ねえ。去ろうとしているところ悪いんだけど、私、今は独り身なのよ。お兄さん、一緒に飲んでくれないかしら?」

「え……でも……」

「今日は救世主(メシア)の生まれた日なのですよね。こんな目出度い日に、1人で悲しそうな顔しないでください」


 2人のその言葉に、白は瞳を潤ませながらも頷く。


「ああ……。ああ……! ありがとう、ありがとう!」

「ふふ、じゃあ、乾杯といきましょう」

「ああ。乾杯!」


 3人はシャンパンの入ったグラスを上品に掲げ、口元へ運んだ。


◇◆◇◆◇


「早苗……ちゃん……」

「あら、あなたは……。最近、来てくださってる方ですよね」

「うん、まあ、ね……。それで、その……早苗ちゃんは、人里とか行かないのかい?」

「? まあ、はい。気になることは気になりますが、まだお勤めがありますから」


 洩矢神社を訪れた青年……聖人の問いに首を傾けながらも、早苗は素直に答えた。


「……そっか。そうだよな。じゃあ、とりあえず、これ」


 聖人は安心したような悲しむような、複雑そうな表情を浮かべながらも、後ろ手に持っていたプレゼントを取り出した。

 早苗は純真無垢な瞳でそれを見て、ハッと思いついたように目を輝かせた。


「お賽銭ですね!? やったー信者が増えたー!」

「ええっと……あはは」


 聖人は困ったように頬を掻くと、後ろから見えざる何かに背中を押された。


「ええっと……諏訪子様、神奈子様。ありがとうございます、ちょっと勇気が出ました」


 聖人はそう言うと「あのっ!」と声を張り上げる。


「早苗ちゃん。それは、お賽銭じゃなくて……その、今日……クリスマスだから、さ」


 聖人の発言に対して、少し固まった早苗はきっちり3秒後にボッと顔が赤くなり、降る雪が蒸発するほどに体温が跳ね上がった。

 顔が赤くなり、俯いて恥ずかしがる早苗と同様のリアクションの聖人は、踵を返す。


「今日は……えっと、帰るね」

「ま、待ってください!」


 階段を降りようとした聖人を、早苗は引き止める。


「……この後、お時間ありますか? ちょっと待ってくだされば、一緒に人里……行きま……せん、か……?」

「も、もちろん喜んで!」


 聖人はそう言うと、消えない笑みが顔に張り付いたように、ニヘラ、と笑った。




 これは、とある世界で起こった、たった1つの聖夜の物語──。

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