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第16話『原初の魔と双子』

今回は後半は零達回、前半は物語終盤一歩手前な感じです。

 俺とアイリスが戦っていると、唐突に神殿は……いや、パンゲアという大陸は崩落した。

 床も、神殿も崩壊し、俺とアイリスは下にある人里へと真っ逆さまに落ちていく。

 そんな中、俺の目に映ったのは──余りにも巨大な、人型の光。


『命、海、冥、天。そして平。なるほど、確かに原初の混沌を作るには要素は足りぬように思える。だが、まだだ。まだ足りぬ』


 崩落し、下へ落ちていく中で巨大なその人影は手を伸ばす。それは──アイリスを握りしめて、自らの胸へその手を当てる。


「あ……」


 次の瞬間、人型は翼が生え、神々しいその姿は異形の者へと変貌する。


「あれは……!」

「あれこそが、原初の混沌。カオスなりし者。つまり──俺たちは、止められなかったってことだ」


 終作は落ちる俺の隣で次元の穴からその人型……カオスを見て、嘆息しながらそう言った。


「えっ、ちょっ、どういう状況!?」


 シルクはそう言いながらも、魔法でパンゲアの瓦礫を粉々にすると、空から飛翔して落ちる俺を受け止めた。

 シルクが降りるとそこにはパンゲアへと向かった人がみんな居て、一様にカオスの方を見ていた。ある人は打ちひしがれ、ある人は絶望したように。


『原初の魔も加わった。善悪を測り、これにて世界の平衡は満ちた。さて、始めようか。因果逆転、創世遡行。世界は今、開闢の時を迎える。迎合せよ、世界を砕け』


 カオスがそう唱えると、大地の一部は、天空の一部は、崩壊していく。大地は天へと昇り、雲は大地へ下降する。カオスを中心に、世界の姿は変貌していく。


『手始めに……混沌の姿(カタチ)をお見せしようか』


 カオスがそう言った瞬間、天と地は混ざり合い、一つになった。

 それは夥しい魔力を帯び、そして羽のある蠍の姿をとってこちらに襲いかかってきた。


「あれは……混沌の遣!」

「混沌の遣?」

「そう。謂わゆる、世界破壊の執行者ってところだ。奴はあんな風に、世界を素材にして魔物を生み出す。世界はそうして破壊されていった」

「状況は分からんが、襲いかかってくるなら、倒すしかねぇ!」


 終作の解説に対して、幻真はそう言うと、霊衣を纏って混沌の遣に打撃を与える。

 次の瞬間、混沌の遣は結晶体になって打ち砕かれていった。


「攻撃は効く! なら……立ち向かうぞ!」


 俺の言葉に応じて、幻真を筆頭に全員が次々と生み出される混沌の遣へと攻撃をぶつける。


『それでこそだ。フハハハハ!!』


 だが……一方で、俺自身は段々と俺の力が弱まっていくのを感じていた。

 これは……地球の力が、奪われている?

 地球を素材として、混沌の遣が生み出されているからか?


『では、生産量を上げるとしよう』


 カオスがそう言うと混沌の遣は一気に増えた。やがて、俺達の足場も空へ浮かんでいく。


「なっ……!?」

「聖人! そこを降りろ!」


 俺が忠告した直後、混沌の遣に気を取られていた聖人はそのまま混沌へと取り込まれていった。


「ぐっ……あぁぁぁぁ!!」

「聖人!」


 名前を呼ばれても、聖人は混沌に混ざっていく。

 蝙蝠のような羽が生え、尾骶からは蠍の尾が伸び……見るも無残な、悍ましい悪魔の姿に変化した。

 次の瞬間、俺は聖人の拳によって殴り飛ばされる。


「うぐっ……!」

「フハハハハ!!」


 悪魔になった聖人は一瞬で移動し、また戻る。

 その一瞬の間に気絶させられた俺たちは、混沌へと飲み込まれていった。


◇◆◇◆◇


「出来ました! 兄さん!」

「さんきゅー、姫ちゃん!」


 神姫は、自らの手で針と糸、そして布で完璧に直された黒いコートを零へと投げる。どこを直されたか分からないほどに完璧に直された黒いコートを零は受け取り、そして──。


「姫ちゃんの臭いがする……!」


 神姫が握っていた部分を鼻と口に当て、変態チックにクンカクンカ。

 ヒルコが若干引いて攻撃を戸惑うのを他所に、そのコートを身に纏う。瞬間、彼のコートに白い紋様が浮かび上がり、それは広がって彼のコートを白く染める。


「……ッ!」

「俺の霊衣は……やっぱり、こうでなくちゃな。さて、さっきとは一味違うぜ」


 零はそう言うと、右手をヒルコへと向ける。その瞬間ヒルコの動きは停止し、色は失われる。


「能力の使用も問題ない……それどころか、強化すらされている。こりゃ、すげぇな」


 零は満足げにそう言うと、神姫にウィンクをする。意図を汲み取った神姫は、零による時間の停止を解除すると同時に、ヒルコの背へその両腕を回す。


「『凄いわ。大きくなったわね、ヒルコ……』」


 完璧な世帯模写からのその一言で、ヒルコはその場に崩れ落ちる。

 同時に目尻から涙は線を描き、虚空で埋められた3人のいる空間に光を与えた。


「かぁ、さまぁ……」

「よしよし。頑張りましたね」


 それは恵みの涙。祝福の輝き。

 神姫に縋りつき、ただただ泣くヒルコ……否、神姫に救われた七福神が一柱、福神えびすとなった少女を、神姫は優しく抱きしめた。


 えびすの輝きは闇を照らし、その力は世界に祝福を授ける。

 闇に染まった世界は、あまりに幻想的で美しい花畑へと生まれ変わった。


「これは……」

「ふぅ……浄化の力、でしょうね」

「姫ちゃん、ありがとうな。俺はこんなこと、出来なかった」

「兄さんのためですから」

「じゃあ、ここからは姫ちゃんに出来ないことを俺がする番だ」


 零の言葉に嬉しそうに答えた神姫に対して、零はそう言うと、ヒルコを連れて外の世界へと出る。


「あ、零と神姫さん。それに、その子は……」

「アルマか。ヒルコのことは無事解決した。そっちも問題なさそうで何よりだ。お前ら、ここで少し待ってろ」


 零はアハシマにヒルコを預けて、2人を先ほどの世界に送り出す。

 そんな零と神姫、アルマとパルスィ。4人のその眼に映るのは──。


「しかし……こりゃ、ひでぇ」


 ──最早(もはや)、原型をも保っていない星と、そこに住む住人の姿であった。

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