第13話『天空にて』
お久しぶりですね皆さん。更新でございますの。
今回は話が大きく進みます。
登場するのは白刃、長命、優一、そして謎の青年です。完全に名前を明かすタイミング逃してます。
「おや。招いてもいないお客さんが来ているね」
「お前は……?」
「私は影夢。時を駆け影を司るもの」
長命と白刃の目の前に突然現れた影夢はそう言うと、影のような鋭い腕を2人へと振るう。
「いきなりかよ!? 卑怯じゃないのか!」
「卑怯? 君たちが私にしたことに比べればそんなこと……!!」
長命は金属の肉体で影夢の一撃を防ぐがそれもつかの間、影夢の影のような腕は分散し、細くなって白刃と長命を縛っていく。
「そこで見ているといい」
「ぐっ……」
「クッ、卑怯な……小賢しい! 武士の風上にもおけぬ!」
「負け犬の遠吠えだね」
影夢はそう言うと長命と白刃が先ほど転移した場所に札を置き、そして片手で印を結んで詠唱を唱える。
「『神よ、来い。我が名の元に世界の魔力を礎として汝を召喚す。我こそは影に潜み時をも操る罪人』──ッ」
それは、紛れもない最高神の召喚だった。
間違いなく世界を創った者であり、カオスを作るための鍵となる神であった。
四つの巨大な岩塊でその身の四方を囲う彼女は、しかし頭が顕現したところで召喚は中断され、中途半端に残った頭部と岩塊だけが残って居た。
「──くそッ! お前!」
召喚者である影夢の命の失墜に伴い、召喚は止められたのだった。
影夢は自らの肉を貫くそのヤイバを見る。
ただの剣だ。だが──同時に、その剣が只人のものではないことは容易に想像できる。
その剣の名を、菊一文字。振るうは激動の日ノ本が誇る天才剣士、随一の剣使い。沖田総司。
彼は暗殺者とも見紛うその能力で、白刃に召喚されたとほぼ同時に後ろから影夢の暗殺を果たしたのだ。
「──友よ、無事か」
「貴様……そんなことができたのか!」
「すまなかったな。大丈夫だ、助かったぞ。汝、我をなんと心得るか。我が殿が随一の家臣にして、妻なるものぞ」
白刃と長命を拘束する影を切り裂いた剣豪に対し、白刃は礼を言いながらも影夢の問いに答えていた。
「我が名は姫鶴白刃! 殿がために刃を振るう一の剣にして、最強たる我が軍の言わば本体そのもの! その内の一人を取り出すなど、造作もないことよ」
白刃はそう言うと頭だけが残った、召喚された神に剣の切っ先を向ける。
「──悪いが。貴様にも死んでもらう。我が殿のため、殿の障害としてな」
『……天、冥、海、命。いずれも死亡。ワタシの残留生命、残り僅か。故に、同期、統合を開始する。抵抗干渉、零。スムーズに回帰開始』
「白刃急げ! なんかヤバそうだぞ!」
「言われずとも!」
白刃は先ほどの沖田総司をはじめとする新撰組を召喚し、新撰組のいずれもが状況を察知し、一目散に頭だけの神へと迫る。
あと刹那の時、薄紙一枚。
世界は、光に包まれた。
爆轟が鳴り響き、鳴動する天地を他所に、それは誕生した。
神殿の天井は砕け、新たに誕生した宇宙は全てを飲み込むべく蒼天へ舞い上がる。
『──いい地だ。我が対なるものはここまで遺したか。よいぞ。では──』
その宇宙は、宣言する。全てを回帰に戻し、永劫を零へと還すため。
『我は、終わらせるとしよう』
◇◆◇◆◇
少し時は遡り、優一&青年VSウラノス
宇宙が、落ちる。
そう見紛うほどに巨大な腕が、それ相応の質量を伴って優一と青年の上に振り下ろされる。
「覚醒『創造者』。ここからの俺は、一味違うぜ」
その腕を、優一は1人で食い止めていた。
それは、結果を、力を、因果を、運命を、物質を、時を──ありとあらゆるモノを創り出す彼の全力にして本来の姿。
その姿は、紫色の彼の両目も黒くなり、その肉体以外の全ては『黒』に染まっている。
「さぁ……始めようか」
挑み、護り、抗う『勇者』たる彼を『少年』と称するなら。
この状態の彼は『人間』の迎える果ての姿であり、成熟しきったモノ……謂わば『壮年』にして、最強の姿である。朽ちることなきその肉体に、精神に時を重ねれば、それは彼の力となる。
そんな彼は、どこからか一振りの黒い刀を出現させた。黒くも光沢を放つそれは、優一の愛剣にして次元最強の剣の一角。
「ああ……久しぶりな気がするな。『泉』」
優一は慈しむようにその剣の名を呼び、そして巨大な敵、ウラノスに向かい合った。
「ふん……貴様も霊衣を使うか」
「霊衣とは少し違うだろ」
「似たようなものだ。霊力が物質として永続的に具現化できるなら、それはもう霊衣足りえる」
ウラノスはそう言うと、影からの青年による奇襲を手に持つ鎌で防いだ。
「……っ!」
「その程度で我に奇襲か? 貴様の武器から漏れ出る力、ハッキリと感じ取れるぞ!」
ウラノスはそう言うと、さらに何もない空間から射出された青年の剣をはたき落とす。
「甘い!」
ウラノスはそう言いながら腕を組む。次の瞬間、大量の小さな天体が群をなし、優一と青年にその矛先を向ける。
「……」
ウラノスによってそれらが射出されると同時、宙空には剣の群れが現れ、天体を打ち消していく。
「おお! すげぇ! こりゃ、俺も負けてられないな」
優一はそう言うと、泉を手にウラノスへと飛翔する。刹那、泉とウラノスの鎌は衝突しあい、空間にヒビが入る。
「……!」
青年によって再び鋳造、射出される数多の剣は、ウラノスの創り出す球状の防護壁に阻まれた。
「惜しい! だが……この調子なら!」
優一はそう言って、泉を構え直す。だが、青年はそれを制止し、赤いドリルのようなものを手元に出現させた。
「お前がやるっていうのか?」
「……」
優一の問いに青年は頷き、その剣を中心に空へと浮かび上がる。
その瞬間、青年と剣以外の全ては魔力の奔流によって空間から隔離される。
「うおっ……!」
「むぅ……っ! 大いなる聖典の剣か!」
「……」
青年は、その剣の切っ先をウラノスへと向けた。その瞬間、奔流は一つに纏まり、ウラノスを包む結界に傷をつけた。
それは結界を裂く裂傷となる。
それをウラノスは補強しようとするが──。
異物が、結界内へと侵入する。
青年は魔力の奔流を止め、グッドサインで2人の対決を見送った。
◇◆◇◆◇
「……貴様ら。流石と言うべきか。星を救いし者たちよ。これにて、終いとしよう」
ウラノスはそう言うと鎌を振り回す。それは魔力を帯び、最終的には剣へと生まれ変わる。
それは星の聖剣──俗にエクスカリバーと、そう呼ばれるものがいくつもの星を取り込んだもの。
「それにゃ同意だ。──覚醒剣技」
ウラノスが、巨大化したその剣を振るう。それは力を纏い、先ほどとはまた違った魔力の奔流を作り出し、優一へと解き放つ。
「エクス……カリバーァァァ!!」
「『真・エターナル・ブレード』」
優一は八色の光を纏う黒剣でエクスカリバーを真っ向から切り裂き──。
「さらば、天空」
「見事なり、次元の救世主」
纏った結界は剥がれながらも、泉はウラノスへと到る。その瞬間、ウラノスの身は真っ二つに切り分けられた。