表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/43

第12話『人里にて』

更新です!はい!今回はアルマ&パルスィ、零&神姫回です。正直こんなに時間かけたのにご期待に応えられているかすごい不安です!はい!ごめんなさい!それではどうぞ!

「……本当に、よろしいのでしょうか?」

「ああ。行け行け。お前の腕の見せ所だ。幸い、人里にガーゴイルが来る様子もないしな。むしろ、新たな抑止力が出現したってことはまた一つ厄介なことになったってことだ。まったくもって面倒くさい。そもそも、抑止力なんてそう頻繁に出てくるもんでもなかろうに」


 人里の中心、人里を警護する中で白刃は零に確認をとっていた。

 それに対して返答する零は心底面倒臭そうな様子でチラリと、傍らで落ち着かない青年を見ていた。


「白刃……で、いいのかな? 零もこう言っていることだし、早くあっちに行った方がいいんじゃないかな」

「拙者の名前を呼ぶな、変態。拙者には殿という大切な人がおってだな……」

「名前呼んだだけで!?」

「零殿、移動を頼めるだろうか?」

「ああ、勿論だ。白刃を頼むぞ、甲 長命」


 青年……長命の言葉を無視した白刃の言葉に、零はそう返して指をパチンと鳴らす。その次の瞬間、長命と白刃は石造りの何やら薄暗いところに転移していた。


「ここは……?」

「薄暗闇で近寄るな、変態」

「ねぇ待ってなんで俺そんなに変態認定されてんの!?」

「変態だからだ、人権ないくせに口答えするでない。……はぁ」

「変態は人権もないの!? ため息つきたいのはこっちなんだけど、というか、俺は変態じゃないし!」


 長命にため息をつきながら、白刃はスタスタと歩いていく。


「……こっちだな」

「分かるの?」

「うむ。『気』でな」


 白刃はそう言うと、やがて壁の一箇所を押す。それによって壁は開かれ、まばゆいくらいの光が射し込んできた。


◇◆◇◆◇


「……さて。あいつはいなくなったか」

「兄さん、どうしてあんなことしたんですか?」

「今回俺たちを呼び寄せたやつに『被害は最小限にね』って釘を刺されたからな。もちろん、姫ちゃん優先だぜ」

「ふふっ。心配してませんよ、信頼してますから」


 神姫はそう言って微笑むと、宙空に浮かぶそれに目を見やる。


「……では、私たちの相手はアレですね」

「ああ、そうだな」

「うぅ……面倒くさい」

「アルマ、そんなこと言わない。……来る!」


 パルスィがそう言った次の瞬間、宙空から2つの人型のものが手を繋いで滑空で突撃して来る。


「チッ!」


 零とアルマがそれに攻撃を放って4人からの距離を遠ざけると2つの人型は滞空し、やがて声を放った。その姿は幼子であり、非常にあどけない印象を受ける。まさしく少年少女のものであるそれは、多少なりとも子の親である4人の心に響いていった。


「僕はアハシマ」

「私はヒルコ」

「貴方は僕を」

「貴女は私を」

「「捨てたりしない?」」


 2人がそう疑問を発すると同時に、幻想郷の……4人の立つ大地は浮かび上がる。

 それに対して、零はシルクの方を向いて叫んだ。


「シルク! 2人と人里は守れよ!」

「任された!」


 シルクが敬礼で別れを告げると同時に、零達4人はヒルコとアハシマへと向き直った。


「お別れ終わり?」

「私たちと遊んでくれる?」

「1人づつな! 零、お前はヒルコを頼む。俺たちはアハシマをやる!」

「了解した!」


 アルマの言葉に頷いて零はヒルコとアハシマの間を裂くように、側面から攻撃をしかける。

 それによって2人が離れ離れになった隙に、零と神姫、そしてヒルコは別世界へ転移した。


◇◆◇◆◇


「待てー」

「ほらほら、こっちこっち!」


 零達が消えた後。俺たちは、鬼ごっこを始めていた。

 アハシマは鬼のパルスィから追われて、キャッキャッと逃げるのを楽しんでいる。


 ──どうしてこうなった?

 思い出すのは、戦おうとした俺とアハシマの間に入って、俺を止めたパルスィの言葉だった。


「子供なんだから、きっと遊びたいだけよ」


 確かに、今のところはこれといって戦う理由はないが。だが……ちょっと緩いんじゃないか。


 そうは思ったが、現状は2人が遊んでいるだけで、これといって問題は起こってない。人里を攻撃しようとした様子も見えないし、遊んでいるだけでもいいのかもしれない。


 むしろ、下手に攻撃してアハシマと戦闘になったら、それこそ人里が余波で大惨事だ。

 なら、これでいい。……ああ、これでいいのだ。


「ね? アルマ、言った通りでしょ?」

「ああ。流石パルスィだな」


 だが……。不安材料がないわけじゃない。

 俺たちは感情を司るもの、それ故に感情に関しては人一倍敏感だと自負してる。

 そんな中、どっちかっていうとアハシマよりもヒルコの方が重い感情を抱いているのは容易に感じ取れた。


「なぁ、アハシマ」

「ん? なあに、アルマにぃに」

「ヒルコってのは、どんな子なんだ?」

「んー……ヒルコ姉? なんていうかねぇ……怖いけどとってもカッコいい人だよ!」

「怖いけどかっこいい……嫌な予感しかしねぇ」


 アルマはそう言いながらも、ため息をつくパルスィの隣でニタニタと嗤っていた。


◇◆◇◆◇


「滅べ!」


 殺意を煮えたぎらせる少女の攻撃を零は能力による反射神経と身体能力の高さで避ける。


「別に疲れはしねぇが……これ、いつになったら終わる!? まあ、姫ちゃんに襲いかからないのはいいが……」


 零に攻撃する少女……ヒルコは、神として認められなかった者だ。イザナギとイザナミの世界創造の際、長子として生まれながらも出産の不祥事のせいで存在を歴史からほとんど隠され、もみ消された。


 同様の末路を辿った弟、アハシマを一人で育てながらも、彼女は世界への報復を願っていた。

 それからしばらくして彼女は報復の機会を得た。だがそのとき、彼女は呆気なく神の刃たる者に敗れた。


 その後、神の刃によって永い永い眠りについてどれだけたったのか。

 原初の再創造という大事件に伴って、彼女は弟、アハシマと共に目覚めた。

 その胸に燃ゆるは報復への渇望。憤怒と怨望の業火。


 ただしそれは──同様に起こる事件の一つでしかないということを、彼らはまだ知らない。


「死ね! 消えてしまえ!」


 ヒルコは過去に思いを馳せながら、怒りのまま全てを屠らんとする。

 灼熱と暴力の中で、零は能力を発動してヒルコの暴走を止めようとする、が──。


「くそッ! 当然のように能力は効かねえか!」


 終作が視ることができなくなったように、零や神姫の能力もまたほとんど効かなくなっていた。

 他者を対象に指定することができず、出来るのは主に自分への強化のみだ。

 それだけでも十分に強力ではあるが……ほぼ能力頼りで戦う零にとっては、些か不利な状況だ。


「くそっ……!」

「兄さん……もうちょっと待っててくださいね!」


 神姫はそう言いながら、零の外套に両手を当てた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ