第11話『神殿にて』
お待たせしました。
今回は幻真&終作&大和vsファミル&アイリス(ソロモン憑依)です
白界と幻真にポントスを任せて、俺たちはようやくファミルの待つ神殿にたどり着いた。
その瞬間、ファミルは口を開く。
「いやぁ。キミがここまで来るのはちょっと予想外だった。……そして、キサマもここに来たのか、摩多羅の」
「俺は摩天楼 辰だ!」
「どうだっていいね。摩多羅の縁者なら、ボクの敵であることに違いない」
「ファミル! お前の目的はなんなんだ!!」
俺の問いに、ファミルは嗜虐の笑みを浮かべながら答えた。
「そんなの、決まっているじゃないか。──宇宙の崩壊だよ」
「なぜそんなことを目論む!?」
「なぜだって? そうだね……強いて言うなら、宇宙の存続のためかな。宇宙に満ちるエントロピーをリセットするのに、一度崩壊させた方が効率がいい。宇宙とは一つではない。故に、一つの宇宙が崩壊したところでなんの問題もないのは明白だろう? むしろそうすればエントロピーを浄化できる。宇宙のためにはその方がいいんだよ。──それをわかっていない無知な輩は、あまり肯定的には思ってないようだが。だが、ボクは生命とその数、そして個の力の顕現だからね。生命の決定には従わずにはいられないのさ。パンゲアはなぜ崩壊したと思う? 答えは単純、パンゲアの住民達がそれを望んだからさ。旧き地球の住民、高度生命体ムー。彼らの信仰と言葉を受けて、ボクはパンゲアを滅ぼした」
ツラツラとファミルは言葉を連ね、そして凶悪な笑みを浮かべた。
「……そこは問題じゃねぇ。俺たちがお前を止めようとするのはそこじゃない。……意味もなく必要以上に宇宙を破壊し、それを愉しんでいるから問題なんだ。今すぐやめろ、地球で誕生した外なる神……ファミル=アース!」
ファミルの言葉に対して声を荒げた終作に対して、ファミルアースは笑顔のまま反論する。
「おや、ボクを外なる神と、そう呼称するのかい。勘違いしないで欲しいんだけど、ボクはキミ達のような外なる神ではない。あんな醜悪で、愚鈍で、美しさのカケラも見当たらない“ただ生きているだけのもの”と同価値に扱われるのは、些か腹も立つ。人間は美しい。何故なら、自らの意思で動くからね。あの些細な時間の中、何か意味を遺そうとしている。それに対してキミ達はどうだい。力がある、時間がある、ただそれだけで踏ん反り返って偉そうにしている……傲慢だと思わないかい? 唯一動くのがメッセンジャーのナイアルラトホテップだろ? しかも、キミ達はその彼が叛逆する可能性を微塵も思っていない。力があるのかもしれないが、そこにかまけて動かないのは怠慢、傲慢だよ。ああ、ハッキリ言おう。キミ達は人間以下のクズなのさ。だから人間以上のことを為すボクが外なる神と同列に扱われるのは嫌なんだ。その点、ムーの民は良かったね。物事の本質を見抜き、エントロピーすらも解明してみせた。もしもボクを外なる神と同列に扱いたいなら、こう呼ぶがいいさ……新たな神、宇宙生命神と」
そこで一呼吸置いて、さらにファミルアースの弁護は加速する。
「ついでだから言うが、キミはボクが楽しむことを問題だと言ったね? 全く甚だしい。楽しむことの何が悪いんだい? 生物は自らの悦びのために生きる。ボクとて、例外じゃない。ボクは生命の代弁者だからね。人間なんてその最たる例じゃないか。面白ければ嗤うし、鬱陶しかったら潰すだろう? あくまで自らのために、自らが悦を得るために。ボクの何が問題なんだい? ほら、言ってごらんよ」
そう言って、ファミルアースは嘲笑う。
それはいっそ清々しいほどに人間的で……そして、人間からはよほどかけ離れているのだと感じた。
「……くそッ! 埒が明かねぇ! 大和、辰! 武器を取れ!」
終作はそう言って会話を切ると、大量の弾幕を出現させる。
「主人よ、出番でしょうか?」
「うん。キミも共に戦ってくれるかい、アイリス」
「無論でございます」
アイリスはそう言うと、白界のように大量の龍の首を俺たちに向けた。
「辰! あと1人いるはずだ! 先に行って探してくれ」
「分かった!」
辰は俺の言葉に従って先に行こうとするが、それはアイリスの出現させた大量の龍に阻まれた。
「行かせるわけがないだろう?」
「くそッ! 速攻でケリをつけてやる!」
辰はそう言うと、七星の刻まれた剣で大量の龍を屠っていく。
圧倒的な速度、圧倒的な力。されど──次の瞬間、辰は突如現れたファミルに蹴り飛ばされた。
「ぐおっ!」
「遅い。まずはキミからだ」
辰が起き上がろうとすると、ファミルはさらに追撃をしかけようと脚を振り上げる。
「チイッ!」
その一撃を、舌打ちをしながらも終作が右脚で防いだ。
「グゥッ……!」
終作は唸りながらも、その状態のままファミルに触れている右脚を軸に、左足で蹴り飛ばす。
「へぇ……!」
ファミルはそれに対してニヤリと口角を吊り上げ、とばされながらも右手を終作と辰に振るう。
その次の瞬間、大量の弾幕が終作と辰に向かっていく。
「チッ! 狙いはあくまで辰か!」
「へ?」
終作はそう言うと、辰を弾幕から遠ざけるように……大空へ蹴り飛ばした。
「ええええええええええ!!!」
「くっ……あっはっはっは!! 全く、面白いなキミは! やっぱり、本当に外なる神とは思えない! むしろ私が……宇宙生命神のが近そうだ!」
「うるせぇ!」
終作は次元の穴で、空高くに滞空する辰へと向かっていく弾幕を全て取り込む。その後、ファミルに向けて次元の穴を開いた。その次元の穴からファミルに向かって大量の弾幕が向かっていく。
「おやおや」
ファミルは、それから身を守るどころかむしろ弾幕の中に突っ込んでいき、無傷でやり過ごして終作の顔面をなぐりとばす。
「うへぇ!」
「ほぉらほら!」
ファミルはよろめいた終作に対して、地面から生える触手も交えてその手脚で乱打を打ち込んでいく。
「う、ぐっが、あ、く……」
「これでとどめ!」
「させるか!」
「邪魔はさせん!」
俺が力を溜め込んだファミルの振り上げた右手を抑えようと近づこうとした瞬間、側面からアイリスによって龍が叩き込まれた。
「グアッ!」
「くそッ!」
ファミルが手を伸ばそうとした次の瞬間、唐突に終作が開いた次元の穴から辰が現れてファミルの攻撃を受け止めた。
「チッ……まったく、人使いの荒い」
「そう言うなって。俺とお前の仲だろ?」
「どんな仲だ!」
辰はそう言いながらも、ガラ空きのファミルの腹部に蹴りを叩き込む。
「……あっちは問題なさそうだ。じゃあ、アイリス。お前は俺が相手だ!」
「望むところ! 返り討ちにしてくれる!」