プロローグ──天陸異変──
いきなりですがコラボ章で物語終了後からの始まりとなります。
今回出てくるのは終作先生より終始終作、狼天狗先生より幻真です。
それは、俺と白界が無縁塚で修行をしている時のことだった。
「白界! こい!」
「受符『寄せたもう伊吹』」
俺の挑発に乗って、白界は自身の背後から自身が受け入れたものを展開する。
それは伊吹大明神、八つの首を持つ災禍の化身。即ち……八岐大蛇だ。
それらの首が、一寸違わず俺の肉体に対して打ち込まれる。
「う、ぐ、ぐ、が……」
「セイッ!」
俺が一つづつのそれを全部受け止めると、今度は八つの首全てが同時に俺に打ち込まれた。
「グ……ガッハッ!」
俺は吹き飛ばされ、思わず口から血を吐いて倒れる。
「はあ、はあ……流石だ……! 炎悪『炎の巨悪』!」
俺は褒めながらも、スペルを宣言して炎の霊衣を身に纏う。俺の身を燃える炎のような鎧が包み、俺の手元には燃える魔剣、レーヴァテインが出現した。
「おらっ!」
俺は縮地で一気に距離を詰め、レーヴァテインで白界を打つ。
白界はそれを右腕で防ぐと、そのまま左足の上段の回し蹴りが俺に迫る。
俺はそれを結界で防ぎ、腕につけている小手から掌底を放つようにニコラ・テスラシステムを作動──俺の掌から、レーザービームが放たれる。
白界はそれを受けながらも、俺の頭蓋を掴んで思いっきり頭突きをお見舞いしてきた。
「うぐっ……負けるかッ!!」
俺は頭突きをして隙だらけの白界の右頬に、渾身の右ストレートを打ち込む。
「クッ……! やりやがったな!」
それに対して、白界も俺にズカズカと歩み寄ると、右ストレートで俺の頬を殴り飛ばした。
「チッ……! これで最後だッ!」
「こっちだって決めてやる!」
大地と雷電の力を纏った俺の右腕と、白界の全力を込めた右腕が──間に突然入ってきた、見たことのない石像悪魔に、打ち込まれた。
「え」
「あ」
「ぐあぁぁ……」
ガーゴイルはその場にドサリと倒れ、俺たちはなんとなく申し訳ない気持ちになる。
自分で言うのもなんだが、俺も白界もそんじょそこらの生物とは比べ物にならないほどの力を持っている。
それこそ、幻想郷はおろかこの世界の生物にはそうそう敵はいないくらいには。
そんな俺たちの修行にこんな物理的な形で割り込んでくるのは……うん。無謀にもほどがあるだろう。
俺と白界の間に微妙な空気が流れると、急に周囲が暗くなった。
「なんだ!?」
「大和。上……」
「上? ってあ!?」
俺の視線の先にあるもの──それは天空に浮かぶ大陸。まるでラ○ュタだった。
「バ○ス!」
「何やってんの?」
「いや、なんでもねぇ」
思わず外の世界で見たラ○ュタを思い出しちまった。
「しかし……これは、まあ、アレだよな」
「うん。アレだね」
「「異変だ」」
そう俺たちが意見を合わせた瞬間、人里の方にさっきのガーゴイルが大量に向かっているのが見えた。
「まずい!」
「止めなきゃ!」
俺と白界は、人里に向かって高速で飛翔した。
◇◆◇◆◇
「うらあっ!」
「キャ──!!」
「大丈夫か! くそっ、キリがない! 一体何匹いやがる! そして霊歌や藍は何をしてるんだ!」
快晴だった空は巨大な大地で覆われ、そこから大量の悪魔が人里に向かって進撃してくる。
人里で女性を襲っている悪魔を斬り裂き、空へと戻る。せめて結界が人里に張られれば、俺が一掃することができるが……!
「くそっ、イガリマ!」
俺は大地から大量の巨大な剣を生成し悪魔たちに向けて撃ち出すと、そのうち一本を手に取る。
「らぁぁぁぁあ!」
俺はその剣を掴み、魔力を込めて元々のさらに50倍、1キロに届くほどの長さに巨大化させて回転斬りの要領で大量の悪魔を屠る。だが、まだまだその量は足りない。
「大変そうだな? ギヒッ! 手伝ってやるよ。正当『偽りと嘘』。──人里には超硬度の結界が張られる」
「てメェは──!!」
「話は後だ! 焔雷『ボルケーノサンダー』」
「お前まで!」
俺の隣に突然現れた男──終始終作は嘘を現実にするスペルで人里を守るように結界を張り、その直後に現れた幻真は掌から炎と雷のレーザービームを放ち、周囲を一掃した。
「遅くなってごめん! 霊符」
「すまない! 妖符」
「「『博麗結界』」」
遅れて、藍と霊歌が幻想郷と空に浮かぶ大陸を隔離するように巨大な結界を張る。
「一旦退避だ!」
終作の声に従って、俺たちは幻想郷の空から人里へと退避した。
◇◆◇◆◇
人里の中心にある広場……から、少し離れた居酒屋。
そこに、俺たちは一旦集まっていた。
店の外には、人里の住人たちが少しでも状況を知ろうと店に詰めかけている。
「……終始終作。この状況はなんだ」
「あれぇー? 俺の名前、言ったっけ?」
「は? 何言ってるんだ。それに、そっちのは幻真だろ? 俺と白界は、お前に一回会ってるだろ?」
「……どうやら、時間軸の差が生まれてる。らしい。僕の中身がそう叫んでる」
「中身っていうと……なんだっけ? ま、いいや。じゃあ、俺たちが会ったときよりも前の2人ってことだな」
俺の言葉に、白界が頷く。
なんか……。
「「「めんどくせぇことになったな」」」
そう言って俺と幻真、終作は嘆息した。
「んで? お前らはどうやって来たんだ?」
「俺はこのアホに引っ張られて」
「俺ちゃんは始祖神として見逃せない事態が起こったから、その元を辿ったらここにたどり着いたのよ。だから俺自身も実は状況をよく理解してないんだよねェー。観測者に干渉するたぁ、いい度胸じゃないの?」
以前にこいつがこの世界に来てから、気持ち悪いという意見の続出によって終作がこの世界を覗けなくなったのは黙っておこう。終作の干渉無効突破も、まあ色々弄ってようやく防ぐことに成功したのだ。
「んま、次元の干渉は未だに可能だからそれはいいんだけどネ。さてさてさて……そろそろそこの八雲さん、教えてくれませんかねぇ?」
「気持ち悪い、話しかけるな悪辣なる男よ」
「およ、随分と嫌われて。こりゃまあ、未来の俺は随分なことを随分と随分しちゃったもんだろうねぇ」
そう言って、終作はケタケタと厭らしく嗤う。
ま、あんな風にされたらそりゃ嫌われるわってような感じだったもんな。
「……すまんが、俺も事情の説明をお願いしたい」
「……はぁ。分かった。よし。説明してやる。とは言っても、私の知る範囲だがな」
そう言って、八雲藍はため息をつきながらも手を宙にかざす。手のひらから水色の光が放たれ、それはやがて地図のような見た目になる。
「フォースと共にあらんことを……」
「さっきから何言ってんの?」
外の世界……恐ろしいところだ。