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002 初めてのダンジョン

3/31 改稿しました。

 棍棒を右手に、松明を左手に持って洞窟を進む。


 初期武器が金属の棍棒とか、RPGだったらかなりの大盤振る舞いだな。普通はひのきの棒だろう。


 重そうな外見とは裏腹に普通の金属バットくらいしか重さがないのもありがたい。帰宅部な自分でもある程度は振り回せそうだ。




 ちなみに、防具は学校の制服であるブレザーのままだ。


 二年生の先輩とは違い、一年生であるタツヤ君は赤色のネクタイを装備している。


 防具としての性能に疑問は残るが、裸よりはマシだろう。





 しばらく進むと、人影が現れた。


 ゆらゆらと揺れるそれは不安定な足取りで、家路へと向かう酔っぱらいのよう。




 近づくにつれて外見が露わになり、強烈な悪臭が鼻を突いた。


 俗に言うゾンビである。




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」




 海外ドラマなんかでよく観たはずだが、モニター越しに観るのと実際に目にするのとでは大違いだ。


 目は白濁して見つめられるだけで気持ち悪そうだし、口からは緑色のよくわからない液体がだらだらと垂れている。




 なによりこの悪臭がキツイ。


 まるで夏場の三角コーナーに頭から突っ込んだような気分だ。 


 当初のワクワクはどこへやら、実際にモンスターと闘うとなると緊張するぜ。




「あ゛っ!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!」




 そんなことを考えていると、ゾンビに発見されてしまったようだ。


 先制攻撃を入れておけばよかったと悔いる間もなく、先程までとは変わって素早い動きを見せるゾンビの腐った腕がこちらへと伸ばされる。


 ナーバスになって固まっている場合ではない!




「おおっと! 掴ませたら終わりだって知ってるぞ!」


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」




 ゾンビとの戦い方は海外ドラマで勉強済みだ。

 

 噛みつきはもちろん、ひっかき傷でも即アウト。


 相手に触れさせることなく、迅速に頭を潰すべき。




「ていっ!」



「う゛っ!!」




 掛け声を出して棍棒を振ってみたが、こちらはスクールカースト最底辺の貧弱帰宅部。


 キレのないブレブレスイングは頭に当たらずゾンビさんの腕に当たってしまった。

 



 衝撃でよろよろとソンビの身体が泳ぐ。


 振ったタツヤ君も身体が泳ぐ。




 一発で頭を狙う作戦は失敗だった。


 あのドラマの主人公だって鮮やかにゾンビを処理できるようになったのはシーズン2辺りからじゃないか。




 いきなり上級者のマネをして食い殺されるお調子モブなんてお約束はごめんである。



 

「ていっ!」


「あ゛あ゛あ゛っ!?」




 次の一手はシンプルに喧嘩キック。


 日々の自転車通学で鍛えられた脚から繰り出された一撃は、ゾンビの胴体にクリーンヒット。




 登下校時間を少しでも減らすべく、必死に漕いでいたのが功を奏したようだ。


 ありがとう我が愛車(ママチャリ)よ。




 もともとフラフラしていたゾンビだったので即座にバランスを失って倒れこんでくれた。




「ていていていっ!」




 そのまま転んだゾンビに向かって棍棒を振り下ろす。何度も何度も振り下ろす。


 汗がしたたりおちるころ、ゾンビの反応がなくなった。


 何回か腕に阻まれたものの、無事に頭部が破壊できたようだ。



 ゾンビさんごめんなさい。


 童貞のまま死ぬわけにはいかないんです。


 俺は無事に帰って先輩と……。




 あぶないあぶない、自分でフラグを立てるところだった。


 無事に先輩のところへ帰らなければ。


 早く会いたいなあ。

 



 先輩とのリア充生活に思いを馳せていると、突然左手の指輪が光り輝いた。


 そして、頭に声が響き出す。


 棍棒の時とは違い、優しそうなお姉さんの声だ。




『レベルアップ! タツヤはレベルが上がった。スキルポイントを付与します。』

 


「レベルとはなんですか!? スキルポイントとは!?」




 聞いてみたが返事はない。


 レベルにスキルポイントだって?


 そうするとここはゲームの中なのか?




 それにしてはゾンビの匂いがリアルすぎる。


 到底現代の技術では再現できそうにない。

 

 まるで近未来のVRゲームじゃないか。


 そんなことを考えていると、目の前に文字が浮かび上がってきた。









”名前:石橋タツヤ

 職業:騎士

 レベル:2


 【ステータス】 


TP:120/120

MP:1/1

 STR:1

 VIT:1

 DEX:1

 INT:1

 WIS:1


 ステータスポイント:0


 【スキル】

 

 スキルポイント:1”







 どんな技術なのかはわからないが、浮かび上がってくる文字には驚いた。


 落ち着いて上から下へと読んでみよう。





 職業が騎士になっていることに少しばかり安堵する。


 与えられた武器が棍棒だったので心配していたのだが、蛮族や戦士じゃなくてよかったぜ。


 タツヤ君はマリナ先輩の騎士なんだ。騎士と書いてナイトと読むんだぜ。そこだけは譲れない。




 そんなことを考えていると指輪の輝きが無くなり、浮かんでいた文字も消えてしまった。




 スキルポイントか。


 スキルなんだから技とか魔法とか使えるようになるのかな?


 どうせならかっこいい技が欲しい。




 魔法も捨てがたいけれど、職業的に武技や闘技って感じだろう。 


 なんたってMP一だからな。武技は多分TPってやつを消費するはずだ。それなら百あったしね。


 武器が棍棒だからって戦士っぽいスキルは嫌だぞ、騎士らしいやつを断固として所望する。


 一閃(いっせん)とかどうよ?




『タツヤは一閃(フルスイング)をおぼえた!』




 頭にお姉さんボイスが響く。




「っていうか待って! 一閃と書いてフルスイングって読んでませんでした!? ねぇ!?」




 返事は返ってこない。


 その代わり、また目の前に文字が浮かび上がってきた。







”名前:石橋タツヤ

 職業:騎士

 レベル:2


 【ステータス】 


TP:120/120

MP:1/1

 STR:1

 VIT:1

 DEX:1

 INT:1

 WIS:1


 ステータスポイント:0


 【スキル】


 一閃(フルスイング) 消費TP:30

 

 スキルポイント:0”






 しっかりと一閃フルスイングって書いてあるぜ……。


 もしかしてタツヤ君の職業は騎士と書いてせんしと読むやつなんだろうか。


 全力で騙されている気がする。




 一閃を発動できるのは四回までか……。




 その時だった。


 洞窟の奥からフラフラと向かってくる影がふたつ。




「あ゛あ゛あ゛」


「う゛う゛う゛」




 今度はゾンビが二体か。


 ちょうど良い。


 一閃の試し打ちに付き合っていただこう。

 


 

 戦闘を行う決心をして、棍棒を握り直した。

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