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どうやら異世界から来たようです  作者: るろうず
第一章 プロローグ
5/28

異考



「にぃに、おかえり」


「ただいま」


帰宅したオレを出迎えるロリは、オレが持っていた買い物用の鞄を「ん」と言って、さり気なく代わろうとしてくれる………。

甘んじて鞄を渡した。可愛いよ我が妹よ!


「お米たいたから。……今日はもやし炒め?」

「正解。ありがと、助かったよ。今日も偉いな〜お兄ちゃん嬉しいよ」

鞄の中を覗いて言い当てるロリの頭を撫でなでした。

「……そうやって、いつまでも子どもあつかいしないでよね」

頬を膨らませて拗ねるロリが、また可愛い。それでも手を払わない所、オレ好きだよ〜。


「フェリは?」

「絵本読んでる」

「図書館に着いてったの?」

「うん。本借りるならカードいるでしょ」




ロリの言うとおり、フェリオナは口元を引き締めて絵本を読んでいた。

…………ふっ…………。


「フェリ、面白いかい?」

「__ ああ、………よくえガかれテイる」


薄い反応だなぁ。何か 凹んでる?


「フェリおじさん、絵本コーナにしか読める本なかったって。あ、もやし全部出しとくの?」

「いや、1袋は冷蔵庫に入れてて」

ロリは頷き、食材を冷蔵庫に入れてくれた。


オレはリュックサックを肩から下ろしてひと息つく。

「日本語難しかったか」

「ああ。みなイ文字多かった」


この大男が絵本を読んでいて、借りる。……… シュールだなぁ…。周りの人達の反応が目に浮かぶ。子どもの為に借りたと勘違いしてくれてる事を願おう。


「漢字の読めないアナタに………。ほい、マンガだよー」


「マンガ?」


うわぉ。知らない系?


リュックサックからマンガを40冊ほど取り出して、フェリオナの前に置く。

………結構 重たかった。適当に要望したけど、こんなに貸してくれるとは。有り難やー有り難や。


「薄イ紙だ……」

「生産性に優れてるんだ。汚すなよ、人の物なんだから」

物珍しそうにマンガを見つめてるフェリオナは、カバーが取り出されたマンガの外装を見渡し、それから中身を拝見する。


「…………読めなイ…」

ハイ?

「フェリ、平仮名とカタカナは分かってるんだよな?」


おずおずと肯くフェリイオナに、「平仮名はいくつ?」と質問する。


「46」


あれれ?


「フェリ、そのマンガ貸して」


中を確認する。中学に読んだ事があるのだが、いちおとルビがふられているか見てみる。


「…………ああ。フェリ、これはルビっていって、これで漢字を読むんだ。例えばここ、漢字の横に平仮名あるだろ?これで“わたし”、フェリが使ってる一人称」


「!!…………これでワたシ… 。そうか、これハそノまま読むノか……! かった、ありガトう!」


どうやら、ルビの平仮名は漢字と一体した何かの文字だと思っていたらしい。………お馬鹿さんだぁ…。


「今度はオレも図書館に着いてくよ、来週の土曜日にでも行こうか。分からない言葉があったら、後で渡すからノートに書いといて。意味もちゃんと調べよっか。たまに言葉が分かんなかっただろ?意味が分からなかったら質問して良いんだからな。笑って誤魔化すなよ」


時々オレが話していると、フェリオナの眉がピクリと動く。気づいた後はなるべく難しい言葉は使わないようにしているが、当の本人は確認も何も訊かないのでこの際に言っておく。


かった。…………そノ、“ごまかすなよ”トイうノハ…?」


お、早速訊いてきた。


「誤魔化す。これは分からないのに分かっているように見せる、本心を出さないで有耶無耶にするって事だね。他にも使い方あるから調べるといい。

別に、知ろうとすることは悪くはない。相手の事を気遣うのは良いが、分からなくて悩んでいるときは調べたり質問したりしていいんだ。言葉が分からないままは困る。だからそれをしないでってオレは言いたいんだ」


「……かった。シっかりく」


「教訓には則って、ちゃんと考えて質問すること。まぁ、言葉くらいなら問題ないけどね」


フェリオナが首を縦に振るのを見て、オレは立ち上がり、キッチンへと向かってご飯を作る事にした。




夕飯を食べ終えた後、ロリとフェリオナはマンガを黙々と読んでいた。

フェリオナは言われた通り、分からない言葉を記入している。鉛筆を使えるか不安……というか、折れないか心配だったが、器用に書けていた。持ち方は、まあ握っていないし良しとしよう。上部を支える指が人差し指と中指を使った持ち方は、よく見かけるし。ちょっと持つ部分が鉛筆の真ん中辺りだけど……うん、問題ない……よね?

風呂から上がったオレは、やる事をやって二人の様子を眺めながらそう思った。


「ロリ、風呂入った?」

「うん」

「明日の準備は?」

「した。宿題も終わった」

「いい子だ。フェリ、10時になったら電気消すように。マンガは箱にしまうこと。洗濯機回してるから、終わったら干すのを手伝うこと」


それから俺は「おやすみ」と言い残し、リビングから立ち去った。


玄関に入ってすぐ右側にある部屋は、物置場にしている。フェリオナに貸した服は、そこから取り出したものだ。段ボールで敷き詰められた畳の上に、引き出しにあった布団を出す。

明日は5時45分からアルバイトだ。

アラームを設定して、オレは2、3畳程の小さなスペースで横になって寝た。




フェリオナは計算が出来るみたいだった。平仮名の数を尋ねた際に少し考えた素振りをしていたので、食事中に謎々みたく問題を出すと、正しい答えを返してきた。…………それで職が決めれたら良いんだろうが、世の中そんな甘くない。免許持ってないし、言葉もまだまだだし。在宅アルバイトで探してみたが、車もパソコンもない状態だ。クソぅ、アンケートを回答するバイトとかは漢字を読めない時点でアウトだしなぁー………パフォーマーになってもらおっかな………あんな大剣持てる位だし。あ!腕相撲対決!……っていつの時代だよ、トラブルの元だぞ。…………やはり、ボクシングか…?


んぅ〜面倒だな、日本語習得に専念してもらおう。

…………次はアニメと映画だな。テレビは家には無いからオレのスマホで見せるしかないか。来週の土曜日にでも図書館で見るようにさせるかな。




3時にアラームが鳴る。


目が覚めたオレは、いつも通り調理を始めていつも通りに弁当を作る。

今日はロリを見送れないのが口惜しいが、フェリオナに用心棒を頼んでいるので後は任せよう。もしもの時は、電話するようにロリには伝えてある。防犯ブザーもあるし、ひどい時は刺激性の高い市販のスプレーを使うようにもいっている。過保護は良くないって言うしね、賢い子なんだから信用せねば…………不安だけど。


支度を終え、玄関扉の鍵を閉めてオレは出発した。



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