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どうやら異世界から来たようです  作者: るろうず
第一章 プロローグ
3/28

異人

時刻は0時45分。


そろそろ寝ないとお肌に宜しくない時間帯である。

ロリの目が虚ろだ。こんな時間までつきあわせちゃって申し訳ない。

幸い明日は祝日だが、オレもアルバイトがあるのだから、さっさと睡眠をとりたい気分だ。


「反省はしたかい?」


テーブルの相席に付いている男に前触れもなく尋ねてみる。


「ああ、サキホどはスまなかった。初対面シょたイめんたイシテ困った行動だった………もノこワシたことも、ホんトにスまなイ」

「ぁーハイハイ、謝罪はいい。反省したならそれなりの誠意を見せてくれればそれでいい。教訓ルールを守る事、ちゃんとお金を払う事、目的やることはそれから。良いね?」


指折り数えながら確認を取らせ、我が妹にも聞かせる。と言っても、ロリは椅子に座りながら器用に上体をオレの膝に預けているので、うっかり寝てしまっているかもしれんが。


「じゃあ自己紹介しよっか」


ロリはまだしてなっかったの?と言いたげな視線を送ってきた。


しょうがないじゃない。正直知りたくなかったんだよ、第一印象最悪だったんだから。常識を教えてあげた後、元気なくしちゃってたし、何か聞きだせない空気だったし。

てか起きてくれてたのか我が妹よ。


ワたシハ、フェリオナ・ティエィル。テのトおり、ここのこトラなイ。“アラムデュア”トイう世界せかイかラた。よロシくおネガイスる」


アハハ〜、痛い。


「そっか、オレはアニ。こっちはロリだ。よろしくね」


太ももを抓られる。痛い。


「えーと、フェリオナ・ティエールさん、でいいのかな?」

「……ああ、キに呼んデホシイ」

「んじゃフェリで。えー、……アラ__…、つまり異世界から来たってことでいいんだよね」

「そうだ」


「…………そっか。因みに出身は?あーと、生まれ育ったところ」

「ビュシノォヒだ」

うーん、即答かぁ。

「その周りの地域も言える?」

「ハドゥナム、ガナツィ、ウォアナ、ジェネィガ、リェヌイネ……など」

「ほうほうほう。フェリオナはこれから働かないといけないんだけど、何か出来ることはある?」

「イロイロやっテイた。魔物まもノト戦イ。手紙テガミトどける。土地トち調シラベなど」

「ふむふむ、因みにこっちの文字読める?」

「……ひらがなト、カタカナなラ」

「そうかそうか。うん、分かった。まずここの生活から慣れてもらおうか。働くとこはこっちで手配してみよう。何か質問は?」

「図書館ト骨董品屋ノ場所ばシょっテイるなラ」

「分かった、紙に地図でも描いておこう。他は?」

男___もとい、フェリオナは首を左右に振って質問は無いというジェスチャーを行った。


「よし、じゃあお話し終わり。寝ようか。あの青い布団があるでしょ?あれ使って」


寝息をたてはじめたロリを抱えて、オレは席に立つ。

フェリオナも釣られてるように立ち上がり、折りたたまれた布団のあるリビングへと移動した。右手側には襖があり、入れば和式の畳部屋

がある。

そこがオレとロリの部屋だ。

仕切りに木製の衝立があり、オレのスペースは4畳ほどあるが、荷物置きと勉強机を利用する以外は特に使っていない。

いつも寝る時はリビングだ。


オレは布団を敷いてロリを横にさせる。


「……にぃに、何で?」


ロリの眠たそうな、甘い口調で聞いてくる。

その問いに答える前に、ロリは夢の中へ行ってしまっていた。


「…………なんでだろうね」


そう口にしたオレは苦笑しつつ、ロリに毛布をかけて「おやすみ」と言った。

部屋の電気を消し、フェリオナも就寝しているのを確認したら、オレは勉強机につき、スマートフォンアプリを利用しながら地図を描く。

それから小さいライトを消し、椅子に座った状態でそのまま寝た。



フェリオナ・ティエール。


異臭を放ち、ヅカヅカと金属混じりの足音をたてて近づいたと思ったら、急に肩を鷲掴み。力加減というものを知らないらしく、次の日には痣が少しできちゃうくらいには強かった。それに加えて感情任せに声を張り上げ、何事かと思えば協力しろだの何だのと。

アルバイトで疲れた上に外人さんに慣れない対応をするんだ、その時のオレの困惑顔はさぞ滑稽だったろう。その場にロリがいたなら、珍しく真顔で心配してくれるほどだと思う。

そんな事お構いなしに縋ってくるのだから、フェリオナの目が悪かったのか、それともオレの顔の筋肉が相当固まっていたか。…………うん、きっと後者だよ、鏡で確認しながらマッサージでもしよう。


そこで「初対面に対してそれはどうなの?」と口出ししてしまったものだから、オレはらしくない言動をしていたと思う。ましてや説教まがいの事をして家に連れてくるなど。

何でと、 ロリが疑問符を浮かべるほどに。

普段なら奴の手を払い除けてでも無視して逃げている。それか、適当に話を聞いてオブラートに無理です、別の人に頼ってと断っていただろう。


まぁ、理由はいくつかあるんだ。

面白そうだったし、鎧の衣装はどのくらい再現度なのか好奇心はあったし、ロリに見せたらきっと可愛い反応するんだろうなぁとか。あと、バルコニーの柵の件。しっかり払って貰わねば困るし。

きっと何かの縁だ、今のうちに恩でも売っておこう。

そんなこんなで手っ取り早いのが家に居候させる事だと、その時のオレは思いたって今に至るのだから、過ぎてしまったものはしょうがない。


…………だがなぁ〜、まさかの異世界から来ましたなんて、自己紹介ではじめて聞いたよ。スラスラと聞いたこともない地名が言えるもんだから驚きだ。どこまで異世界設定考えてるのか問い質してみたくなる。


英語ワカラナイ漢字ヨメナイ!けど戦えるよ!


ノンノンノンノン、もぅ頭痛い。ああ、数学…いや算数ができるか確認せねば。最悪はボクシングかレスリングとかの道に勧めるってのもありだな。

取り敢えず、暫くは家でできるお仕事でもしてもらおう。


あ〜今後の生活が楽しみだなぁー。

明日は何させよう? ぁ、もう今日か………。




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