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どうやら異世界から来たようです  作者: るろうず
第二章
27/28

異寝



船内のどこを探しても、結局エルフは発見されなかった。

その後も警戒態勢が続き、防音室に閉じ込められていた拉致被害者は船内の寝室で安静にしている。


3人組はと言うと、既に目が覚めて元気になっていた。

まぁ深海でも冷たかったし、別に氷水に入っても大丈夫なようだ。



「ラゥスェヒンガストスゥサゥクァルアロスェシュムゥ!!!!アニクァルンガラゥアルストスサァ キキュニェサゥ ブォッザァヅェラハラゥアルストススェシュムジャイ!!」


「「「ゲィネェスェエ!」」」


今は説教中である。


応援として訪れた水棲人達の中に、親も居たらしい。

グルドラァナ君の父親と思われる人が、寝息を立てた子供達を無理矢理叩き起こしたのだ。


それからミッチリと事情聴取を行い、親子共々オレに向かって頭を下げた。


……何故に?


((『本当に済まない。コイツらの為に断れなかっただろ』だって。以前も許可なく出てたみたいだね、この子達。こんな事になるのは今回が初めてですって))


おぅ、 てっきりオレも怒られてると思ってた。



「いやいや! 最年長であるというのに、注意をしなかったオレにだって責任はあります。息子さんだけのせいじゃありません……こちらこそ、迷惑をお掛けして申し訳ございません。____皆さんも、申し訳ございませんでした。この場を借りて謝罪致します。救出してくださり、大変痛み入ります。本当にありがとうございました」


オレは水棲人の方々に、深く頭を下げた。









甲板で出会った短気な男性__ギニィマイントという名前らしい__は、10名程引き連れて船に残った。港まで船を移動させるそうだ。


他は、オレを含め4人の子供を引き連れて帰路に赴いた。



水中での移動では、また魔法によって空気を確保してくれた。

大きさは大人が2人入れそうな程に広い。加えて強度も抜群。高速道路を走るバス並の移動速度だというのに、破裂する気配もなく球体が維持されている。


流石は二ルミアンヌさんだ。


あの船をギニィマイントとかいう奴とたった2人で制圧出来た辺りで、強いのは予想出来た。

因みに同僚さんの顔をふくよかにしたのも彼女らしい。 ……ちょっと見たかったかも。







___ただ。


「これは、恥ずい……!」




移動中、オレは二ルミアンヌさんに抱えられていた。


男が、女性に姫サマ抱っこされてる。

オレが、二ルミアンヌさんに姫サマ抱っこ。

……ここ、大事。

男としての威厳が………まぁ元々無いけどさ。あー泣きそ。


オレを丸々気泡で包むには、この状態が良いのだそう。

こんな速度で膜を通して海水にでも触れれば、抵抗で引っ張られて苦痛を味わうだけ。

マジで鱗パワー欲しいです。


目を覆い隠して現実逃避したいが、海中での眺望なんて滅多に拝めないだろうという事で奮起した。……ハウードマック君達の視線が痛い。あとドグがテンション上がっててウザい。耳元で騒がんで……。



シェルミン キノケソーで待ち構えていたのは、3人の子供達の家族に、オレの生徒等だった。

謝罪と礼を述べると、彼等は優しく迎え入れてくれた。


それぞれが無事に帰宅し、食事後オレは二ルミアンヌさんにめちゃくちゃ説教された。


反省反省……。
















((ねぇ、アニー?))


頭に声が響く。


今日は流石に疲れたから颯爽とベットで横たわっていたのだが。




((ねぇねぇアニってばぁ~、何で寝たフリしてるのさー))




うるさい。






「…………なに、寝れない」


((それはこっちのセリフ~。2時間経ってるのに一向に寝ないね?))



_____。




瞼を開き、上体を起こした。



「ドグ、答えて。オレとどんな契約を交わそうとしたの。手助けする為に必要な契約なんだろ?」


向き合ってドグに確認する。


((__勿論。無償で手助けするという、種族関係なくキミは友だという契約だ)


「へぇ、わざわざ契約するんだ?」


((精霊族は契約する事によって、他種族との関係をつくるんだよ。ここでは常識さ。

……最も、ボクがやったのは仮でね、正式なものと比べると条件内容は大雑把で確実性が低い。良くいえば、キミに押し付けがましい事はしない、手軽な契約だよ。というかキミ同意してないの?))


「返事する前に事を進めたのはどこのどいつだよ。……待って、完了してるワケ?」


((うん!血は貰ったしね!))


詫びれもなくドグは肯く。



その笑顔、殴りたい。





「……率直に訊く、何でオレに付いてきた?」


((また随分とくだらないなぁ。恩返しと言ったろう?))


「信じれない」


コイツは今まで会った異世界人の中で、1番怪しい。

胡散臭くてしょうがない。


((ふふ、そういう所をボクは気に入ったんだ。これがホンネだよ。ハッキリ言ったらどうだい、ボクを警戒してるって))


「……」


((ほら、心が揺れた。キミは今、契約破棄をしようか考えたね?))


「心の声は読めないって言わなかった?」


((言ったよ~。精霊族に正確な思考は読み取れない。ケド嘘か誠かは分かるんだ。

ボクらの頭には、キミらと言葉が交わせるようにアンテナがある))


トントンと、人差し指を額にあてた。


((コイツはキミらの発する脳波、感情、言葉の思いってヤツを宿主に伝えてくるんだ。否応なしにね。

心の動きは理解できる。後は状況とかを当てはめると、キミが考えたことは今みたいに察せたよ。

就寝時も、それは変わらない。さっきからキミはずーっと頭を巡らしている。ボクはその波動が気になって寝付けないんだ))


ドグは、困った様に肩を上下する。


「……そっか、知らなかったや。ゴメン。だったらオレの傍で寝なくていいよ。ああ、ベット使いたい?だったら貸すけど」




((寝ないの、アニ))


「……仮眠はするよ」


((__もしかして、ずっとかい?……どのくらい経つんだい))


「……15 」


勿論 経過日数を指している。



((……キミの用心深さには恐れ入ったよ。結界でも張るから寝なよアニ))


「……いい」


((あ〜もう、契約!汝に願い、然ては誓ふ。汝が許さば、我は心慰む__……))


ドグは寝具の上で跪き、そんな言葉を紡いだ。

彼女の周囲に、微細な光が灯る。


((はい!これが正式な契約の一つ!取り敢えずコレで、ボクはキミに手出し出来ないし誰も近付けない。どう!?安心して寝れるでしょ!了承して!))


「……わかった、分かったよ。寝るから。あんま叫ばんで…キンキンする……」


((良かった!))



……言ったそばから。


「了承って、何かやるの?」


((ふん?今ので出来たよ。『分かった』って言ってくれたでしょ))


首を傾げる彼女の周りには、もう光はなくなっていた。


……アッバウトォ~。



((この契約は口頭によって成立するものでね、ボクにしかペナルティはないよ。キミに誰かが近寄れば、ボクは精霊族として責任を持って阻止しなければならない。寝ている間、ボクはキミにちょっかいを出さない。

一時的なものだからね、守らなければボクは短時間の契約さえ守れない低属な妖精として精霊族に扱われてしまうのさ))


なるほど、精霊族に嘘は効かない。これは同族でも一緒のこと。

もし違反をすれば、オレは弱味を握れるって事か。



「……その前に殺されたり、勝手に別の契約をされればペナルティに意味はないね?」


((んふふ、恩を仇で返すなんてボクはしないよ。ボクは『怠惰な妖精』って呼ばれる程に面倒くさがり屋でね、そんな回りくどいことはしない……。別に重ねて契約してもいいよ、似たもの同士仲良くいこうじゃないか。キミが疑心暗鬼なのもよく分かる))



……似たもの同士。



「そう、そりゃ助かるね。じゃあさ、3つだけお願い。まず1つ、就寝を邪魔しない。ただし起こす時は別」


にこやかに頷くドグ。


「それから、ドグが云うセリフ。全部オレにも伝わるようにして」


通訳でも、ギニィマイントに説得をしていていた時も。ドグがオレ以外の者との会話する時、一切彼女の声を耳にする事は無かった。

同僚さんの聞き込みや水棲人に謝罪した時に気付いたが、集団でも彼女は声を伝える事が出来る。


((……なぜ?聞いたって無意味な発言だよ?通訳だって、ボクそのまま云ってる。同じ言葉が帰るだけだ))


「……お前がいつ口を滑らすか分かったもんじゃない。それに、情報はなるべく多く欲しい。と言うか見てて不安」


((アハハ、そうかい!アニは心配性だねぇ!まぁ、ちょこっと手間が増えるだけで問題は無いさ))


「あと、オレの質問には返事(・・)して」


((んふふ、良いよー。親睦が深めれるならお安い御用さ。じゃあ、長期の契約だから別の方法でやるねー……___))







その後 契約を完了させ、オレは就寝した。



久しぶりに寝た。

泥の様に、眠ってしまった。




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