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どうやら異世界から来たようです  作者: るろうず
第二章
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異妖




「……ッ痛ぅ〜」



大きく揺れた時、布で覆って隅に置かれていた物がオレの方に降り注いで来た。

ものっそい痛い。箱の角とかシャレにならんから!




((……!ねん____!!))


「?」


背後から、幼い声が聞こえた。


ここに居る子供達じゃない。隅まで転がって、今は泣いている。

扉は閉まったままだし、窓は無いから外でも無い。



((少年!!お願いだ_____……くれ!))



「ああ もぅ何〜?」


((そこの瓶!___開けて……む!!))


辺りを見渡すと、扉の前に瓶が落ちていた。


「んじゃコレ?浮いてるし……」


拾い上げた透明な硝子の瓶の中には、真紅の宝石が浮遊している。


((そう!開けて……、お願いだ!))


「あー……はいはい…………」


頭に響く程 鬱陶しい声にウンザリしながらも、オレは瓶の蓋を抜いた。




すると、目の前に人の顔が現れた。


恐ろしい事に瞳が無い。白眼ならぬ黒眼が目を光らせている。


(( 助かったよ!!少年!ありがとう!!!))


「……はあ」


((ボクはドグ!キミは?))


ボクっ娘……?

あれ、女で合ってるよね? それにしても……いや、胸部は見ないでおこう。美脚だし女の子だ。多分。



「アニです……」


((そう!!長男坊かい?随分安直な名前をつけられたものだねぇ!))


ドグさんは目を細めて笑う。





……ちっちゃい、妖精だ。


オレの顔から離れた彼女は、人形の様に小さい。

後ろにはグラデーションのある、透明な羽が浮かんで見える。背中から生えておらず、あまり動いてもいないのに飛行しているから、不思議なものだ。









((ではアニ!暫く契約を交わそう!))


不意に、口元を舐められた。


「へ……ッ?」


((精霊は契約しないと手が貸せないんだ____ヒール))



「…………」


舐められたのは、唇の傷だ。

踏まれた時に、歯に当たって怪我をした傷。それが、淡い光と共に消えた。


額の傷も……手脚の打撲、抉られた爪痕もだ。

まるで時間が巻き戻った様になくなっている。


「ちょっとした恩返しダヨ!」



……どうやら危害を加える事は、しないようだ。

何か胡散臭いけど。






「てか、言葉通じるんだ」


((精霊だからね!キミの脳に直接語り掛けてるんだ、そっちの言語で都合良く変換されてるさ!))


ドヤ顔なのが少しイラッと来たけど、まぁいい。


「そっか。だったらさ、ここの言語分かる? 恩返ししたいって言うなら、出来れば教えてほしいんだけど……あと通訳も」


((勿論!お安い御用さ!))


ドンと来いと、ドグさんは胸に拳を当てた。








「アニ!!!!」



扉をこじ開けて、彼女が現れた。




「___二ルミアンヌさん」




……タイミングが宜しいようで。




足音をたてながら、二ルミアンヌさんはオレに迫り、頬を叩く。


「ケィ……リィ……サスェヒャウンガトフェツェ……!」


声が震え、瞳は潤んでいる。……相当 彼女を心配させたようだ。


「ラァ…ヌォゲィアルストスゥ!シェクァル ヘァヒィンガ……ァルミィ……!」



これは怒りか、悲しみか。そんな混じりあった彼女の感情が、空気を通じて伝わってくる。


二ルミアンヌさんは言葉の整理が出来ていないのか、目を泳がせて、途切れ途切れに怒鳴った。






___何て、良い人なのだろう。



「すみません。……ゲィネせ、心配させてすみませんでした。えっと……助けに来てくれて、ありがとうございます」


ついに彼女は涙を流し、オレを強く抱き締めた。


「ユシァルスゥ!ウァスェギィノヌアァ……!」


腕をまわし、彼女の背中を軽く叩いてオレは再度謝る。







((ひゅ~ひゅ~!お熱いねぇ!))


「…………」



感動シーンに邪魔が入りやがった。


二ルミアンヌさんの背後でドグさ……ドグがニマニマと気持ち悪い笑顔でこちらを見ている。


……何か恥ずかしくなってきた。

おいやめろ、唇立てんな。そういう関係じゃねぇから!


二ルミアンヌさんが泣き止むまで、オレは暫くドグのからかいに耐えながら待つ。


睨んだりして止めるように促すのだが、ヤツは笑い返して身振りが益々酷くなるばかりだった。







アニ「……ぇ、次話までこの態勢なの?」


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