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どうやら異世界から来たようです  作者: るろうず
第二章
18/28

異拶



____い。痛い。熱い。暑い。痛い。


眩しい。



「…………あ?」



重い瞼を上げる。


汗が酷い。汚い。頭が、痛い…………。寒い。


視界が、青掛かって見えた。


そのまま、寝た。









はい、アニでぇーす。


寝ようと思ったけど、色々思い出して目ぇ醒めちゃいましたぁー。


うん、来たよ。生きてたよ。フツーに、生き延びてたよ。


視線を、上に向ける。




……………………____。






「知りたくない天井…ッ!!!」


もぅイヤ! なんで屋根無いの!? なんでこの建物、隙間があるし大きいの! こんなオープンなお部屋初めて見たよ?!

アート?アートってヤツ!?だから丸いのこの小っちゃい建物!!


しかも、一番上が青空じゃない。もう、………いや、青いよ? 青いけどさァ………どう見たって、海面にしか見えないんだよなあ。

あ、小学の時に行った沖縄の修学旅行を思い出す〜。水族館、楽しかったなぁ…………。



あれ、フェリオナの言う『アラムデュア』ってこんな世界なの?


あの魔物はアラムデュア出身……だっけ?……え、アイツ怪我してたし、帰ってくるなら故郷かと思ったんだけど。


そもそもアラムデュアに生息してたの? 分からないことだらけの未知の魔物なんだっけ?


これは………なんか、ヤバくないか?


怪我してたから別の異世界に行っちゃったりして…………?


「だぁぁあああ!なんであの時ちゃんと訊かなかったんだよ!バカッ!オレのバカ!!」


感情任せに話終わらせるんじゃなかった!!



「ヒィノォサス?」


「ハイ!」


背後から声がしたので、反射して返事をする。


………おい、ちょっと待て。


「ネェ トゥネスリヘェ、ュシァルストスワァ」


ほっとした表情を浮かべ、声を掛けてくれた女性は言う。


「……流石、異世界………」


オレはそう呟いて、只々 頭の中で、これからどうすべきかを考えた。









水棲人。


フェリオナ以外に、初めて出会った異世界人の女性を見て思った、オレの印象だ。



もう性格云々なんて後回し。

オレとは明らかに別の、人種だった。


全身には、水色の鱗が生え渡り、指先の爪が鋭い。首にはジンベイザメを思わせる鰓の様な筋が見えて、耳の部分は金魚よりも先の尖った、ヒレの様なものがあった。

首辺りからはあまり鱗は生えていないが、そこから見える肌は青白くて艶がある。唇は赤っぽくなく、薄い。それから、鼻と呼べるのか分からない程、その鼻の部位は平たかった。眉毛はなく、髪も青い。


全体的に、青い。


だから、オレは水棲人だと結論付けた。









「……ハァあああ…………」



困った。

まさか、ここでまた言葉の壁にぶつかるなんて。


オレは今、布団を敷かれた、岩でできたベットの上に正座している。


先程 現れた女性は、何かを言って立ち去った。




そう言えば。


服が、変わっている。


「うっわ汗クセぇ………」



……あの空間に入ったって所までは憶えている。


あれから、どの位寝てたのだろうか。

きっと何かあったのだろうが、夢の様に忘れてしまっている。





____……ロリ、フェリオナ。


フェリオナにはちゃんと料理を教えた。ロリにはしおりをあげた。しおりには、アルバイトを辞める旨と謝罪を書いた手紙が挟まれている。もしもの時は、これを渡すようにと書いておいた。

オッチャンにも、話は通してる。


あっちは、恐らく大丈夫。後から何か言われそうだけど。



切り替えて、深呼吸をする。






「あ、ありがとうございます」


再度訪れた女性は、オレの制服とリュックサックを持って来てくれた。


「あリィガトゥ?」


オレは頷き、もう一度「ありがとう」と言って、私物を受け取った。


「ヒィノガスツェ」


彼女は笑顔を見せた。


___ どういたしましてか、ありがとう、か。


「ヒーノガステ?」


聞いた言葉を口にしてみた。すると女性は可笑しそうに笑う。


「ンガルガル、ヒィノガスツェ ラハ スシャムリンガントゥ」

彼女は首を横に振って言った。それから、手の平をオレに向ける。

「ありがトゥ」

そう言い、次に手を自分の方に胸を添えるようにして「ルダクァルギノォ」と言った。


___ああ、なるほど。


オレは、彼女がやった事を反復するように、ジェスチャーをとる。


つまりオレの言語では「ありがとう」が感謝の意味、そっちでは「ルダかルギノー?」と言うらしい。

確認すると、彼女は笑って肯いた。


上手く言えていないが、まぁそこはご寛恕願おう。


「“ヒーノガステ”は。こっちでは、どういたしまして」


彼女は盛大に頷き、「ヒィノガスツェ、ドゥいタシましテ」と言ってくれた。

どうやら何とか意味は通じるみたいだ。



「オレはアニ。名前は、アニ」

オレは右手を胸に当てて名乗り、それから相手に手の平を見せて「あなたは?」と言った。


「ニルミアンヌ」


「……ニルミアンヌさん、初めまして。オレはアニと呼んでください。今後とも、よろしくお願いします」


頭を下げて、敬意を表す。


彼女は少し戸惑い、それから手を差し伸べるように出す。


「……」


____うわ、きたぁ……。




これは、何を要求しているのだろう?


オレは、彼女の手を見詰めて固まる。


握手だと思う。

分かってはいるが、迂闊に手は出せない。

日本とここは違う。

ジェスチャー1つで、相手に不快を抱かせる事があるのだ。

こっちにとっての常識は、ここじゃ通用しない。フェリオナがそうであったように…………ここは、分からない素振りを見せたほうがいい。


キョトンとするオレに、ニルミアンヌさんは痺れを切らし、オレの手をとって、片方の手で少し力を込めて固く握った。


……………握手で、良いらしい。

ここでは、これから宜しくのジェスチャーが握手。



「ュシイサスォ、アニ!」


「ユシサス、ニルミアンヌ」




そうやって挨拶を交わし、オレは、暫くこの人の世話になる事が、決まったのだった。







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