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どうやら異世界から来たようです  作者: るろうず
第一章 プロローグ
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異省


「な………………」


言葉を失う。

フェリオナはまさにそんな状態だ。

オレの発言でこんな静まり返るのっていつぶりだっけ? ん、そんな事あったっけ? ちょっとしたイジメ?あぁ、違う違う、ちょっとした悪戯に付き合わされてた頃だっけ?皆がたのしそうに笑うからオレも 笑ってたら………ん?発言してたか? まぁいっか。いけないなぁ、最近物忘れが多くなった気がする。そろそろ歳かなぁ〜。


オレの妹が、肩にもたれかかってきた。よしよし、可愛い可愛い。



「……聞いていたのと違う……! 」


ようやく口を開いたフェリオナだが、まだ納得出来ないようだ。


「だから言ったろー、どれだけだよって。こっちでは二人が居なくなって5年だ」


「…………だが、名前が……」


「何、知ってんの? 最初から言ってよー。あ、個人情報ってヤツなのかな? ははー。デタラメに決まってんじゃん。いつ気付くかなーって思ってたけど。あ、でもそれで慣れちゃってるから呼びなおさなくても別に良いよー。もしかして、よく面倒事に巻き込まれたり、騙されたりしてない?」


「…………」

思い当たる節があったようで、フェリオナは視線を落とす。

図星かよ。


「悪く思わないでよ? コッチだって、大剣を抱える何処の誰かも知らない人間を住まわすなんて、異例なんだからさ」

「……それは………いや、襲撃されなかっただけマシか…。大剣はすまない、あれは大事な物なんだ」

「いーよ、おあいこってことで。ところでフェリオナ、オレらを見つけて何したかったの?」


「…………アイハ達の現状を説明して……」


「うん」とオレは頷く。


「____“ナオトは助からない。だからせめて最期は、他人にやられる前に、私が終わらせたい”」


彼女の事を思ってか、フェリオナは悲痛な声で言った。


『……だから、ちゃんと説明して、言いたいことやナオトに伝えたいことを、あの子たちに聞きたいの』


「…………私は、その旨を伝える為に来たのだ」


フェリオナはそう言って、再度姿勢を正す。



「いいよ、終わらせちゃって。頑張れマミー!……って、伝えといて」


「…は…?……それだけか?」


「ん?うん、だから別に良いよって言ってんの」


あり得ないといわんばかりに、フェリオナは動揺する。


「……も……もしかしたら、まだ救う手立てがあるかもしれないんだ!……アイハは、口ではあんな事言ってたが、本心ではまだ迷っていた……!……せめて止めてと、二人が言えば、彼女はまた考えなおすかもしれないんだぞ!__ようやく……ッ…」


言葉が詰まり、フェリオナは苦虫を噛み潰したような顔になる。



「フェリオナ」


「…………………」


オレは、物言いたげなフェリオナを見据えて言う。


「それは、余計なお節介っていうんだよ。」

「____……」

オレは、構わず言う。


「あの母さんが畏まって言うんだ。相当悩んでの決断なんだってのは、言われなくとも解るんだよフェリオナ。敵になりながらも、試行錯誤してその結果に及んだのなら____オレら子供が、いう事はないよ」


話しは終わったので、オレは椅子を引いて席に立つ。


「ぁ、ロリー。買い物手伝ってー」


「うん」


その場にフェリオナを残し、オレとロリは家から出た。





「ロリ〜、防犯ブザーって電池ある?腐り始めてない? 」


今日はいつものスーパーではなく、電車に乗ってデパートまで訪れている。


「カッター何色がいい?あ、裁縫の糸も買わなきゃ。サバイバルの参考書もいるかなぁ、護身術とか」


「…………あっちに行くつもりなの?」

買い物に付き合ってくれるロリは、オレの服を引っ張って質問してきた。


「まさか。でも、備えあれば憂いなしっていうでしょ?良心やら正義感やらでフェリオナが、二人の為だ!とか何とか言いだして、脅してでも母さんに会わせようと、そのアラムデュアってとこに連れてくかもしれないじゃないか」


オレは笑って妹の頭を撫で、買う商品を選ぶ。




…………そんな顔すんなよロリ。

分かってんよ、フェリオナがそんな事しないってことはさ。







アイハ___もとい、会沢春子。

よくユーザー名で母さんは、アイハと名乗っていた。


それから、会沢尚登。

今ではもう死亡人扱いの、最初に居なくなった父親だ。


この二人の名前が、見ず知らずの不審者の口から出るものだから、もう何がなんだか。………はぁ、ロリに宥めてほしい。



___5年以上放置しやがったオレの親。




…………何やってんだかなぁ〜………今更。オレは死んだと思い始めてたのに。気持ちの切り替えが出来たのに。割りきれたのに。今になって、何で、こんな奴が。

ほっときゃ良かったのに。こんな、回りくどいことして。理由こじつけて。こんな、ふざけた真似して____ホント、………………何してんだよオレ。


1ヶ月間。

色々対処はしたんだ。もぅ、考え込む暇なんかないくらいには動いちゃって。働いて。まぁ元々そんな余裕はないんだけども。予定作っちゃって、忙しい忙しいってして。

たまにフェリオナと会話をすると、理性が不安定になるから困った。 …………本当は、訊きたかったんだ。洗いざらい吐いてもらいたかった。細部に至るまで、どうして出会ったのかとか。色々、知りたかった。

…………けど。


けどさ。


何だよ異世界って。何よ魔王とか勇者って。


……ああ、分かるよ? よくあるよね、そういうの。もぅ定番ともいえるよね。うん。

あの二人が続けて失踪するのだって。まぁ、何かあるとは思ってはいたんだよ? 何かトラブルにでも遭ったんだろうって。なんか予想外過ぎる事情だったけどさ。


分かってはいるんだ。

フェリオナがこんな冗談言わないくらい。勉強も何もかもあんなに必死にして。嘘つくのが下手なんだって、真面目過ぎる奴だって。そんなの同居して、フェリオナの性格はもう十分に分かった。


頭では、分かってるんだよ。そっちも大変だったんだってさ___だけど、どうしても、気持ちが、ついていけなかった。整理、出来なかったんだ。もう、我慢が、出来なかったんだよ…………。





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