異変
素人です。3流以下です。
起承転結も決まっておらんというのに、投稿するようなおバカさんです!
先に謝らせてください。色々とごめんなさい。
香ばしいにおいが、キッチンに漂っている。
「おはよー、にぃに」
背後から声をかけられたオレは、我が愛しい愛しい妹に「おはよ」と返した。
「何 作ってるの?」
食卓について、事前に作った朝食に手をつけた我が妹は尋ねてくる。
「昨日あまったハンバーグをすり潰して、ピーマンの肉詰めにしてみました〜」
「なにそれ美味しそう」
あれ、あまりものなんだけど?
目を輝かせた妹を見、オレは仕方なしとピーマンの肉詰めを二つほど小皿に移してテーブルに置く。
「ホイ出来立てよん、火傷しないでね」
「やった!チーズ入ってる」
「飲み物何がいい?」
「牛乳!」
ご要望どおりの牛乳を注いだコップを他の食器に揃えて置く。美味しそうに食べる妹の姿を微笑ましく思いながら、オレは出来上がったおかずを弁当箱に敷き詰めていった。
「ごちそうさま!」
「お粗末さま、食器置いてていいよ。日直なんだろ?」
「ありがと!」
ドタバタと登校する身支度をし、いつも通り妹は最後にカチューシャをつけて、可愛らしいおでこを披露する。
「あ、ロリ」
「ロリじゃない!」
既に反射して応えるようになったロリに、折りたたみ傘を持たせる。
「昼から雨降るらしいからね」
「……ん、分かった。いってきます!」
「いってらっしゃい」
扉が閉まるのを見送ったオレは、食器類を片付けて準備を始めた。
「……ハァ、なんかダルい……」
まぁ、いつもの事だけど。
ロリが立ち去ると、感傷に浸ってしまうものだからいけない。
キッチン付近の窓から、何やら忙しない声が聞こえた。
「……__! 大丈夫か!? 救急車! おいすまねえ、誰か救急車呼んでくれねえか! 」
下から聞こえる。誰か倒れたのか?
ふと、そんな事を思いながら、カーディガンを着て弁当を手にとった。
「嬢ちゃん!しっかり!あぁ鼻血まで……___! 」
倒れた者に必死に呼び掛ける声。
___嬢ちゃん。
「…………ロリッ!!? 」
オレは、聞きいるようにキッチン付近の窓に飛び込んでしまった。
……いやまさか!さっきは何も違和感なかったぞ!
真相を知るべく、咄嗟に玄関へと向かおうとした矢先____。
機械と機械がぶつかったような。車と自転車が事故ったような。
そんな、衝突音が家のリビングあたりから聴こえた。
「……もう 今度は何?」
苛立たしく独りごちるオレは、早く下に駆け寄りたい衝動を抑えてリビングに近寄りカーテンを開けた。
「………………………」
何故か、変人が引っかかっていた。
黒い長髪。
現代社会ではあまり見られない、鍛えられたデカイ図体。
異質なのは、金属製の鎧を身に纏っているからか。背に大剣を抱えているからか。瞳が赤いからか。
清々しいほどに歪められた柵が、悲鳴をあげていた。
何とかよじ登ろうと身動ぎして動いてみるものの、柵はそれで耐えかねたのか、根本から千切れ、男は間抜けな顔をして柵と一緒に転落した。
そこで声をあげずに落ちたから大したものだ。
カーテンを閉める。
「ロリ!」
心優しいオッサンがいるから大丈夫だろうが、見ず知らずの野郎に今ロリが触られているかもしれないと思うと、いてもたってもいられずにオレは走った。
※
やはり、倒れていたのはロリだった。
救急車はまだ呼んでいなかった。……人通り少ないもんね、この時間。騒動に気付いた近所の人が、車に乗せて病院まで運んでもらった。ありがたい。
疲労による発熱らしい。
真正面に躓いて倒れた為か、顎や頬に怪我をおっていた。
そんなに無理してたのか……。まだ小学生なのに疲労からって、いじめにでもあっていまいな? よし、完治したら問いただしてやろう。
「お兄さん。酷な事を言いますが、保護者としてしっかり妹さんを見てやってくださいね。普段は元気に振る舞っていたとしても、ちゃんと気づいてやってください。あと、本人にも無茶をしないように言い聞かせてくださいね」
医者だったか、看護師だったか。はたまた助けてくださったオッサンか近所の人だったか。
うん、反省反省。
近所の人は送ってもらったあと、仕事があるらしかったので既に帰っている。後で礼をしなくては。
薬貰い、金を払い、タクシーを拾う。
ロリの体はぐったりとしていた。さっき吐いちゃったもんね。
後部座席でオレの膝を貸して横になる。
明るく食事をしていたロリの表情が打って変わっている。真っ赤になった顔に浮かぶ汗を、ハンカチで拭うと、ロリが此方を覗いた。
「……にぃに、学校は?」
「休むって連絡したよ」
何を思ったのか、ロリは涙を流す。
「……ごめんなさい」
「謝らなくていいよ」
「でもお金、ないのに……」
あはは、大人だなぁ ロリは。
「ロリが気にすることじゃ無いよ。こんな時に使う為にオレは働いてるんだから。寧ろ光栄さ。治ったらちゃんと表彰してね」
「……ん」
ロリは素直に返事をして、オレの太ももに顔を埋めた。
相当参っているらしい。
いつもならヤダって突っぱねるのに。
窓を見る。
予報通りに雨が降った。
※
休んで三日後になると、すっかりロリは元気になった。けれども今日まで学校は行かないで安静にしてもらう事にした。
「ロリ、お留守番よろしくね」
「うん、いってらっしゃい」
「行ってきます」
オレは2日ぶりに登校し、いつもどおりに授業を受けて、いつもどおりに校則時間外までアルバイトをして家へ向かう。
その帰り道。
「……?」
路地裏に違和感があった。ゴミを荒らすような物音がすれば誰もが不審に思うだろう。
だからオレも不審に思って路地裏を伺った。
不審者がいた。
酔っぱらいじゃない、ホームレスでもない、不審者だ。大剣を抱えた、リビングで見かけた、あの不審者だ。
願わくば。腹を空かせた猫かカラスを一目見れたらと思っていたが、見事に的外れなものと目があってしまった。
ここらの歩行者よろしく無視すればよかったと、その時オレは後悔するのだった。