エンディング
ギュルは力なく崩れたユーリを見下ろしていた。
手にはユーリを斬った時の感触が残っていた。
「う、うわああああああああっ」
ギュルは剣を放り投げ、尻餅をついた。
腰が抜けてしまったのである。
ユーリはうつ伏せのままピクリとも動かない。
「うっ……」
思わず叫び声を上げそうになった。
大量の血が地面を伝っていた。
「な、何が竜の部分だけを斬るだよ…… あの野郎っ!」
ギュルは這うようにしてユーリに近づいた。
そして、その体を抱きとめて愕然とした。
ぐたりと重く、熱が逃げていくようだ。
まるで……
ギュルはおぞましい考えに行き着いた。
竜の部分だけを斬るなんて都合のいいことはできなかったのだ。
「嘘だ……」
ユーリをこの手にかけてしまった。
例え、ユーリが竜人族だろうと、生きていて欲しかった。
ユーリと旅を続けたい、それが本音だった。
今思えば、何で竜人族を殺す必要があるのだろうか?
ユーリはあんなに優しかったではないか。
もう隣で話しかけてきてくれないのか?
一緒にご飯を作ってくれないのか?
一緒に星座を数えてくれないのか?
自分が落ち込んだ時に励ましてくれないのか?
「ユーリ……」
頬を伝った涙は、ユーリの手の甲に落ちた。
「ここは……?」
ユーリは上下左右の分からない空間に浮かんでいた。
自分はどうなってしまったのか?
カムスの魔道書を焼き払ったところまでしか覚えていない。
「わっ」
突然、目の前に血まみれの自分が現れた。
「たす……けて……」
そう言って手を差し出してきた。
ここは夢なのか?
ユーリはその自分の声に従って手を伸ばそうとした。
その時、手の甲に何かが触れた気がした。
「水滴?」
しかし、すぐに気が付いた。
「……また泣いてるのね」
ユーリはギュルを探し始めた。
「全く、私がいないとダメだからなぁ。 ごめんね、もう一人の私」
竜の鱗をまとったもう一人のユーリは、まるで海の底に沈んでいくように、消えていった。
こうして、ユーリは半身を失い、竜人の力は失われた。
後遺症でしばらく車いす生活を余儀なくされたが、看病はギュルがすべてやった。
入院生活中に、ある日ユーリが切り出した。
「ちょっと連れてって欲しいところがあるのよね」
それは、竜の谷と呼ばれるユーリの故郷だった。
アルド傭兵団の助けを借り、みなでその谷に向かった。
「ここが私の故郷、そして、ここが私の家」
ユーリの住まいは洞窟の中にあった。
しかし、その中にはキッチンや居間などがあり、人間が住むのとなんら変わらない光景があった。
「ユーリ!」
出迎えたのは母親だった。
そして、
「かあさん、私の婚約者を紹介するわ」
終わり
はしょりすぎ?w