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kimi  作者: LEIN
19/19

朝日はのぼる(一応最終章です)

−2ヵ月後ー



馨はパソコンの前でうたた寝をしていた。


ふと顔を寝返り打って、パソコンの端に当たってしまった。



「あいててて」


目を擦って起き上がる。


もう朝の4時だ。


外からは朝日が昇る気配がする。



目を擦った右手の力が抜け、キーボードにすべり落ちてしまった。


「何やってるんだろう、僕は…」


慌てて起きると、すべり落ちた手の平がエンターキーに当たっていたのか、誰かが入室している事に気がついた。




TAAKO ハーイ


馨は眠い目をまたこすって入力した。


馨 こんばんは。あ、もうおはようかな。


TAAKO こんな時間までずっと起きていたの?


馨 いつの間にか寝ちゃってたよ。今起きたところ。


TAAKO −kimiさん待ってます−ってトピックにあるけれど。


TAAKO このお部屋、毎日作ってたの?


馨 まぁ…そうです。。


TAAKO お邪魔だったかしら?


馨 いいよ。もう、待ち人はここには来ないってわかってるんだ。


馨 それに、もう朝だもの。


TAAKO いい朝ね。


馨 うん。だんだんキレイな空になってきてる。


TAAKO 馨は彼女、いる?


馨 いないよ(笑)。


TAAKO あら、サミシイわね。


馨 確かに寂しいよ。


馨 でも、寂しい、寂しいって言ってるだけじゃ、何も解決しないから。


TAAKO 大人の意見ね。


馨 強がってるだけかも。


TAAKO 待ち人はお友達?


馨 ううん。ママであり、恋人であり、家族。


TAAKO 本当に変わった子ね。メールでもしてみたらどう?


馨 メールアドレスすら、知らないんだ。


馨 聞いておけばよかったよ。鈍くさいな、僕。


TAAKO 本当にね。


馨 ?


TAAKO ちゃんといい子にしてたのかしら?


馨 ?…



TAAKOさんが退出しました。と、ディスプレイに表示された。


馨は何度も何度もエンターキーを叩き続けた。






やがて、誰かがチャットルームに入室してきた。




馨 本当にkimiなの???


kimi おひさしぶりね。


馨 ウソ…。


待っていたはずなのに、馨の目が丸くなる。


kimi あの、ネットナンパ師が、一体ずーっと何をしているのかしらね。


kimi 二ヶ月間もナンパひとつもせずに、空き部屋にいるなんて。


馨 kimi!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


嬉しさは、段々と涙にかわる。



馨 会いたかったよ…。


馨はディスプレイの前で、顔をゆがめた。


kimi 私も会いたかった!


馨の頬が、すこしずつ震えてゆき、やがて、涙でぐちゃぐちゃになってゆく。


馨 僕は…、僕は、ずっとkimiに会いたくて…。


馨はひっくひっくと、しゃくりあげて、キーボードが打てない。


馨 会いたくてたまらなかったんだよ。


kimi うん…。


kimi わかってる。


馨 本当は大好きなんだよ!!


kimi 私を?


馨 うん…。


kimi ママとして?


馨 ママとしても、女の人としても、です。


ディスプレイの前でkimiも目尻に浮かんだものを拭っていた。



kimi 私もその言葉を待っていたのかもしれないわ。


馨 kimi…?


kimi さぁ、仕切り直しよ!


ディスプレイの前で、kimiはかけた眼鏡を持ち上げた。レンズの奥の目が優しく笑っている。


kimi 馨、両手を広げて?


馨 こう?


馨はディスプレイの前で両手を横にのばしてみた。


kimi そう。


馨はどういう事なのか、すこし当惑した。


kimi 広げたままね。


kimi 今、あなたの両手には羽根がついたの。



kimi だから、もう自分を閉じ込めないで、どこにでも飛べるのよ。


kimi そして、


kimi 私も飛び立てる羽根をつけて、両手を広げるわね


kimi だから馨、私の手の中に飛び込んできなさい。




馨は両手を広げたまま、肩も腕も、ガクガクと震わせて泣き続けていた。



もう終わったんだ。自分を閉じ込めて、飛べなくなっていた日々は。


そして、腕の中には、愛する、本当に愛する人が、本当に僕の中にいる。









この大都会に朝の空がいっぱいに広がっていく。


人も街も歩き始める。


そして、沢山の人々の、それぞれの生をコンクリートの大地が受け止めていく。


痛みも、喜びも、すべて、飲み込みながらー。








−END−



最後まで、お付き合いいただき、大変嬉しいです。


みなさんの感想をお聞きしたいので、下記の□(四角)のフォームより、なんらかの感想をいただけると嬉しいです。採点して下さると尚嬉しいですよ。


点数は気分のノリで構いませんので、気軽につけて下さいね。



本当にありがとうございました。



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