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「ったりめーだろ。見りゃわかるだろうが。」
部屋は…とぶつぶつ呟きながら、パネルを眺めている。
「なんでラブホなのさ?」
三歩下がって、おそるおそる美樹に尋ねるが、返答はない。
プチッとボタンを押して、キーを取ると、美樹はエレベーターへ歩いていった。
美樹はエレベーターに乗り込み、「3」のボタンを押すと、ふぅ、と壁にもたれ、「こんな所じゃないと、小心者のお前はちゃんと喋らないからな。」とニヤッとした。
「悪かったな、小心者で。」
「フリータイムだ。いっとくけど、ワリカンだからな。」
「今、僕貧乏なのに」
袋の中で斜めになってしまったカレーを馨は慌てて直すと、ぶつくさ文句を言った。
「降りるぞ」
と美樹はためらいもなく、308号室へと進んでいく。
赤いカーペットが、なんだか、いかにもラブホテルという、艶めかしさ演出しているようだ。
「私のセンスだから、気にいらなくても我慢しろよ」
とキーを入れると、豪華すぎる大理石の玄関から白いお城の中のような部屋が広がっていた。
「なかなか可愛い部屋だろ?」
「うん…。」
美樹のセンスに少し感動すると、馨は円形のベットに座った。
「なんだか、ベルサイユ宮殿みたいじゃない?」
「ベルサイユはこんなにチンケじゃないだろ」
「でも、可愛い部屋だなぁ。」
「お前が選ぶ部屋よりもセンスがいいだろ」
「悪かったな。センス悪くて」馨はぷうと膨れた。
瞬間、身体ががグラっと動き、うわっ!!と馨が悲鳴を上げた。