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kimi  作者: LEIN
14/19

14

馨は机にうつ伏せになったまま、右手でキーボードを叩いていた。


もう2時間もこうしたままだ。


誰かが入室してきた気配がして、ハッと起き上がった。



馨 僕が悪かったよ!!


バかおる 悪かったって何が??


馨 ごめん、間違えた。。。


馨 って君はいったい???


バかおる さぁね(笑)。


バかおる ふふん。


薫 ???


薫 バかおるって…。


バかおる 入りなおすよ



バかおる さんが退出しました。とディスプレイに表示され、すぐにまた誰かが入室すると、部屋はロックされた。


美樹 これでわかった?


馨 まったく。。また邪魔しに来たのかよ(笑)。


美樹 ふふん。


美樹 このくそばか馨め


馨 はぁ??


美樹 このあいだ、「ゆか」で入ってみたのに気がつかなかったろう?


馨 あー、14歳、彼女からメールが来なくて悩んでた子って…まさか。


美樹 そっそ。


美樹 お前にしちゃニブイな。


馨 あれは完璧に騙された!!


馨 僕としたことが…。。


美樹 で、何やってんのさ。


美樹 三日間も−kimiさん待ち−とかなんとかボーっとしちゃって。


馨 よく見てるナー(笑)


美樹 で、kimiさんとやらは?


馨 友達なんだ。


馨 友達であり、ママでもある。


美樹 なんだそりゃ?


突拍子もない事を言うのが馨のバカ正直で面白い所だけれど、さすがに「ママ」には呆れた。



美樹 で、そのママから待ちぼうけってヤツかwww


馨はうなだれた。


美樹 おい、なんか話せよ。チャット部屋開いてるんだろ。


馨 なんか、駄目なんだ…。


美樹 なんでその人がお前の「ママ」なんだよ。


馨 僕が女の子に振られて落ち込んでたら、僕のママになってくれるって言ってくれたんだ。


美樹 それで引いたんだろ


馨 …。


美樹 ネット上だろうが、”ママ”呼ばわりされてさ


ふふんと美樹は鼻で笑った。


馨 kimiはそんな人じゃないよ。


美樹 どうしてそんな事が言える?


馨 僕の”ママ”になってくれるって、ちゃんと約束したんだ。


美樹は、キーボードに両手を置きながら、チッと舌打ちをした。


馨 …。


美樹 おまいの両親の事は残念だったけれどさ。


馨 うん。


美樹 優しいママだったんだってな。


馨 ありえないほど、僕には優しいひとだった。



馨は、喪服のまま、一人ぼっちで海を見に脱走したのを思い出していた。


なぜ僕を置いて、二人は行ってしまったのだろう。


いなければいいと思っていたのに


いなくなったら、どうしていいのかわからない事だらけになった。




美樹 ママは置いておいて、どうしておまえは、年上ばっかりナンパする?


美樹 美樹 小さい頃は、同級生の女を好きだったんだろ?


馨 わからない。


馨 きっと、あの時と今は好みが変わったんだよ。


馨ははっとして入れなおした。


馨 kimiは違うよ。家族として愛してるんだ。


美樹 ”永遠の母親”みたいな存在としてかもな。


馨 …。


美樹にはピーンと来た。


馨 やっぱり「ママ」がいやだったのかな…。


美樹 さぁね。母性愛を感じると同時に、気持ち悪くなる事もあるだろ?


馨はしょぼんとパソコンの前で頭を垂れている。



美樹 そのケンカの時、何を話していた?


馨 この間会った、女の人の事だよ。


美樹 うんうん。


美樹 どこからケンカが始まった?


馨 豪華な和食を食べて、バーに行って、そのままフラフラになったら、お家に連れていってくれたんだ。


美樹 それから?


馨 彼女のベットで胸触ったところまでは普通に話してたよ。


美樹はイライラして頭を掻き毟った。



美樹 馨さ。


馨 うん?


美樹 まったくいつもながら…。


ニブイと言いたい気持ちをぐっと堪えた。


美樹 母である前に、kimiさんは女だぜ。


馨 どうしてだよ?


馨 kimiはママだよ。寝る女じゃない。


美樹 向こうはそれだけじゃないかもしれないじゃないか。


馨 は?


馨は思わず笑ってしまった。


馨 楽しく話しているだけさ。kimiにはそんな気はまったくないよ。


美樹 だったらどうしてそこで怒る?


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