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9時35分に、馨は、やっと部屋に入ってきた。
馨 こんばんは…
馨は昨日泣いてしまった事が照れくさくて、こそこそと入室した。
kimi 遅かったわね
馨 すいません。
貴子 はいつもより馨が他人行儀なのに気がつく
kimi どうしたの?
馨 いや、どうもしてないんだけれど。。
kimi 昨日の事、気にしてるのね?
kimi 恥ずかしがらなくっていいわよ。
馨 いや、恥ずかしがってなんかないってば。
kimi 嘘おっしゃい
kimi オナペット馨
馨 ぎゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
馨 やめてくれよーーーーーー\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
kimi 馨の電動こけしはなかなか優秀っと
kimi めもめも
馨 めもすんなーーー!
kimi ママが馨をオナペットとして派遣して…、出張費は500円で商売できるかしら?うーん。
馨 ばかなんじゃない?(呆)
馨 っていうか…なんかキャラクターが壊れてきてるぞ
kimi そうね。最近ちょっとおかしいわ。
kimi 私らしくない…。シリアスで通ってきたのに。
馨 うへー(笑)。
馨 まじウケル(爆笑)!!
kimi 笑うところじゃないわよ。
馨 変わった女だなぁ。
kimi 馨の方が変だわ
kimi 素直におなぺっとになっておけばいいものを。。。
馨 ………………。
馨 ………………………………………………………………。
馨 「ぇいこ@はおぇ;お」p9@いぷぺぽお
kimi 壊れないでよー
馨 …なっとけばよかったかもね。もったいないことをしたーー!
kimi やっぱり断ったのね
馨 僕が了承すると思ってたのか?
kimi 女体好きな馨なら、ありえるわ。
馨 女体って…。まぁ、大好きなのは否定しないけどさ(笑)。
馨 エッチは大好きだけれど、愛される希望のないエッチは虚しいだけ
馨 愛されたいんだ
kimi うん
馨 誰でもいいから…。
kimi えぇっ?
kimi それはだめよ。
馨 へへっ。
kimi っていうか…
kimi 本当に「誰でもいい」と思ってる?
馨 うーん…
kimi 考えるとこかしら?(笑)
馨 いくら僕でも犬や猫はちょっと…。
kimi そういう問題なの!?
馨 いや、本当に「誰でもいい」訳じゃないみたい
kimi 他人事みたいに言うわねぇ
馨 今考えてたんだよ。
馨 僕にもやっぱり「ちょっと違う」って事はあるよ。特にチャットはバーチャルだから。
kimi 思っていた人と違った?
馨 うんうん。勝手に想像が膨らんじゃうんだよね、会う前にね。
馨 で、会ったら、「ええーーー??」ってな事はあるよ。
kimi もしHする約束してたらどうするのかしら。
馨 それはキチンとご馳走になりますよ(笑)
kimi 好き嫌いなくなんでも食べるのね。
貴子はちょっと嫌味を込めて言ってやった。
kimi Hがしたいのか彼女が欲しいのかどちらなのよ
馨 Hもしたいけれど、そこから彼女を探してるんだ。
kimi 解り難いわ
馨 なんて説明したらいいんだろう…。
馨はパソコンのディスプレイの前で頭を掻いた。
馨 僕はね、最初に抱かないと安心できないんだ。どこかに相手が離れていってしまうような気がして、不安で不安で仕方ない。
馨 だから、抱いてしまえば、僕は安心できるんだ。
kimi それじゃあ、「セックス依存症」じゃない?
kimi もう少し余裕をもってみたらどうかしら
kimi いきなり抱こうとするのではなく、デートを重ねてみたらどうなの?
馨 僕には無理だね。
馨 駄目なんだ。離れてしまいそうで、不安で不安で仕方ないんだ。
それはきっと、馨のどこかに、何か埋められないものがあるからだわ、と貴子は分析する。
kimi チャットにトピックを入れる欄があるじゃない?
kimi あの欄にはいつもなんて入れてるの?
馨 kimiが最初に入ってくれた時と同じだよ。「近くの人、お話しましょう」。
kimi それだけ?
馨 「近隣で、実際に会える人来て下さい」の方がほとんどだね。
kimi だからよ、きっと。
馨 んん?
どうりで、セックスばかりが目的の女が集まるのはそのせいだ。
馨がそのセックスを通して、初めて安心して口説けるようになるというのだから、話はややこしい。
kimi で、どうやって会えるように話しを持っていくのか教えてくれる?
馨 まず、年齢、自己紹介、そして雑談をして、話しが合えば、「近々、デートしませんか?エッチもありで。」っていう風に。
kimi なんというストレートな!
kimi だって、ここはそういう場所はないじゃない?
馨 そういう場所って?
貴子は、以前の職場のレイコとの会話を思い出していた。
レイコと今の彼氏は出会い系で知り合って、今でも続いているらしい。
「あなたみたいな子でも出会い系を使うの?」
「ヤですね、先輩。今時当たり前ですよぉ」
あっ、っというようにレイコは肩をすくめた。
「すみません。つい友達言葉になっちゃって…」
ほんとにすまなそうに小さくなっているレイコに貴子は笑って肩を叩いた。
「いいのよ。私の世代には馴染みがないものだから。」
ぺろっとレイコは小さく舌をだした。
「これが今の彼なんです。」
貴子は目を見開いた。
「カッコいいじゃない!」
お世辞でも社交辞令でもなく、白いマフラーを巻いた彼は、爽やかな目をした好青年だった。
レイコは嬉しそうに
「彼は今、弁護士になる勉強をしてるんです。試験が近くなるとなかなかメールしてこなくなるから、「もう大嫌い!」とか入れると、焦ってメールを送ってくるのが可愛くて」
「なんだか彼、モテそうじゃない?」
「実はそうなんです。彼の学校の女の子がちょっかい出してくるの。頭にきてケンカになったんですけれど…」
レイコは声をひそめた。
「実は私の方が3人と付き合ってた時期があったりして」
貴子はレイコの顔をまじまじと見てしまった。ちゃめっ気たっぷりで、人懐っこくて、くるくると大きな目をしたこの素直そうな子が三股を?
ギャップに動揺したのを胸に抑えた。
「いまのたかしクンとは、このサイトで知り合ったんだけれど…」とレイコは携帯をチャカチャカ動かしながら、「ここにも入っていた事があって。でもたかしと付き合ってからは、覗く程度だけれど」。
先輩もどうですか?などと無邪気に薦める。
「ここは、ラブラブ恋人募集のコーナーで、ここは純愛プラトニックコーナー。で、ここは…」レイコはウフフと堪えきれない様子だ。
「何よ?」「今日会える人コーナー。つまり、時間空いてる者同士が、今からエッチしようコーナー!!」きゃははとレイコは無邪気に笑った。「みて、こいつ」。そこには茶髪でランニング姿のいきがった若者が斜めに身体を向けてこちらを見つめている。
「今、暇だよぉ。俺といい事しない?だって!」レイコはいったん笑い出すと止まらない。
「こんな誘いに乗る子がいるのかしら?」貴子は少々呆れながら、写真の少年を見ていた。
「いるからあるんですよぉ。レイコも一回だけ行った事がありますよぉ」
「ウッソォ!!」
「先輩、声が大きいですって」レイコはちらちら辺りを見回したが、実は大して気にも留めてそうになさそうで、更に活き活きと勢いづいている。
「実は3回試みた事があったりして」とペロッと舌を出す。
「で、どうだった?」