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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
琴音久瑠実からのお話
7/40

映子ちゃんと体育祭に参加した日

 前回は映子ちゃんが風邪を引いた時の話をしましたから、今回は学校でのお話をいたしましょう。

 高校史上で人によっては最も力を入れる行事、体育祭!(文化祭派と別れますので)

私はどの行事にも平等に力を入れるタイプですので、体育祭結構楽しみです。

 しかし何よりもうれしいのは映子ちゃんが当日だけですが、体育祭に参加してくれるということ。むしろそれだけがうれしいと言っても過言ではありません。

…準備が楽しいのですが、それは仕方がありません。


 体育祭の中で私が一番好きなのは、お気づきの方もいるかもしれませんが準備です。なんというか、本番のためにって感じが好きなんですよ。

人との交流もありますしね。私には関係ないですけど。

 とにかく準備が好きなんです!今回は本番にだけ参加する映子ちゃんのためって感じがしてより一層やる気が出ます。

 私は映子ちゃんに会うことができる本番のために、全力で仕事をすることにします。

先生がおっしゃいました。

「準備委員っていうのがあるんだがやりたいひとはいないか?」

 全力で手を上げます。

「先生、それは私の仕事でございます。」

「おう。琴音、リーダー頼むな。」

「任せなさい。」


 無事体育祭での委員会に所属することができた私は、体育祭前の数日、体育祭本番のために尽くすことになりました。

こういうことがやりたい人間なのです。別に目立ちたいわけではありません。

 すべて映子ちゃんのためです!!!

 

 体育祭一週間前。ついに本格的な体育祭の準備が始まりました。

うちの高校、行事は全てガチです。クラスTシャツとかもやる感じです。

 私の出番です。任せなさい…!すべて映子ちゃんのため。

「琴音さん~!これどうしたらいい?」

「それは、準備室においてきてください。もう必要ないはずです。」

「ありがとう!」

 ふう、忙しいですね。

「琴音~。これどうすんの?」

「明日使う予定になっているので、教室のロッカーに入れておいてくださると助かります。」

「おう!ありがと~!」

 まったく、誰のためにやっているのでしょうか。…すべては映子ちゃんのため…!!


 毎日の映子ちゃんへの学校についての報告は忘れずに、私は毎日着々と体育祭のための準備をすすめました。

 身長小さいですけど、だれよりも頑張ったと思います。普段は絶対やらない力仕事も映子ちゃんのためと思ってやったんです。えらいでしょう。

 

 そしてついにやってきましたよ!体育祭当日でございます!

この日のために毎日毎日毎日毎日準備を進めてまいりました。映子ちゃんのために。

 映子ちゃんが教室にいらっしゃいました。

「おはよう久瑠実。準備お疲れ様。」

 ついに映子ちゃんの顔を拝めます…!一週間物肉体労働ですっかり疲れてしまった私の心身が一気に癒されていくようです。

「おはようございます、映子ちゃん。今朝の体調はいかがですか?」

 映子ちゃんが風邪をひいてしまったあの日から、映子ちゃんの体調が気になって仕方がないのです。

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。安心しろ。な?」

 私にそういう映子ちゃんの顔は健康そのもの。睡眠時間も増やしただとか。

「それならいいんですけどね?」

 体育祭の活動で随分学年的に有名になってしまった私は、映子ちゃんとお話しているとひどく視線を浴びるようになってしまいました。

不覚でした。映子ちゃんを至近距離で見つめさせるわけにはいきません。

「映子ちゃん、移動しませんか?」

「あたしは構わないが?」

 映子ちゃんにわずらわしい移動をさせるのは大変申し訳ないのですが、非常事態です。

「行きましょう!」

 映子ちゃんの手を引いて、ひとまず朝礼まで屋上に避難することにしました。


「どうしたんだ、久瑠実?」

 心配そうに私に聞くものだから少し申し訳ない気持ちになりました。

私は正直に答えることにします。嘘をつく理由もないので。

「私が体育祭の準備で張り切ってしまったものですから、少々クラス上での立場が変わってしまいました。そのせいで映子ちゃんとお話していると目立ってしまってですね。居心地が悪いかなと思いまして。」

 複雑そうな顔をする映子ちゃん。多分申し訳なく思っているのでしょう。

何も気にかける必要などないのに、やっぱりいい子なんですよね。

「なんかごめんな。あたしが不良みたいな立場にいるせいで…。」

 本当に申し訳ないです。でしゃばりすぎた私が悪いのに。

私は映子ちゃんに、とっさに抱き着きました。

その瞬間映子ちゃんの顔が真っ赤に染まっていきます。

…もしかして、相当な恥ずかしがり屋さんなのですか?

「く…くるみ。なんだ?何がしたいんだ?」

「あ、すみません。」

 といいつつも腕は回したままです。

「映子ちゃんが悪くないということを全身で伝えたかったのですが、どうでしょうか?」

 映子ちゃんの顔は今もなお真っ赤です。…大変可愛いですね。

「わかった!分かったから離してくれ…!」

「なぜでしょう?」

 ここは鬼畜で行きましょう。可愛いので。

「は、恥ずかしいから!!やめてくれ!!」

 そんなことは初めから存じ上げていますけどね。

仕方がないので離すことにします。そういえばこんなに接近したの初めてですね…!


 朝礼5分前のチャイムが鳴ったので、教室に戻ることにしました。

しかし映子ちゃんの顔の熱がなかなか下がらないので、映子ちゃんの手を私が引くことに。

「映子ちゃん、いつまで赤くなっているんですか?」

「だって…はずい~…。」

 間抜けな声が返ってきました。どうもそういうのは慣れていないようで、小学生よりもうぶなようです。

「仕事で人と一緒にやったりするんじゃないんですか?近いことだってあるじゃないですか。」

「仕事は別なんだよ!!仕事だったら、割り切ってるからさ…。」

 少しずつ頭部にたまっていた血が引いてきた映子ちゃん。言葉が落ち着いてきました。

というか、仕事でやっていたら耐性もつきそうなものですけどね。

「慣れないのですか?」

「慣れない!つーかもうこの話やめよう…。また血が上りそうだ…。」

「そうですね…。」

 教室にたどり着き自分の席に着きます。因みに私と映子ちゃんの席は前後です。

担任の先生はある程度事情を知ってらっしゃるので、私がちょっと…細工を。


 朝礼が終わり、学校中のテンションが徐々にマックスに近づこうとしている中で私たちもグラウンドに向かうことにしました。

 今日、参加権利のある種目というのは…100m走とクラス対抗綱引きと男女別競技の騎馬戦ってところでしょうか。応援合戦は面倒臭いのでパスで。

 映子ちゃんには参加しなければいけない競技をあらかじめ伝えてあるので、準備はある程度しているのでしょう。ルール説明もしっかり行いましたし。

 一番初めは100m走ですね。

 私は映子ちゃんを連れて召集場所に行きます。本当は一緒の組で走りたかったけれど恐れ多いので、私がひとつ前の組で走らせていただくことにしました。

「久瑠実、お前走るの速いのか?」

「大したことないですよ?あんまり運動は好きではありませんし。」

「そうか…。」

 たぶん、どれくらい手加減するか考えてるってところでしょうか。

「まあ全力でやりましょう。せっかくなので。」

「ああ、そうだな。頑張る。」

 納得したような顔をしてうなずいていたので多分私の予想は当たっていたというところでしょう。手加減。

 しかしこの数か月で映子ちゃんのことはほとんどわかるようになりました。表情で。


 映子ちゃんとお話していたら、もう私の番が来てしまいました。

さて、本領発揮と行きますか。

「位置について!よーい!」

 ピストルの音がグラウンドに鳴り響いた瞬間、走り出します。

 前にも隣にも人はいないようです。そのまま全力疾走。

 周りの人の声が聞こえてきますね。

「あいつ誰だ!!?めっちゃはえ~!」

「おおおお!!」

 湧いているようです。また変に目立ってしまいましたね。

しかし、私は手を抜くことができないのです!!

 ぶっちぎりの一位でゴールテープにたどり着いた私。息は上がっていません。

「さて、次は映子ちゃんの番ですね…!お手並み拝見と行きましょうか。」

 きっと長い脚で颯爽と駆け抜けるのでしょう。ポニーのように。

 さっきから周りの人に見られているような気がしますがそれは気にしない方向で行きたいと思います。

 映子ちゃんが走り出しました。予想通りとても速いです。そして格好いい。

周りも歓声を上げます。

「あいつもやべー!!」

「めっさ速いな!!」

 お前ら一体誰なんですか。

 映子ちゃんはゴールした後、視線的にも体的にも一切寄り道をせず私のもとへやってきました。

「久しぶりに走ったから疲れた…。」

 息を荒らしてそうつぶやく映子ちゃん。いつもはポーズを作ることに専念していますからね。そりゃいきなり走ればしんどいはず。

「お疲れ様です映子ちゃん。少し室内に行きましょうか。ここでは干上がりそうです。」

「久瑠実はなんでそんなに冷静なんだ?」

「私、疲れないので。」

「失敗しないので、みたいに言うなよ。」


 さぼり場所の聖地、屋上は避けて、空き教室に行くことにしました。

多分先生ですら知らないであろう隠し部屋です。

「久瑠実…。なんなんだ、ここ。」

「隠し部屋でしょうね!」

 にっこり笑顔で答えると、複雑そうな顔で私を見る映子ちゃん。何かご不満でしょうか。

「やっぱりあたし学校のことあんまりしらねーな…。」

 どうやら学校のことを知らないのを落ち込んでいるようです。しかし…

「この教室、知っている人は私以外にいないと思いますよ?」

「なんで久瑠実は知っているんだ!!!?」

「この学校の設計図を入手しているので。」

 これにいたってはかなり探しましたけどね。夜中に…っていうのは嘘で普通に昼間にこそこそ探しました。

「スゲー…。それにしてもレトロな部屋だな。それに涼しい。」

「ええ、初代校長の趣味なんだそうです。涼しいのは日差しが入らず、風通しだけよくしてあるからでしょうか。」

 学校の秘密ってなんかいいですよね…。


 ばっちり涼んだ後私たちは生徒待機場所、グラウンドに戻ることにしました。

もちろん体育祭をやる時期ですから炎天下です。辛いですね…。

「映子ちゃん、次は綱引きですが参加したいですか?」

「ぶっちゃけやりたくねーよ。できるならパスで。」

 綱引きの縄って、手が傷ついたりしますからね…。

「映子ちゃん、パスしに行ってきます。私もパスですし。」

 私だって手が荒れるのは嫌です。見た目レベルを下げてはいけないのです。

「おう。…あたしも一緒に行く!!!」

 二人で頭を下げました。

 涼みに行きたかったのですが、さすがに参加を断っておいてどこかに行くのは申し訳ないので、見学することにしました。

 感想としては、縄があんまり動かないとダサい、ってところでしょうか。


 お次は騎馬戦です。しかし女子ですがエントリーはしていません。

参加権利があるだけです。

 だって映子ちゃんをほかの人に触らせるわけにはいきませんし、私だってあんな女の戦場みたいなところに飛び込んでいきたくありません。

 これに至っては見学もあんまりしたくないですね。物騒ですし。

「映子ちゃん、あの部屋に戻りましょう。騎馬戦はあまりにも物騒でエントリーしていませんし。」

「ありがたい。怪我したらマネージャーにぼろくそ言われるから…。」

 でしょうね。


 さっそく空き教室こと隠し部屋に向かうと先客がいたようです。

一心不乱に壁をたたいています。存在のうわさを聞いたものの開け方を知らないと言ったところでしょう。

それはね呪文を唱えないとだめなのですよ。

「映子ちゃん、トイレに行きましょう。」

「ああそうだな。」

 悪戦苦闘している可愛そうな生徒に手を差し伸べてあげるほど、私はやさしくないのです。

 

 数分立って戻ってくるとそこには誰にもいません。もしかしたらまだ近くにいるかなと思ったので、一見何もない壁の前に座って涼むことにしました。

 廊下でも十分に涼むことはできますしね。

「ここじゃ、戦のまがまがしい音が聞こえてきますね…。映子ちゃん…女って怖いです!」

「あたしたちも女だろーが。」

 少し話しているとさっき悪戦苦闘していた生徒がこちらにやってきました。私はとっさに映子ちゃんを守れるよう攻撃態勢に入ります。

「あのーすみません!エコさんですよね?」

 ついにきたかって感じです。

 私はとりあえず映子ちゃんの前に立ってそいつの対応をすることに。

まぁ年上なんですけどね、そいつ。

 

選択肢①殴って記憶を飛ばす。

選択肢②全力ではぐらかす

選択肢③交渉


 ③が一番妥当でしょうね。私としては①が理想ですけど。しかし私は②を決行することにします。

どうにか別人という方向に持っていきたいところです。

「違いますよ。すっごい似てるんで私も勘違いしちゃったことあるんですけど、べつじんなんですよね~~!!ドッペルゲンガーって本当にいるんだなーって思います~~!」

 得意の馬鹿っぽいしゃべり方ではぐらかしに入ります。自分がこんなの得意とか信じたくないんですけどね。

「そうそう。よく言われるんだけど困っちゃうんですよね~~。」

 映子ちゃん、演技レッスンも受けているそうなので完璧です…。

「あ!そうですよね~~~!こんな片田舎の学校にいるわけないか!大ファンだから見間違えちゃったのかも!!ごめんね~~??」

 大ファンとかほざきやがるのでかなりいらっときましたがそこはスルーしておいてあげましょう。…どうせ雑誌立ち読みレベルのくせに…!

「ところで、さっきなぜ壁をたたいていらっしゃったのでしょうか?」

 一応聞いておいて差し上げましょう。

「いやーさっきここに誰かは言った気がしてさ!きのせいだよね!」

 見られてしまったようです。まぁいいです。

「え~壁の中に入るってやばくないですか~~??心霊現象かなんかじゃ…。」

「うわ!!怖い!あたし行くね~~ごめんね~そっちの子!!」

 どうやら心霊現象に反応したようです。占めました…!

「ああ、はい。大丈夫です。」

 映子ちゃんきょどってる…!

「ばいば~い!君たちも早めに離れないと取りつかれちゃうぞ~~!!」

「気を付けます~~!!」

 一通り演技を終え、脱力してしまいました。いや、はぐらかすのって結構面倒くさいですね…。

「疲れましたね映子ちゃん…。」

「ああ。つか、なんで久瑠実はそんな演技を…。」

 気になりますよね、やっぱり。これにはいろいろ理由があるんですよ。

「小学生の時から猫かぶりなんですよ。常に何かしらの演技をしているんです。」

 あんまり人に言いたいことではないですが、映子ちゃんだから仕方がありません。

「そうなんだ…。なんか理由でもあんのか?」

「私が敬語キープになった理由と同じなんですけど…またの機会でいいですか?今はせっかくの体育祭ですから。」

 無理やりはぐらかしてしまいました。あんまりいい話ではありません。私としてもあまり思い出したいと思う話ではないのです。

「そうだな…。」

 少し複雑そうな顔をした映子ちゃんでしたが、すぐに笑顔になり言いました。

「そろそろいかないか?昼飯の時間近いし。」

 やさしい映子ちゃん。私の事情を察してか、話をそらしてくれました。

申し訳ないのですが、まだ踏ん切りがつかないのです。今は…まだ。

「そうですね。おひるごはんはみんなで教室で食べますもんね!」

 

 午後もほぼサボって過ごしました。準備をあんなに頑張っていたのにどうしてかと聞かれましたが、まぁそれも適当にはぐらかして。

だってすべては映子ちゃんのためですから。

 その映子ちゃんに隠し事なんてしたくありませんが仕方ないのです。また今度…。

 

 今回もしんみりしてしまいましたね。

次は文化祭のお話です。文化祭も頑張ります…!


まだまだ続きます。


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