映子ちゃんとお出かけした日
次に何を話そうか考えていなかったのですが、初めて一緒に出掛けたときのことをちょうど思い出したのでお伝えいたします。
私の誕生日会の数か月後、映子ちゃんの誕生日の日。
家でパーティーをしてもよかったんですけど、それだと私の時と似ちゃうから。私は映子ちゃんをお出かけに誘うことにしました。
行先は近くのショッピングモール。
そんなに遠くないし疲れないかなと思い、そこに決めました。
今回はサプライズをするつもりはないので、前々から言っておいたんですけど映子ちゃんは楽しみだと笑ってくれました。
プレゼントは本人と一緒に選んじゃいたいと思います。
当日になり、土曜日だったので朝から待ち合わせをして目的地に向かいました。
映子ちゃんは相変わらず変装っぽい服装ですが、それは仕方がないことです。
外に出れば気づかれそうになる機会も増えますしね。
ちなみに私の服と言えば、流行を取り入れながらも自分のスタンスは崩さない。そんな感じの服を着ております。
「映子ちゃん、どこか行きたいところはありますか?」
「うーん…、ペットショップいきてーな…。」
どうやら動物が好きなご様子。本当に悪いのは口調だけで、性格も好きなものもただの乙女なんですよね。
「ペットショップですか。いいですね!さっそくまいりましょうか。」
「場所はわかるのか?地図とか…。」
地図なんか必要ありません。なんせ映子ちゃんとの休日おデートですよ?行き先の情報などすべて頭に入っています。
しかしそんなことを言えば、また映子ちゃんが思いつめてしまう可能性があるのでここは適当にはぐらかしておくことにします。
「前に家族と来たことがあるので覚えているんです。私がうるさく言って、歩き回りましたから構造は覚えてしましました。」
もちろん今まで一度も来たことなんてないんですけどね。服とかはネットで買ってしまいますし。
でも映子ちゃんが安心したような顔をしてくれたので、嘘上等って感じです。
ペットショップに着くと映子ちゃんは真っ先に犬の方に走っていきました。
映子ちゃんの目にハートが見えてきました。
どうやら大変好んでいらっしゃるようです。
「久瑠実!ミニチュアダックス可愛い!!!」
私に犬種を言われても…。
私には生憎犬の可愛さというものがいまいちよくわからないので何とも言えないですよ。可愛いとかあんまりわからないんですよ。
まぁ犬種の知識としてミニチュアダックスフンドくらいならば一般常識として頭に入れています。あの脚が短いやつでしょう。
私は犬種が違おうが、そんなに変わりはないと思うんですけどね。
申し訳ないですけど。
でも、犬を配置するだけで映子ちゃんがぽわぽわ笑顔になってくれるというのは大変好ましいですね。
もしワイヤーヘアード・ポインティング・グリフォンがいるぞ、なんて可愛い声で言われた時には頭を抱えますけどね。
あれ、なんで知っているんでしょう。こんな長い名前。
「そうですね~。ダックスフンド、可愛いですね~。」
本当はよくわかりませんけど、映子ちゃんの笑顔を崩すわけにはいかないので私はそう答えます。
本日、私のブラックなところ見せすぎでしょう…。
「なぁ久瑠実。プードルもいる!!あ、ロシアンブルーだ!可愛い~~!!!」
だんだん映子ちゃんの声が猫なで声になっていきます。初めて聞きますけど、まぁめちゃくちゃ可愛いですね。
(ちなみにロシアンブルーは猫だったと思います。)
結局ペットショップには1時間滞在しました。少々足が疲れた気がしますが、映子ちゃんのこれまた超キュートな一面が見れたのでよしとしましょう。
「映子ちゃん、お腹すきませんか?」
映子ちゃんがペットショップで犬猫ときゃっきゃうふふしている間に時間は昼飯時の少し前になっていました。
「少し。でも少し早くないか?」
「映子ちゃん!完全なる昼飯時にフードコートやレストランに行けば、混むんですよ!家族連れがのろのろとご飯を食べて待たされたり、ベビーが泣きわめいたりとけっこうカオスな状況に陥るんですよ!休日のフードコートは特に!!!」
私はうっかり力説してしまいました。
個人的に映子ちゃんとはフードコートでのお食事がしたかったので、それを快適に行うには早めにいく必要がありました。
「そうなのか?じゃあ、飯食いに行こう。」
「はい~、ご案内いたしますね!」
私、さっきベビーだの家族連れだのと言っていましたが、あれなんです。
あの、年下というか小学生以下というものがもう本当に苦手なんです。
自分はよく小学生と間違えられたりしますけど、それでも!
あの、特に社会的な学習能力の乏しさが目立つ、泣きわめいちゃう系ベビーが本当にだめで。
映子ちゃんには申し訳ないのですが、これだけは私の意思を尊重させていただきました。
「それにしても、久瑠実はいろいろ詳しいよな。あたしが知らないこと、いっぱい知ってる。」
フードコートについて、適当に昼食を頼んでそれを食べているとき、映子ちゃんがそう言いました。
たぶん今日、自分がショッピングモールに一切慣れていないことがいやだったのでしょう。
「そんなことないですよ?映子ちゃんだって私が知らないことをたくさん知っているはずです。」
私がフォローしようとしていると尽かさず映子ちゃんが私に聞いてきました。
「たとえば?」
難しい質問ですね。具体的に映子ちゃんが何を知っているかなんて、私にはわからないことですからね。
「そうですね…。たとえば。私はそちらの業界についての詳しい事情はほとんど存じ上げておりません。それを知っているのは、そこの関係者ゆえでしょう。」
「たしかにそうだな…。あたしは当たり前だと思っていても、ほかの人にとっては全然あたりまえじゃねぇもんな。」
映子ちゃんは妙に納得をしたような顔をしてうなずきました。たぶん、映子ちゃん、自分が世間知らずなんじゃないかと思ったんでしょう。
なんせ、小学校のころからモデルをやってらっしゃいますしね。
「でも久瑠実はすごいよ。物知りだろ、いろいろ。成績もいいじゃねぇか。」
映子ちゃん、私を誉めようとしているのでしょうか。とても光栄ですが、今日映子ちゃんの誕生日なんですよね…。
「そんなことないですよ。確かに学年主席ですけど、それは映子ちゃんパワーあってこそなんですよ!!映子ちゃんががんばってお仕事しているな~と思いながら私も負けられないなぁと思って必死で頑張るんです。」
「へぇ…もうあたしには学校の勉強たるものがほとんど理解できないからさ。小学校中学校で習うはずの基礎がぬけぬけなわけだし。すごいと思うよ。でも、高校はいって久瑠実がノーと書いてくれるようになってからはすこしわかるようになったんだよな…。」
なんせ私が、基礎から明確にサルでもわかるよう超丁寧に書いているノートですもん。映子ちゃんのためだけに書いているノートが理解されないはずがありません。ここに至っては自信あります。
「それはよかったです。お役にたてて光栄です。」
「すごいな~久瑠実。」
映子ちゃんはなぜかずっと感心していました。まぁうれしいので放っておくことにします。
いろいろ話しているうちに昼食も食べ終わり(混沌時間帯は免れましたし)またうろうろすることにしました。
忘れかけの方もおられるでしょうけど、本日、映子ちゃんハッピーバースデーです。
「映子ちゃん、そろそろプレゼントを買わしてください。そんなに高価なものは買えませんが、ある程度なら購入できる金銭は所持しております。」
「そうっだったな。あげっぱなしというのも、そっちが気分悪いだろうし。おし、選ばせてもらおう。でも、物自体は久瑠実が決めろよ?」
もちろんですとも。もう大体決まっているんです。
「はい。えっと、靴を買わしていただきたいです。ご拝見したところ、今はいていらっしゃる靴は少々足に合っておられないように見えますし。」
「なんでわかった!?」
「それはまぁ、企業秘密という事にさせて下さいよ。」
私はそう言いましたが映子ちゃんはなんだか腑に落ちない様子。しかし教えるわけにはいきません。だって、今日足元から映子ちゃんに異常がないか、これまでの観察データと照らし合わせて足元に異常を発見したなんて言ったら変質者そのものじゃないですか。
だからここは、ひ・み・つという事で勘弁してください。
靴屋にたどり着き、さっそく靴を見ます。
映子ちゃんはたぶん自分で自分を着飾ることに興味がないのでしょう。よくわからなそうに靴を眺めていました。
「映子ちゃん、靴屋はあまり来たことがありませんか?」
「ああ。撮影で使ったのもらえたりするから、あんまり自分で買い物することってないからな。」
そうでしょう。そう思っていましたよ。これで映子ちゃんにぴったりの靴をお勧めできます。
「こういうの私慣れてますし、なんせプレゼントですし。私にお任せください。デザイン、履き心地どちらも映子ちゃんにぴったりなものを探し出して見せましょう!映子ちゃんは試着してくれればいいので。」
「ああ、分かった。いろいろ教えてくれるとうれしい…。」
「わかってますよ、映子ちゃん。任せなさい!」
私は無駄にでかい気持ちで靴選びに向かいました。
映子ちゃんの足の形のデータはしっかり頭に入っていたので、靴を見ればすぐに映子ちゃんの足に合うかどうかはわかります。
しかしデザイン面が難しい。スレンダー美人の映子ちゃんの足元を飾るには地味なものが多く、困り果てていました。
すると映子ちゃんが言いました。
「いつも撮影でヒールとかはくから、普段のやつはゆったりしたのがいいな…。」
私はスニーカーを選ぶことにしました。
「映子ちゃんはスニーカー、持ってらっしゃいますか?」
「一応一足は。有名会社のやつだったんだけど、はきにくくてだめだった。」
そうでしょうね。コン○―スは好き嫌いがわかれますもの。それに映子ちゃんの足の形に合っていませんし。
あ…、それなら!
「これならどうでしょう!」
私は形は映子ちゃんの足にぴったりで、紺色地に白ラインが入ったスニーカーを差し出した。
「ぴったりだ…。」
「色は…?」
「好き。」
決まりですね。いいのが見つかってよかった。
「それで構いませんか?」
「ああ、これがいい。」
映子ちゃんは足に合う靴が見つかって嬉しそうです。
私は映子ちゃんからその靴を回収しレジに向かいます。こっそり靴ひものかえを手に取りそれもお会計に持っていきます。
靴ひものかえというのは、気分転換にいいですので。
「ありがとうございました~。」
店員から買った商品を受け取り、映子ちゃんに渡します。包装は必要ないと見ました。
「今からはいてもいいかな?」
「もう購入済みだし大丈夫だと思いますよ!」
これを見込んでのことです。
映子ちゃんはさっさと靴をはきかえました。途中で靴ひものかえにきづいたようで、ちょっと照れたようにありがと、と言っていたので喜んでくれたのでしょう。
その後も少々ショッピングモールをぶらぶらして、私たちは帰宅することにしました。
「今日はありがとう、久瑠実。」
「いえいえ、今日は映子ちゃんの誕生日ですもの。映子ちゃんが楽しんでくれたのなら私はハッピーですよ。」
「そうか…でもありがとな。」
映子ちゃんはやっぱり照れ笑い。なんて可愛いのでしょうか。
そしてお互い家に帰りました。
私は帰路についている途中、考えました。
映子ちゃんと関われば関わるほど、だんだん近くなるようでだんだん映子ちゃんを好きになっていきます。
ちなみに現在私の感情は恋情と見ました。
映子ちゃんが私に気持ちに気づかなくても私はいいです。
映子ちゃんが私のとなりでリラックスしてくれるのならそれで。
あらしんみりしてしまいましたね。まぁどうでもいいでしょう、私の気持ちなど。
全ては映子ちゃんさえよければ。
今回はここまでで終わりにしておきましょう。次回は、映子ちゃんが風邪をひいてしまった時のお話でもすることにします。
少しずつ近づいていきます。
まだまだ続きます。