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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
琴音久瑠実からのお話
4/40

映子ちゃんの御家に行った日

映子ちゃんががんばるお話。

今回は映子ちゃんのお家に遊びに行った時の話もしましょうか。

 ある日、映子ちゃんが突然、私に言いました。

「久瑠実、今日あたしの家来ないか?」

 とっても嬉しかったですね。

その発言は頭の中で30回響いた後、私の中に意味を伝えました。

その行為に所要した時間は約1秒。結構速いです。

「はい!!もちろんです!!行きたいです!!」

 私がそういうと、映子ちゃんはほっとした顔で笑いました。

「そういってくれて良かった。放課後、学校から直でいいか?」

「はい、構いません。」

 私の顔はにやけが止まりません。

それを見た映子ちゃんは困ったように、でも嬉しそうに笑ってくれました。

 その時、どういう心境だったのかはわかりませんが。


 その日の放課後、私と映子ちゃんは学校から直接、映子ちゃん宅に行きました。

私は珍しく放課後も映子ちゃんといれて、幸せいっぱいです。

映子ちゃんは考え込んだような顔をしていますが。

なんでかわからないし、映子ちゃんはこういう時に詳しく聞かれたくないタイプなので、顔色については言及いたしません。

 映子ちゃん宅は学校から歩いて15分程度。私の帰り道の途中にあります。

話しながら歩いていると、映子ちゃん宅につきました。

なぜか映子ちゃんはドアを開けるとき緊張したような顔をしていました。

 やっぱり何かあるのかもしれません。私はとても不安になりました。

 映子ちゃんはごくりとつばを飲み込んで、お家のドアを開けました。

中に足を踏み入れるとそこには、たっぷりの装飾がされていました。

 それをみた映子ちゃんはとても満足そうな顔。

「へ…?どういうことですか?」

 私がいうと、映子ちゃんはにっこり笑って言いました。

「久瑠実、今日誕生日だろ?…いつも、世話になってるからサプライズ…したいなって。お母さんに協力してもらって、今に至る。」

 なんということでしょう!劇的ビフォーアフターです。人見知りでいつも私から話しかけまくらないとおしゃべりしない映子ちゃんが、私にサプライズ…!

何という事でしょう…!!!

「映子ちゃん…。」

「迷惑…だったか?」

 すごい心配そうな顔で聞いてくる映子ちゃん。

私が映子ちゃんにやってもらってうれしくないことなんてないのに。

同じ空気吸えるだけで幸せ感じちゃうぐらいなのに…!

映子ちゃんはまだそれを理解していないようです。

「いえ…。とっても嬉しいです!!嬉しすぎてなんもいえねぇって感じです!私…自分の誕生日なんて忘れてたから、すごいびっくりして!!」

 私はらしくもなくぼろぼろ泣いてしまいました。

もう嬉しくてうれしくて、仕方がなかったんです。

映子ちゃんとこんなに仲良くなれたのがうれしかったんです。

「ふぇぇええ!!映子ちゃぁあん…!」

 大泣きですよ。私が映子ちゃんに思いっきり抱き着くと、映子ちゃんはにっこり笑って頭を撫でてくれました。

「喜んでもらえたか?」

 そんなのきくまでもなくわかっているはずなのに、映子ちゃんはわざわざ聞いてきます。かわいい…!!

「もちろんですよぉぉ…!大好き映子ちゃん!」

 涙がなかなか止まりやがりませんでした。


 私が泣いてしまったせいでなかなかたどり着かなかったリビングには、大きなケーキと、豪華な料理が用意されていました。

 どうやら、私の両親にもちゃんと言って準備をしていたみたいで。余計に涙があふれてしまいました。

「こんなに良くしてもらって本当にいいんですか?私には、豪華すぎますよ。」

「わざわざ仕事前々から、抜いてもらってたんだ。久瑠実に断る権利はないな。」

 映子ちゃんはそんなことを言いながらにっこり笑顔をこっちに向けてきます。

 くっそ!笑顔がまぶしいです!

「それじゃあお言葉に甘えさせてください!」

「ああ、存分に甘えていいんだ。」

 なんてやさしい映子ちゃん。聞けば企画はすべて映子ちゃんだそうで。

私の片思いでもなくて、映子ちゃんも私のことを少なからず思っていてくれたことに涙が出ました。

「食べよう、久瑠実。うちの親とお前の両親もみんなそろってるから。」

 ちゃんと人もそろえてくれていました。もうびっくりするほかありません。

「はい、ありがとうございます!」

 晩餐を終え、映子ちゃんとおしゃべりをしました。

「映子ちゃん、いつ今日のことを企画したんですか?」

「1か月前ぐらい。久瑠実の誕生日いつかなって思って、久瑠実のお母さんに電話したらちょうど一か月後だっていうから、それ聞いた瞬間やろうって決めた。」

 全然知りませんでした。私のお母さんももれなく参戦していたわけですか。はじめから。

「そうだったんですか…。全然気づきませんでした。」

「気づいたら意味ないだろ?まぁ、あたしが学校にしょっちゅう行ってたら顔色とかでばれたんだろうけどな。久瑠実、あたしのことをあたしより知っているから。」

 ちゃんと、私のことわかってるじゃないですか。映子ちゃん、私のこと見ていてくれたんですね…。

「すげぇ驚いた顔してんな。こちらとしてはそのほうがうれしいけどさ。」

「だって映子ちゃん、私のことあんまり存じ上げていないかと思っていましたから。」

 私から映子ちゃんに話しかけてばかりだったから、本当に私個人のことは全然気にしていないと思っていたのです。

「学校では世話になってるし、何より毎日学校のこと教えてくれるし。すごい嬉しかったんだ。あたしのことを、友達としてみてくれて。ファンだって言われた時には、こいつもあたしのこと言いふらしたり、立場を利用したりしていろいろするんだと思っていたけど、お前全然そんなことしないからさ。」

 映子ちゃん、ちゃんと喜んでくれていたみたいでした。

毎日、これ以上ないほどに集中して読みやすい字を心掛けて書いている連絡カード。私がやりたくてやっているだけでしたが、ちゃんと意味をなしていたようです。

 でもわたしが立場を利用すると思われていたことは心外ですね。

「そんなことするわけないじゃないですか。もちろん友達になれたらうれしいと思っていましたが、映子ちゃん本人を見てからそんなのふっとびましたよ。この人は、同じ場所にいる以上私との上下関係はないんだなって思いました。」

 高校にいたら、みんな高校生ですよ。個人でどんなに活躍していても。

そう付け足すと、映子ちゃんはにっこり笑いました。

「久瑠実がそう思ってくれているおかげで気がずいぶん楽なんだよ。もし下からきゃっきゃとこられちゃたまったもんじゃない。まぁ、学校では利用しているみたいになっちゃてるけど。」

 私が映子ちゃんのために人の対応をしている事でしょうか。

確かにはたから見たらただのパシリですけど…。

「たとえば私が足を痛めて、一人じゃ、満足に行動できなくなったら、映子ちゃんはきっと助けてくれると思います。それと同じで、苦手なことを助けてもらうのは悪いことじゃないし、責任を感じているのならほかの形で返してくれたらかまいません。」

 映子ちゃんはほっとした顔をしました。たぶん結構な責任を感じていたのでしょう。私に負担をかけてしまっていると。

「じゃあ、何かしらの形でお礼させてくれ。」

「今日ので充分うれしかったんですよ?」

「こんなのほんのちょっとだ。久瑠実は毎日あたしに何かをしてくれてるんだからさ。…あ、プレゼントあるんだ。」

 まだ、サプライズがあったみたいです。なにをくれるのかわくわくします。なんせ映子ちゃんが選んでくれたものでしょうから。

「中身は家に帰ってから見てくれ。はずかしいから。」

 そういって映子ちゃんは包装された小さめの箱を私に手渡しました。嬉しい…!

「ありがとうございます、映子ちゃん!」

「がんばって選んでみた。だから、喜んでくれるとうれしい…。」

 恥ずかしそうにそう告げる映子ちゃん。

「映子ちゃんから何かをしてもらえたってだけで、とっても嬉しいですよ。ありがとうございます、映子ちゃん!!」

 

 そのあと少し話して、両親と家に帰りました。両親同士も仲良くなったようでいい感じです…!

 自分の部屋に戻り、映子ちゃんのプレゼントを開けてみたら、かわいらしいデザインの腕時計でした。

 手紙も添えられています。

”久瑠実へ

いつもありがとう。いろいろと世話をかけて申し訳ない。本当に感謝している。もので返そうってわけじゃないけど、久瑠実の誕生日プレゼントをがんばって選んでみた。そういえば時間をいつも携帯で見ているなと思って腕時計にした。デザインは久瑠実っぽかったから、これにした。喜んでくれるとうれしい。

 映子 ”

 映子ちゃんらしい文章でした。こういうイベントごとをかかさないのが、繊細というかなんというか。やさしい人だなって思うんですよね。

 ますます好きになってしまいました。今までよりももっと。


 もちろん、手紙を見た後すぐに映子ちゃんに愛を綴ったメール(プレゼントありがとう大事に使うねメール)を送りました。

 返事は一言、よかっただけだったけど、きっと画面の前で赤面している事でしょう。なんてかわいい人。

 

 映子ちゃんのおうちにお邪魔した時のお話でした。これは墓まで持っていく大事な思い出です。

 さて、次回は何をお話ししましょうか。まだ決めていません。





少しずつ距離が縮まっていきます。

まだまだ続きます。

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