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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
森崎映子からの話
33/40

久瑠実に学校に行きたい理由を話した日

 学校に行きたい理由を恥ずかしがりながらも、話した時の話だ。


 数日前のことだ。あたしが学校に行くと、久瑠実が隠し部屋に行こうと言ってきた。あたしは何も言わずついていく。

 隠し部屋というのは体育祭の時にお世話になったあの部屋だ。あたしたち以外その存在を知らない謎の部屋。

 その部屋は今は副教科の時にしか使われていない旧校舎にあるから、平日に行くとほとんど人がいないし、隠し部屋に入るには好都合らしい。

 昼休み、さっさと昼食を食べ終え、あの部屋に向かう。

ちなみに久瑠実に朝隠し部屋と言われ、昼にその部屋に向かう時点では、あたしは隠し部屋のことを忘れている。


「久瑠実~どこいくんだ~。」

「隠し部屋です。昨年の体育祭の時行ったところです。覚えてらっしゃいますか?」

 隠し部屋?なんだっけ…。ああ!体育祭の時涼んだあの部屋か!

「あそこか!あの夏でも涼しいすごい部屋。」

 すごく居心地がいいんだよな、あの部屋は。でも急になんでだ?

「そうです。なんかふと思い出して行きたくなってしまいました。」

 思い付きか。久瑠実の行動は大体そんな感じだもんな。あたしも大抵思い付きだけど。

 例の壁の前につき、久瑠実は深呼吸をした。ん?

「തുറക്കുക, എള്ള്!!!」

 久瑠実が意味の分からない言葉を唱えた瞬間、壁が動きドアが現れた。

「久瑠実…なんつってんだ?」

「マラヤーラム語で開け、胡麻だそうです。もっとも、設定した本人が発音できなくて入れなくなったらしいですけどね。たまにまぐれで入れるみたいな感じです。」

 どこの言葉だよ。聞いたことねぇよ。というか。

「馬鹿だろそいつ。」


 中に入って床に腰掛ける。基本窓は締切りだし、もちろん人は来ないから埃がほとんどたまっていない。  

 久瑠実は部屋に入るなり、そっと窓を開けて風を通した。

 窓を開けてすぐ、心地のいい風が部屋をとおりぬける。

こんなに快適な部屋が忘れ去られているなんて、さびしい世の中だな…。

「やっぱり落ち着きます…この部屋。」

「なんかいい雰囲気だよな~~。」

 風で髪の毛がなびく。普段はわずらわしく感じる髪の毛も、こうやって風に揺れているときれいに見える。

 この部屋はやっぱり好きだ。

「そういえば映子ちゃん。そろそろ学校に来たがる理由教えてくれてもいいんじゃないですか?」

 なんでこんな時に思い出すかな…。でもそろそろ言ってもいい時期かな。

いい加減腹くくらないと。愛想つかされてしまいそうだ。 

「…仕方ねえな。そろそろ、いいか。恥ずかしいけど。」

 本当に恥ずかしい。でも。もういいや!このさい当たって砕けろだ!

「小学校中学校、周りの環境のせいであんまり学校に行けなかったから来たいっていうのもあるけど…。久瑠実がさ、毎日学校であったこと教えてくれるだろ?あれさ、毎日かなり楽しみでさ。…久瑠実が学校で感じてることをあたしも身に染みて感じたいな、って思ったんだ。」

 久瑠実が感じている学校生活を感じたかった。好きな人と同じ場を共有したかった。気持ち悪く言えば同じ空気が吸いたいみたいな。

「そうだったんですか…。私の行動は、映子ちゃんの役に立っているのですか…?」

 当たり前だろ。あんな、綺麗な字で書かれた紙を見れば誰だって感動するよ。状況説明もわかりやすいし。

「かなり、な。今までそうやってあたしに関わってくれるやつがいなかったから、すげぇ嬉しかったんだよ。…あとさ、学校に来たらほとんど一日久瑠実といれるから。」

 かーっと顔が赤くなる。

 久瑠実がきょとんとした顔で見つめてくる。…見るんじゃない!!!

「もうやめよう!!!この話は!!!なんか恥かしい!すげー恥かしい!」

「…わかりました。」

 こんな時に潔くなるなよ!なんか余計に恥ずかしいだろ!?


 午後は何の変哲もないかのように過ごしたつもりだけど、頭の中で恥ずかしさは消えなかった。

 気持ち悪いよな…同性から告白まがいのことをされるなんて!!!

 普通に好きだと言いたいけど、状況が状況だし、そう簡単に好意を伝えることはできない。

 友達でなくなってしまうのが怖い。あたしはどうしたらいいんだろう?


もう少し続きます。

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