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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
森崎映子からの話
32/40

久瑠実に芸名の由来を話した日

 今回はあたしの芸名の話。この前久瑠実に由来を話したから、ついでにここでも言っておこうと思う。別に大したもんじゃないけどな。


 二年に上がってから、あたしの仕事がない土日は大体久瑠実と遊んでいるような気がする。土曜日は、授業は午前中だけだし、日曜日は基本学校はないし。

 遊ぶと言ってもどこかに出かけるわけではなく、たいていどちらかの家で話すだけだがな。

 久瑠実があたしの撮影を見に来てから、なんとなく精神的距離が近づいた気がする。


 この前もそんな感じで、日曜日に久瑠実があたしの家に来た。そのときたまたま芸名の話になったのだ。

 芸名…使っている人は多いが、由来は様々だ。自分の好きな響きの名前にする人もいれば、芸人とかだとネタの印象とかで決める人もいるんだと思う。

 あたしもまぁ理由があってエコになったわけだ。

「映子ちゃん、この前の撮影見学楽しかったです。本当にありがとうございました。」

 久瑠実はあたしの部屋に入るなりそういった。そういえば撮影見に来てから、一度もあっていなかったからな。

 いまだに連絡カードの習慣は続いていて、そのせいで久瑠実はあたしんびとってかなり身近だから。逢っていない感じがしないのだ。

「いいんだ。あたしも、なんか新鮮で楽しかった。」

 いろいろ吹っ切れたし。良かったよ本当。

「それは、よかったです。ところで映子ちゃん、映子ちゃんはなぜ芸名を使ってらっしゃるのですか?」

 芸名ね…。そういや言っていなかったな。気になるものか?

「芸名…ああ、なんで使うかか。いや、活動し始めたのが小学生の時だったからあんまり本名出すのは気が引けるのって思ったんだよ。子供心に。」

 小学生から本名丸出しで活動するのは何となく嫌だった。今後元の世界に戻れなくなりそうだったから。生活もしにくいし。住所とか特定されそうだし…。

「映子ちゃんは随分子供のころから大人びと考え方をしてらっしゃいますね。」

「そうなのかもしれねぇな。状況が状況だから。で、なんでエコっていう名前かっていう話もついでにしようかな。」

 ついでだ。芸名の話もあんまりしない気がする。聞かれることはあるけどあっさり答えるしなぁ。

 エコというのはえいこの最初と最後の文字なわけですが、エコはエコロジーのエコかも

「芸名はあたしが小3の時に考えたんだけど、エコは名前ももじってるけど、エコロジーのエコだ。」

 小3の時、エコキャップ運動とかが流行って、いやでもテレビを見たらエコという単語が出てくる感じだった。

 そのときだな。エコロジーという言葉を知ったのは。

「しかしなぜエコなのですか?」

「自然に親しむみたいなかんじで、親しみやすいモデルになれたらなって思ったんだ。お高いイメージがあるわけでもなく、なんか日常に一部みたいなそんな感じでさ。」

 気取りたくなかったし、できるだけ普通でいたかった。子供のころは余計に。だから、そのときには珍しく自分で芸名を考え親に言ったんだったな。理由は言っていないけど。

「いい意味ですね…。」

「ありがと。でも、まあ今そんなふうになれてるとは思えないんだけどな。ブランドの服で固められてるし。」

 最近は本当にブランドのカタログみたいなのばっかりだ。普通にファッション雑誌とかの仕事もあるけど、比率としてはかなり少ない。

 だって、普通の服とかに合わないし。

 派手なのとか、ドレスとかが多いな。スーツもやった。

 とにかく若者向け等よりはVIP向けな感じの方が多い。(おかげで同年代の少年少女より給料がずば抜けて高いんだ。)

「そうですね…確かに映子ちゃんはお高いイメージが強いかもしれません。でも、確実に私たちの生活にはなじんでますよ。いろんな雑誌に出ているわけですから目にしたことがある方も多いでしょう。」

 ディスられるかと思った。なじんでいると思われているならよかった。ま、最近はかなり幅も広がったしな。

「そうか…。でもまあ、もっと頑張ってみる。いろいろ。」

 もっと親しみやすい感じになりたい。紙の向こう側の人とかに思われたくない。

「はい、そうしてください。無理だけはだめですけどね。…私にとって映子ちゃん…エコさんはいつでも親しめる存在ですから。」

「ありがと。」

 照れる。


 今はまだ、自分の望むような仕事ができる実力がないから、無理だけど。いつかはもっと、親しみやすいモデルになりたいと思う。

 最近は演技レッスンもやっているし、ドラマとか映画に出てみたいとも思っている。テレビには数回しか出たことないけど。

 もっと頑張って、久瑠実が胸を張れるようなひとになりたいな。


今回はここまででおしまい。次もあたしの話。


もう少し続きます。


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