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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
森崎映子からの話
28/40

久瑠実と二年生になった日

 今回は高校二年生に進級した日の話でもしようか。進級した日というか、クラス発表があった日だけど。


 あたしたちの学校はクラス替えが二年に上がるときにだけある。一年生の時は学力とか文系理系関係なしのクラス編成らしいが、二年からは学力と文系理系がクラス編成に関わってくる。

 あたしも久瑠実も同じ理系。もちろん学力は違う。

 同じクラスになる可能性はあるが、限りなく低いといった感じだ。

 あたしは仕事をしているせいで進級基準の出席日数を関係なくしてもらっているが、そのせいで先生たちがあたしと久瑠実を同じにしようとは思わなくなりそうだ。

 久瑠実と違うクラスだったら、学校あんまり行く気にならないだろうな。

 

 始業式の日はたまたまあたしの仕事が休みだったから(のちのち五十嵐さんが手を回したことが発覚)久瑠実と一緒に学校へ登校することになった。

 いつもは一緒に登校しないけど、クラス替えの日にはそうはいかない。緊張するし、一緒にいたいと思う。

 朝、久瑠実があたしの家まで迎えに来てくれた。あたしは緊張しすぎて外で待っていた。

「おはよう久瑠実…。おはよう。…。」

 緊張でかなり様子がおかしくなってしまっているあたし。自覚はしている、変だと。でもどうしようもない。

「おはようございます映子ちゃん。そんなに緊張しなくても大丈夫じゃないですか?」

 そういう久瑠実も少し緊張している様子だ。もちろんあたしほどではないけど。

「でも…でも…。あたし…。」

 怖いなぁ。久瑠実と同じクラスじゃなかったらマジで生きていけないから!

 落ち着かないでそわそわしていたら、久瑠実があたしの手を握ってきた。何故!!

あたしの顔は赤く染まっていく。

「…落ち着きませんか?人肌のぬくもりと言いましょうか…。」

 落ち着かねぇわ!変な汗かくわ!!

「恥ずかしい!!!」

 どうやら久瑠実はあたしに落ち着いてほしくないようだ。


 そんなこんなで無事学校に到着。クラス名簿は昇降口前に貼りだされているはずだ。

心臓がバクバクいってる。こえーよぉ…。

「久瑠実ぃ…久瑠実ぃ…。」

 久瑠実に必死に訴えかける。効果はない。

 やっぱり久瑠実は淡々と、クラス名簿を見つめている。まぁあたしが今見たって、どうせ気が動転して自分の名前とか見逃してしまうだろうから、こういうのは久瑠実にお任せだ。

「あ、ありました。私の名前。」

 さっそく久瑠実は自分の名前を見つけたようだ。さて、その下にあたしの名前があったら高校生活毎日ハッピーだから!!!

「映子ちゃん。私たち同じクラスみたいですよ。」

 久瑠実はとんでもなく棒読みで告げた。多分久瑠実はものすんごい緊張していたんだろうな。そのせいでギャップが…。

 …久瑠実と同じクラス。久瑠実と同じクラス。久瑠実と同じクラス。

…おお!!やったぁ!!!

「まじで?…あ、本当だ。……くるみぃ~…。」

 あたしはとっさに久瑠実が見ていた方を見る。そこには同じクラスの欄に収まるあたしと久瑠実の名前が。

「よろしくお願いしますね。映子ちゃん!」

 久瑠実があたしに抱き着いた瞬間、あたしの顔から蒸気が吹き出た。


 知らない人がたくさんいるであろう新しい教室に向かうと、やっぱり知らない人がたくさんいた。もうむしろ知っている人がほぼいない。

 生徒数多いもんな。そりゃ知らない人も多いだろう。

 …恥ずかしい。知らない人、恥ずかしい!

 なんか今日はあたしの思考回路の回転が遅い気がする。

「映子ちゃん。知らない方がたくさんおられますね。大丈夫ですか?」

 あたしは自分の席に着いた瞬間机に突っ伏した。大丈夫じゃないということだ。

「…大丈夫じゃない。やっぱり一日目はしんどい~…。」

 人見知り、早く治らないかな~。


 始業式を終え、クラス写真を取ったら今日は解散だ。

さっさと写真を撮り、久瑠実はあたしの手を引いて帰路に着こうとしている。

 かなり急いでいるようだ。

「久瑠実。なんでそんなに急いでるんだ?」

「対策を練らねばいけません。映子ちゃん、明日仕事有りますか?」

 なんの対策だろう?

「あるけど。」

「ならいいんですけど。自己紹介は回避できそうですね!映子ちゃんは、バレるの嫌ですか?」

 ばれるの…ああ、あたしがエコってことがか。どうだろう。去年は謎の暗黙の了解で、一度もクラスメイトにはいわれなかったけれど今年はそうはいかないだろうということか。

 あたしはばれようがばれまいが、ぶっちゃけどうでもいいのだ。騒ぎたてさえしなければ。そして久瑠実がいるならば。

こうして久瑠実と同じクラスになれた今、ほかに望むことはあまりない。だから。

「別にいいよ。久瑠実があたしをちゃんと見てくれるんだろ?」

「もちろんです。」

 久瑠実があたしのこと、ちゃんと見てくれるならほかのことなんてどうでもいいよ。

「自由にやりましょうか。何も気にせずに。」

「あたしはそれでいい。」

 そのほうが楽だ。まぁ今までどおり、変装まがいの髪型はし続けるけどな。

 

 本当に同じクラスになれてよかった。先生の配慮があったのか、運なのか。必然なのか。もうそんなのはどうでもいい。ただ、今の状況があるだけで満足だ。

 これで、学校では久瑠実のそばにいられるな。

 

 進級の話はこれぐらいにしておこう。

 そういやあたしがほぼ出席しなくても進級できるのは、校長があたしのファンだからだ。凡人はもちろん留年である。どんまい。

 次はたぶん暴露話。


まだまだ続きます。

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