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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
森崎映子からの話
27/40

久瑠実と球技大会を見学した日

 前回は文化祭の話をしたな。今回も行事つながりで、球技大会の話だ。

 球技大会は3月。もうすぐ進級するこの時期、クラスメイトとの絆を確かめるって感じの行事なんだと、久瑠実が言っていた。

 でもあたしはクラスメイトとの絆なんてあんまりない。

 

 球技大会。準備なんてあまり必要がないこの行事は、前日に開催が発表される。

前日にルール説明されて、次の日突然開催というめちゃくちゃな行事。

 あたしはたまたま、その日に仕事がなくて参加できることになった。

 競技はドッジボールらしい。しかしそんなことはどうでもいい。

 球技大会に参加する気なんて初めっからさらさらなかった。マネージャーからダメだと言われているのもあるけど、理由はほかにある。

 久瑠実と話したい。運動なんかせずに久瑠実としゃべっていたい。

 だからあたしは久瑠実に球技は得意じゃないと嘘をついて、球技大会を見学することにした。もちろんそれを聞いた久瑠実は、一緒に見学するとのこと。

 …ちなみに、本当は球技得意です。

 球技大会当日。あたしは体操服すら持たずに学校に来た。やる気ゼロだ。

「久瑠実~。おはよ~。」

 声が伸びているのは眠いせいだ。昨日はなぜか仕事がやたら早く終わり、早く寝過ぎた。そのせいで寝過ぎなのだ。

「おはようございます。寝不足ではないですか?」

 反対だ。心配そうに聞く久瑠実に、笑って返した。

「寝過ぎだ!久瑠実がうるさく言うから、夜更かしなんてできやしないよ。」

 あたしがそういうと、久瑠実はすみませんと笑いながら言った。

 まあ健康になれたから、あたしはいいんだけどな。

「映子ちゃん。ところでですが、球技大会はなぜ参加したくないのでしょうか?」

 申し訳ないが嘘をつかせていただく。

「あんま球技好きないし。…怪我しそうだし?」

 はてなつけちゃった。


 教室で朝礼を終え、女子は体育館へ、男子はグラウンドへ向かう。男女別だからな。

 あたしと久瑠実は、久瑠実の人脈により無事見学をさせてもらえることになった。

 だから、体操服に着替えることもなく、制服のまま体育館に向かう。

「こうやって私たちだけ制服でいると、少し罪悪感がわきますね。みんな女の戦場に行っているというのに。

 体育祭もそうだが球技大会も、女子の部は基本戦場と化す。まさに地獄絵図。

みているだけで全身が痛くなりそうな光景だ。

「いいじゃないか。安全第一だ。怪我は本当に困る。」

 地獄絵図だけど参加したくないというわけではない。でもやっぱり久瑠実が優先である。

「安全は大事ですね。しかし映子ちゃん、いつも行事は参加していたのに今回はそんなにいやなのですか?」

「いやだ。球技はやりたくない…。」

 ウソついてごめんなさい。

 

 久瑠実と話していると招集がかかった。行事前に挨拶はつきものだ。開会のあいさつ的なのをやるらしい。

 あたしは別に何もしないから、テンションはさほど高くない。ちなみに久瑠実はどうしたらいいのかわからないって顔をしている。

 久瑠実のこと前よりはわかるようになった気がする。


 挨拶も無事終わり、やっと球技大会本体に入る。

 あたしと久瑠実は見学とはいっても、もともと見学する気もないので舞台裏で話をすることにした。あたしとしてはうれしい展開だ。

 初めて来た体育館の舞台裏は少し埃っぽい。あまり掃除をしないせいだろうか。いや、知らないけど。

「汚いですね…。ここで構いませんか?」

 久瑠実がそういう。全然そんなことを気にしなくてもいいのに、やっぱりモデルをやっているという立場があるせいか久瑠実は結構あたしのことを気にする。

 そのへんはやっぱり仕方がないと思うが、徹底的に普通の女子高生をやってみたいあたしはちょっぴり残念に思う。

 でもこれだけ充実して、学校生活を送れているのは確実に久瑠実のおかげだから贅沢は言いません!

「いいよ。なんかTHE体育館!って感じするし面白い。」

学校のことを知れるのは面白い。入学してから1年近くたっているが、今でも学校に来るといちいちわくわくする。

 学校というものをあまり知らないのに、最近は違うが前までは雑誌のターゲットが学生だったために、学校という存在を感じることは多かった。そのせいか、かなり学校というものにあこがれがあると思う。

「それならよかったです。とりあえず座りましょうか。」

 久瑠実は比較的きれいなところの埃を払い、そこに腰を下ろした。あたしも久瑠実の真似をして、床に腰を下ろす。

 久瑠実の真似をしていたせいか、結構近くに座ってしまった。肩がもう少しで付きそうなぐらい。少し気恥ずかしかったが気にしない。

「なぁ久瑠実。学校だしコイバナしよう。」

 あたしは久瑠実に恋の話題をふっかけることにした。少し久瑠実の好きな人というのは気になっているけれど、それよりも。単純に恋バナというものがどういうものか、試してみたかったのだ。

 久瑠実がどんな反応をするかと思って、久瑠実を見ていると初めは少し驚いていたがすぐにいつもの表情に戻っていった。

「…面白いことはありませんが構いませんよ。」

 うまい具合に久瑠実が話に乗ってくれた。しめた!

「好きな人は、いるか?」

 あたしはさっそく聞いてみる。久瑠実の好きな人…気になる。

…自分の好きな人が誰を想っているか、だれだって気になるだろう?そうだよな?うん。

「いますよ。ひとりだけ。一途なのでかれこれ4年、片思い中です。」

 四年間…というと、中学一年生の時から同じ人を想っていることになる。中学生の時の同級生とかかな?

 …あたしなわけはない。久瑠実があたしを恋愛対象としてみるわけがない…。

「そうなんだ…。久瑠実も恋してるんだな。」

 久瑠実のことが好きだと言えないことがとてももどかしい。どんなひとなんだろう。やっぱり格好いい人。素敵な人…?

「ええ。私も人間ですもの。映子ちゃんは?」

「あたしも一人だけ。もうじき一年片思いだ。」

 久瑠実のことだ、目の前にいるこの人のことが好き。

「そうなんですか。映子ちゃんも、片思いですか。同じですね。」

 久瑠実がにこっと笑ったので、あたしも笑い返した。

久瑠実はどんな人に恋してるんだろう。それが気になって仕方がない。

「そうだな。同じ。…コイバナって精神的にやさしくない気がする…。」

「本当ですね。私はあまりしたことがなかったのですが、あんまり心地の良いものに感じられないのはなぜでしょうか…。」

「話かえようか。」

「そうですね!じゃあ…。」

 何の話をしてくれるのだろう。あたしは久瑠実の話はなんでも大好きだ。

…そういえば、この前五十嵐さんが久瑠実を仕事場によんでみたらと言っていたな。

久瑠実にあたしがエコとして活動するところを生で見られたらどうなるかはわからないけど、とりあえず言ってみよう。

「久瑠実。一回仕事場みに来ないか?」

「撮影ですか…?うーん…。」

「いやか?」

 久瑠実が複雑そうな表情をしたので、あたしはどうしたらいいかわからない。

あたしが何かを言えばだいたい受け入れてくれるのに、なんで?

「嫌ではないんです。でも、映子ちゃんとエコさんが混合してしまうのが怖いのです。行きたいです。行きたいですけど、まだ、早い気がします。もう少し、映子ちゃんを知ってからにさせてください。」

 久瑠実は真剣な声でそう言った。どうやら入学式に行ったことに責任を感じているらしい。あたしを変えたあの一言。

 本人も結構重く感じているようだ。

 確かに今、久瑠実があたしの仕事場に来て、あたしのことをエコと呼んだら。あたしは…どうなるかわからない。たぶんすごいショックに思うだろう。

 あたしも軽い気持ちでない。

 久瑠実もたぶん、軽い気持ちじゃない。…ここは久瑠実の判断に任せよう。久瑠実のタイミングに合わせよう。

 

「そうか。じゃあ、また今度誘ってもいいか?」

「もちろんです。申し訳ありません。…頑張ります。だから少しだけ待ってください。」

 困らせてごめんな。

久瑠実を困らせたくはない。

「突然ごめんな。はっきり言ってくれてありがと。」

 少し間が開いた後、久瑠実は気を取り直したかのようにパっと表情を変えた。

久瑠実はこういう時、切り替えが早い感じの人間だ。もっとも、それは人のためだけど。

「なんだか少し暗くなってしまいましたね!あの、この前の調理実習の話していいですか?」

 話を変えたのは、あたしがああいう雰囲気が苦手なのを知っているからだろ。

「ああ、聞かせてくれ。」

 もっと自分のために生きてくれよ。


 そのあとも久瑠実と話していたが、久瑠実はどこか上の空だった。もちろん久瑠実は会話をとだえさせたりなんかはしないし、話を聞いていないわけでもない。

 ただなんとなく、違うことを考えているように感じられたのだ。

 多分あたしが言ったことを気にしているんだろう。久瑠実にとってかなり大きな問題になってしまっているのなら、いくらでも待つから。ゆっくり考えてほしい。


 球技大会は無事けが人ゼロで終了した。

 あたしと久瑠実はひっそり舞台裏から出て、閉会式の人並みにまぎれた。

 帰りは久瑠実と一緒に帰った。でも久瑠実はやっぱり考え事をしていた。

 難題を押し付けてしまったようだ。あたしは、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


 今回はこの辺でおしまいだ。次は何の話だったかな。


番外編アイデアまだまだ募集中です。

デート場所やありそうなエピソードなど、なんでもかまいません。

まだまだ続きます。

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