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7.管理者



「それで、他の生徒会メンバーは?」

「まだ来てないみたいですよ?司が来たのがそれなりに遅い時間でしたし、今日はもう来ないかもしれませんねぇ。」

「そうか。それなら仕方ない。先にここにいるやつらだけにこいつの待遇を教えとく。」

会長はトンッと私の背を押した。え?私?待遇とか聞いてませんよ?動揺する私を他所に話は進む。

「温室の管理者である博先生が、温室の管理をこいつに任せるとおっしゃった。」

そのことに最初に反応したのは雪宮先輩だった。

「それは急な話ですね。どうしてまた?」

雪宮先輩の反応は正しいと思う。だって、私も何故か知らないし。

「俺は詳しい理由は知らないが、どうやらこいつは博先生の口車に乗らなかったらしい。」

「へぇ。流石、千智。腹黒先生の口車に乗らないとか初見ですごいね。」

え。待って。口車って言うけど、そんな大したことはしてないし、そもそも私にはどの辺が口車だったかもわからない。しかも、月宮くん、腹黒先生ってどういうことよ。

「まぁ、というわけで温室にこいつがいても取り合えずは咎めるなよ。何かあったら恐らく博先生が文句をつけてくるからな。」

「博先生の文句、面倒。」

「そうっすね。腹黒先生が職務放棄とかしたら俺ら大変っすもんね。」

「まぁ、そういうわけだ。何か言いたいことがあるやつは居るか?」

何もないのかな。異論とか異論とか異論とか。異論があれば私はすぐにでもやめるんだけどな。そんなことをか考えていたら声が上がった。

「1つだけ、気になることならある。」

「皐、どうした?」

「藍川って女子?」

「ん?あぁ。」

雨宮先輩、いくらなんでも失礼じゃないですか?そんな私の憤りを他所に話は進んでいく。

「あいつが許可しないと思う。あいつ、温室好きだから。」

「あいつ?」

少しの沈黙があった。

「あいつか。あいつは俺がどうにかする。」

「なら、問題なし。」

あいつって誰だろ?女子だと何か問題があるのかな?

「まぁ、取り合えずお前はこれから温室の管理者だ。くれぐれも枯らすなよ?」

会長、本当に目が怖いです。枯らしたら私の命も枯れるのでしょうか。でも、そんなことは絶対に言えないので心で留める。

「枯らすのは問題ないと思います。でも、育つのは文句を言わないで下さいね?」

そう、私は普通に育てれば枯らすことはない。けれど、私には少し変わった能力がある。といっても、私の"記憶"にあるだけだけど。だから、念のため能力のことは言わない。けれど、逃げ道は確保しておく。

「そりゃあ、育てば文句は言わない。綺麗なら尚更な。」

「わかりました。それではよろしくお願いします。」

そうして私は何故か温室の管理者になってしまった。


「そう言えばお前、ここにいるやつ以外の生徒会役員のことは知っているのか?」

「いえ、その・・・。すみません、実は名前も知りません。」

「「「「え。」」」」

役員達は自惚れではないが、ある程度の注目は集めていると思う。特に女子からの。

だが、目の前の女子は名前すらしらないと言う。そのことに役員達は驚くと共に好感を持った。

「あの、どうかしましたか。」

突然、彼らが黙ってしまったので私は何かしらの地雷を踏んでしまったのだろうかと思ってしまう。

「あー、いや。俺は千智のそういう所、良いと思うよ?」

「まぁ、流されないってことですしね。」

「何の話?」

「雨宮先輩は知らなくて大丈夫っすよ。」

「そう・・・?」

「あ、あのぉ。」

「お前は気にするな。」

会長、本当に気にしなくていいんですか?

なんか、さっきまで月宮くんの顔が唖然としていたんですが。

「それよりも。」

話を切るように会長が声を上げた。

「お前はくれぐれも温室で眼鏡をかけた翡翠色の目をしたやつには気を付けろ。」

「その人、どうかしたんですか?」

「悪いやつじゃないが、性格に難有りと言うかなんというか。」

会長に性格に難有りと言わせる人物!?会長も性格に難有りな人なのに!?

「お前、今失礼なことを考えなかったか?」

「い、いえ。」

なんでばれてるの!?

「お前、分かりやすい。」

読んでる!?

「読まれるお前が悪い。」

「もう、考えるのをやめます。」

「それが賢明だな。」

一生、会長には勝てる気がしない。

「司、そんなに藍川さんをいじめては可哀想ですよ?それよりも藍川さん、温室の件で1つお願いがあるのですが。」

「雪宮先輩、なんですか?」

「ハーブ類を植えて欲しいのです。ハーブ類はいろいろと使い道がありますので。」

「それならお安いご用です!ハーブ類は育てやすいですし、虫除けにもなりますから。」

「そうですか!そう言って、頂けて良かったです!

温室のことでしたら何でも聞いてくださいね?一応、今まで及川先生のお手伝いもしていましたから、何か手伝えることがあれば遠慮なくおっしゃって下さい。」

「はい!ありがとうございます!」

そう言って、私は微笑んだ。

「ーーーっ。」

雪宮先輩の顔が赤い。

「せ、先輩!?どうされました!?熱があったんですか!?」

ますます雪宮先輩の顔が赤くなっていく。

「え。本当に大丈夫ですか!?」

「だ、大丈夫です。」

すると、月宮くんが声を上げて笑った。

「澪先輩でもそういうことあるんすね。なんか、安心すると共に警戒心も出てきました。でも、俺はこのままいくんで。」

「樹くん!?何を言って!?」

「澪、そうなのか。」

「司まで!?」

「何の話ですか?」

「あ、藍川さんっ!!こ、これはその。」

私は小首をかしげた。

「な、何でもないです!藍川さん、温室まで送りますよ!」

「話題、変えたな。」

「ですね。」

「二人は黙ってて下さい。」

「え!いいんですか?助かります。まだ学園内を覚えてなくて。」

「覚えてても迷うかもな。」

会長がニヤッと笑った。

「あれはたまたまですから!雪宮先輩、行きましょうっ!」

「えぇ。」

そうして生徒会室を後にした。


「失礼しました。」

そう言って扉を閉めた私に雪宮先輩は面食らった顔をした。

「あの、何か変なことをしましたか?」

「え!?いや、その。失礼しましたって言うんだなと思いまして。」

「え?言わないんですか?」

不思議な顔をする私を他所に雪宮先輩は歩き出した。

「普通は言うんですよね。ですけど、生徒会室に来た女子で言ったのは私の知ってる限りでは藍川さんだけですよ。」

えっとー?それはどゆことですか?

意味がわからないということが顔に出ていたのだろう。雪宮先輩が困った様に微笑んだ。

「過去に来た方々は特に用事もなく来た様な方々でした。そして、騒ぐだけ騒いで帰る様な方々でした。しかも、司が注意してやっとです。その際、私は見たんです。誰も挨拶をしなかったということを。だから、藍川さんが挨拶をしてくれて驚くと共に嬉しくなったんです。」

なんとなく女子生徒が来た理由がわかる。

多分、役員目当てなんだろう。恋愛は悪いことではないと思う。でもだからって、勝手に来ていろいろするのはどうかと思う。

そして、きっと雪宮先輩は・・・。

「雪宮先輩。先輩は生徒会という場所が大切なんですね。」

私がそう言った瞬間、雪宮先輩は今度こそフリーズした。


「え、え!?な、なんでそう思ったんですか!?」

焦りながら言葉を発する雪宮先輩も格好いいと思いながら言葉を紡いだ。

「だって、もし雪宮先輩が生徒会という場所が大切でないなら、そんな風に思わなかったのではないですか?少なくとも私自身はそうです。だから、大切なのかなって思ったんですけど・・・。」

雪宮先輩の顔を伺うと優しい笑みを向けられた。

「司が貴女を呼んだ理由がわかった気がします。」

「え?それはどういうことですか?」

「それは、まだ秘密にしておきます。強いていうなら、私達は貴女のことを気に入ってしまったということですかね。」

なんか、はぐらかされた気がする。

でも、今の言葉は・・・。

「及川先生と同じことを言うんですね。」

「及川先生はなんと?」

「気に入ったとおっしゃられました。」

「あの及川先生がですか。珍しいこともあるんですね。明日は雪でしょうか。」

そんなことを真顔で言うものだから私はつぼに入ってしまった。

「そ、そんなこと、真顔で言わないで下さいよ!笑いが止まらないじゃないですか。」

「そうですか?」

「そうなんです!」

私達は笑いながら温室までの道を歩んだ。



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