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6.生徒会



「じゃあ、先生。ちょっとこいつを借りるので。」

「うん、了解ー。でも、ちゃんと返してね?」

「善処します。」

「あははー。返す気ないよね?」

「行くぞ。」

「へ?うわ!」

腕を掴まれて強制送還のようだ。

「あの。これから何処へ行くんですか?」

「第1生徒会室だ。」

「えぇ!?何でですか!?」

「向こうに着いてから話す。黙って着いてこい。」

この人性格悪いんじゃなくて、俺様なの?いや、性格も悪いのかもだけど。

「じゃあ、先生、さようなら。」

「あ!及川先生、失礼します!」

「うん!藍川ちゃん、またねー!」

「先生、俺はスルーですか。」

「あ、司君。まだいたの?じゃあねー。」

「あー、はい。」

そう言って、会長はこの場を後にした。

うーん。会長と及川先生ってどういう仲なんだろう?


先程からすれ違う女子生徒からの視線が痛いというより、怖い。それは十中八九、私の手首を掴んでいる相手のせいだと思われる。本人は何とも思っていないのが、周りへ拍車をかけている気がする。


私が色々と考えていると、前から派手な感じの女子生徒が三人歩いてきた。

「あ、司くーんっ!」

凄い猫撫で声!!ある意味、リスペクトです。

「何か用か?」

会長の顔が能面のように強ばって見える。いや、その前になんか女子生徒さん達に睨まれた?

「これから私達、カフェに行くんだけど司君もどぉかなぁって思って!」

「そうそう!司君がいる方が楽しいし!」

「行こうよっ!」

あーっと。これは要するに私は邪魔なのね。睨まれた気がするじゃなくて、睨まれたんだ。どうしよう。逃げたいけど、手が掴まれているし・・・。

「すまないが、俺はこれから用事があるんでまたの機会に。」

「そんなこと言わずにさー!てか、用事って?」

「これから生徒会があるんだ。」

「そうなんだぁ。じゃあ、その生徒は?」

そう言って、私を上から下まで見てきた。なんというか、凄く感じが悪いし居心地も悪い。

「まさか、生徒会じゃあないよねぇ?」

「それはないでしょー。こんな子がまさかねぇ?」

ちょ、こんな子とか聞こえてますけど!てか、突然何なんですか!会長も何か言ってくださいよ!

私の心の声が聞こえたのかどうなのか、会長がとんでもないことを言った。

「こいつは"特別"なんだよ。」

「は?」

この声を出したのは女子生徒ではなく、私だ。

「は?ってお前なぁ。」

そう言って、会長は笑っている。

「ちょっと、貴女どういうつもりよ!」

「司君とどういう関係!?」

「え、いや、あの。」

「取り合えず、こいつは"特別"だから。そこさっさとどいてくれるか?」

「なっ。もういいわ。またね、司君。」

「ばいばぁーい。」

「じゃあねー。」

そう言って、私を睨んで女子生徒は何処かに行ってしまった。去り際がやけによかったのが気になるけど、今はスルーでいこう。


「はぁ。」

上から溜め息が降ってきた。見上げると困った顔をした会長と目があった。

「お前、さっきのどう思う?」

さっきのとは女子生徒のことだろう。

「私は・・・。」

そう言って、私は口を閉じた。私なんかが意見しても良いのだろうか。会長は突然黙った私を咎めるでもなくただ黙って私を見ている。

「私が意見してもいいんですか?だって、私は会長のことをまだ何も知りません。だから、そういうことを軽々しく言える立場じゃありません。」

私は会長を見据えてそう言った。

「お前は、"俺"を見ているんだな。」

「え?」

会長の目が揺れた気がした。

「いや、今のは忘れてくれ。」

「え、それはどういう・・・」

「ほら、着いたぞ。」

いろいろ話している内に着いたらしい。ここが第1生徒会室。なんというか、風格のあるドア。これは、一人では入れなかった。勇気と度胸がいる。

「ほら、入るぞ。」

私が呆けている間に既にドアを開けていたらしい。会長、心の準備をさせて欲しかったです。


風格のあるドアをくぐると、そこにはとても綺麗でシックなまるでどこかのホテルの様な部屋が目にはいった。そして、カフェの様な紅茶の香りがする。

ここは本当に学校なのだろうか。自分が夢を見ている気がしてきた。けれど、そんな夢見心地は続かなかった。


「千智!意外と遅かったな。」

そう言って、私を呼んだのは月宮くん。やっぱり、ファーストネーム呼びですか。会長が驚いてる。

「樹と知り合いだったのか?」

「あ、えーっと。クラスが一緒なんです。」

「それだけで下の名前で呼ばれているのか?」

「い、いろいろありまして。」

なんか、会長の目が怖い様な気がするのは気のせい?

「司、彼女が怖がってますよ。そして、そんな所に立っていないで中に入ったらどうですか。」

優しげな声のする方向を見ると、桜の木の下で会った、男子生徒がいた。

「あ。」

「先程ぶりですね。3年で副会長をしています、雪宮澪と言います。」

「あ、えと、1年の藍川千智です!」

「藍川さんですね。よろしくお願いしますね。」

「こ、こちらこそです!」

雪宮先輩の前だと凄く緊張する。よく、桜の木の下では普通な対応が出来たものだ。あの時の私は、大して雪宮先輩の顔を見ていなかったのだろうか。今なら言える。本当に綺麗なお顔だ。会長や月宮くんも格好いいけれど、雪宮先輩はまた違った格好よさだと思う。

「お前、澪とも知り合いか?」

「えっと、先程少しお話する機会がありまして。」

「そうか。」

やっぱり、会長の目が怖い様な気がする。

「司、そんな顔をしなくても。」

「これが俺の顔だ。」

「貴方は。」

そう言って、雪宮先輩が笑っている。雪宮先輩が笑うと格好いいというより、綺麗という言葉が当てはまる。もう、本当に目の保養というやつだ。


そんなことを考えていると足を何かが触れる感触がした。

「え、何?」

そう思って下を見ると、綺麗な毛並みの猫がいた。目はスカイブルーの様な透き通る色で毛は灰色。はたから見ても雑種ではないことがわかる。

「ロシアンブルー?」

「よく知ってますね。この子はロシアンブルーで名前をノアールと言うんですよ。」

「へぇ、可愛いですね。」

そう言って、私はノアールを抱き上げた。

「ふふ、可愛い。よろしくね、ノアール。」

「にゃあ。」

まるで返事の様だ。そんな私の様子を生徒会一同が驚いた様に見ている。

「あの、どうかしたんですか?」

「驚いたな。」

「えぇ。驚きましたね。」

「千智、凄いな。」

「え?えっと?」

すると私の疑問を悟った雪宮先輩が説明をしてくれた。

「ノアールはですね、基本的にあまり人になつきません。かつ、生徒会でもノアールがなついているのは2、3年生だけです。あとは、日向先生と及川先生ですね。そして、なついているとしても自ら刷りよって来るなんて有り得ませんし、ましてや抱き抱えるとなると引っ掻かれます。まぁ、1人だけ例外がいますが。」

そう言う雪宮先輩の目線を辿ると紅茶を飲みながら読書をしている人がいた。


「皐くん、自己紹介をお願いしますね。」

「雨宮皐、2年で役職は司書。仕事は、さっきの図書室での通り。」

「その節はありがとうございました。1年の藍川千智です。」

「藍川、ちょっとこっちに来て欲しい。」

「え?はい。」

どうかしたんだろうか。

雨宮先輩の座っているソファーの前に立った。すると、雨宮先輩も突然立ち上がり、私の頭に顔を近付けた。

「えっ!?」

「「「なっ!?」」」

「ど、どどど、どうされたんですかっ!?」

驚きのあまりどが多くなってしまった。いや、そんなことよりも。何故、雨宮先輩が私の頭に顔を寄せているかということだ。

「やっぱり。いい匂い。」

「え?え?」

「図書室で本を取ったときに近かったから。その時になんかいい匂いがした。この匂い、好き。」

そう言って、さらに顔を寄せてくる。

これはまずい。もう私の許容範囲をとうに越えている。もう、パンク寸前だ。しかも、本人にはきっと自覚がない。私の顔は真っ赤だろう。

そんなよくわからないことを考えていると突然、誰かに手を引っ張られた。

「皐、いい加減離れろ。」

会長だった。今回だけは本当に感謝します。

「どうしたんですか、会長。」

「どうしたって、お前!」

雨宮先輩はわかってない様だった。

恐らくさっきの行動は雨宮先輩だから許される行動だ。他の人がやったら警察のお世話になると思われる。そんな会長の怒り?と私の動揺を他所に雨宮先輩はソファーに座り直した。最後に私の頭を撫でて。言うまでもなく、私は赤面し会長はまたとやかく言っている。

「ノアール。」

そんなことは気にせず雨宮先輩はノアールを私の手の中から呼んで自分の膝にのせブラッシングを始めた。


うーん。私は雨宮先輩が本当はここで一番強い気がしてきた。だって、何処を探してもこれ程までにマイペースで天然な人はいない。

お陰で怒る気力まで無くさせるなんて本当に強者だと改めて思ってしまった。



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