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4.波乱の幕開け



視線が痛い。先程まで感じられなかった視線が本当に痛い。これで私はもう平穏無事な生活には戻れないだろう。この隣で涼しい顔をしている男のせいで。

「どうしたの?俺の顔に何かついてる?」

「いいえ、なんでもない。」

「ふぅん?」

そして、今はホームルーム中。しかも役員決め。

まだ余っている役員は図書委員、選挙管理委員、体育委員、文化委員、保健委員、美化委員だ。

なぜ生徒会は司書なのに委員は図書なんだろう?とても不思議だ。

でも今はそんなことより、問題が起きている。大抵の委員の"男子"は決まった。けれど、先程から"女子"が決まらないのだ。これは明らかに私に対する嫌がらせだろう。また、面倒なことを。

「はぁ。」

今日はため息をついてばっかりな気がする。

「まただね。」

「え?」

「また、ため息をついた。これで何度目だろうね?」

「誰のせいでため息が出てると・・・。」

「あの子達のせいでしょ?」

いや、まぁ。あながち間違いではないけど。

「どーにかしてあげよっか?」

「え?」

「この場を俺がおさめてやろうって言ってるの。」

「な、なんでそんな上から!」

「だってさ、千智にこの状況をどうにか出来るとは思えないし。」

うっ。それはごもっとも。

「それにここで恩を売るのもありかなーと・・・ね?」

何故か寒くもないのに鳥肌が立った。

笑顔が怖い。本当に笑顔が怖いってあるんだ。しかも、最初とキャラが違うような。

「で、どうする?」

ここは・・・。頼むしかないか。

「月宮君、お願いします。」

「樹。俺、樹だから。」

それは名前を呼べと?今ここで?否、そんなことをしたら私は明日からいじめにあうだろう。

「あ、後でじゃダメ・・かな?」

「ーーっ。それ、確信犯?」

「え、何が?」

「いや。なんでもない。」

そう言って、月宮君はその場をおさめてくれた。

ちなみに、どうやっておさめたかと言うと、まだ何の役職にもついていない子に一人一人お願いするという無難で至極簡単な方法。まぁ、私じゃあどうにもならないけど。

そうして波乱のホームルームは幕を閉じた。


「千智、さっきの凄かったねー!主に殺気が。」

「翠ー!何回もそっち見たのに笑ってスルーして!」

「いやぁー、だって面白かったんだもんー。」

「うぅー。」

「でもまさか、月宮君と仲良しだったとは驚いたわ。」

「え?仲良しではないけど、何で?」

「だって彼、生徒会よ?」

は・・・い?今なんて?

「せいとか・・い?」

「うん。役職は書記よ?」

「書記ってことは、皇族とも繋がりがある?」

「うん。旧華のね。」

「え、でも、私ら今入学したばっかりよね?」

「え?うん。でも、中学からの持ち上がりが殆どだし、月宮君はずっと前から勧誘されてて入学と同時に生徒会入りが決定してたみたいだし。あと、庶務の双子もね。」

恐るべし、乙女ゲームの世界。本当、用意周到としか言いようがない。私が唖然としていると翠がまた"あれ"を蒸し返してきた。

「それで、千智?会長の探している子って千智よね?」

うっ。これは誤魔化しきれない。むしろ、しらを切ると後々怖い。

「う・・・ん。」

その瞬間、翠の顔がパァっと明るくなった。

「いいなー!羨ましい!取り合えず、今から行きなよ!今日は、もう解散らしいし!」

「む、無理無理無理無理!」

「え、何で!?善は急げだよ!?」

いや、善じゃない!という内心突っ込みをしていると後ろから声がかかった。

「ん?千智、生徒会室に行くの?一緒に行く?」

月宮君!?

「い、行かない!!」

そうして私はダッシュでその場を後にした。


そうしてダッシュで辿り着いたのは何故か図書室。まぁ、本は好きだからいいんだけど。むしろ、この学園で来たいと思っていた場所、ベスト2だ。ベスト1はもちろん、温室。

「うわぁ。広い。」

入って驚いたのはその広さ。ここ、本当に学校?ってくらいの広さ。これだけ本があれば読む分には困らないだろう。

「あ。」

あの本は私が前から読みたかった推理小説だ。

「せっかくだし借りて読もう!」

そう思って手を伸ばす。

「もうちょい・・・。」

あと少しで届きそうだけど、届かない。けれど、踏み台を使うのも負けたような気がする。指先が本の背表紙に触れた。もう少し。

すると私の触れていた本が指先から消えていった。

「あ。」

後ろを振り向くと、今日何度目かのイケメンがいた。

「ん。」

そう言って、本を差し出してきた。

私が戸惑っていると、

「これは、違う本・・・?」

そう言って、イケメンさんは少しシュンとしている。

「え!?いや、合ってます!一瞬、優しくされて戸惑っただけで、本当にありがとうございます!」

優しくされて戸惑うなんて、どういうことなのだろうか。自分で言っておきながら悲しくなってきた。

「そう・・・。また取れないものがあったら、俺を呼んで。」

「あ、はい!本当にありがとうございます!!あの、もしよろしければ本の借り方を教えて頂けませんか?」

「いいよ。それ、俺の仕事だから。」

そう言って、分かりやすく説明してくれた。ちゃんとした人で優しい人もいるんだっ!

乙女ゲーム世界も捨てたものじゃないかも!私は、浮かれたまま図書室を後にした。



「樹君だけじゃなく皐様までも・・・。」

藍川千智、一体何のつもりなの。次から次へと役員の皆様と関わるなんて。私はムカつく気持ちをドアに込めて力一杯閉めた。


「ふぅん。面白そうなことになってるじゃん。」

俺は彼女が閉めたドアの反動で落ちたプリントを拾い、机の上に纏めて置いた。

「藍川千智、ね。」

本の貸出しカードの一番上の名前を指で撫でた。







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