3.イベントと波乱
「それでは以上で生徒会長挨拶を終了します。」
はぁ、やっと終わった。校長先生より短かったけど、早く終わるに越したことはない。
「この場をお借りして私情でありますが、連絡をさせて頂きたいと思います。」
緒連絡かな。
「今朝、俺と道でぶつかった女子生徒に連絡する。明日の放課後までに必ず生徒会室に来るように。」
今言うことだったのだろうか。もしかすると、これがイベントというやつで、ぶつかったのはプロローグだったのでは。ということは、無事シナリオというレールの上に乗ったという訳で。
普通に高校生活を送りたかったのだけれど。
「はぁ。」
今日、二度目のため息が出てしまった。
辛かった入学式も終わって気付けばもうクラス発表。でも、あの人混みの中に入れる自信は全くない。
「少し後に見ようかな。」
そうして私は人の少ない桜の木の下に来ていた。
「綺麗。でも、何か不思議な気持ち。」
その桜の木はとても綺麗だった。風に吹かれて舞い散る桜によって更に幻想的に見える。
「貴女はそこで何をしているのですか?」
「え?」
振り返ると綺麗な男子生徒がいた。
「何をしているのですか?」
何をって・・・。
「桜の木を見てました。綺麗だなって思って。」
「貴女もそう思いますか?私もこの桜の木が好きなんですよ。何か、不思議な気持ちになるんです。」
そこまで言って男子生徒はしまったという顔をした。
「すいません、初対面の人に話すことではなかったですね。」
「いえ。そんなことないですよ。私も同じように思っていましたから。」
そう言って私は微笑んだ。
「そう、ですか。貴女は新入生でしょう?そろそろ、クラス発表を見に行けると思いますよ?」
本当だ、先程より大分人が少なくなっていた。
「ありがとうございます、失礼します。」
私は足早にその場を後にした。
「名前、聞きそびれてしまいましたね。」
そう言った男子生徒の言葉は桜だけが聞いていた。
クラス発表を見た結果、私は1-Aだった。そして、出席番号はやっぱり1番。まぁ、そりゃあそうだよね。藍川なんて名前はどうやっても1番だ。そしてすぐに席についた。席について少しして教室の扉が勢いよく開かれた。
「このクラスの担任になった、日向悠だ。担当教科は数学、部活は生徒会顧問だ。1年間よろしく!」
言い終わるとすぐに女子が騒ぎだした。
「格好いい、イケメン過ぎ!」
「顔、小さい!」
「身長高いし目の保養になるー!」
と、口々に言っている。まぁ、確かにとても整った顔だと私も思うけど。
「藍川さんも格好いいって思う?」
後ろから突然、声をかけられた。
「え?」
「あ、ごめん!私、上田翠って言うの!その、友達になりたくて・・・。」
「ううん!私、藍川千智って言うの。こっちこそよろしくね!」
「本当!?よろしくね。私のことは翠って呼んで!」
「じゃあ、私のことは千智でよろしく。」
「了解!じゃあ改めて、千智も先生は格好いいと思う?」
「うん、そりゃあね。顔は整ってると思うし、身長高いし顔も小さいし足も長いし。最早、完璧だと思う。」
「やっぱり?私も同じように思ってたとこ。そこに生徒会顧問っていうのも魅力的だわー。」
「え、何で?」
「え?知らないの!?生徒会は全員美形で有名よ!?ファンクラブもあるって話。しかも、先生もあの格好良さだから、ファンクラブが出来たって話。」
「そ、そうなんだ。」
凄いわ。流石、乙女ゲーム。ファンクラブとか本当にあるのね。
「でもまぁ、生徒会の方々とお近づきにはなりたいけど、やっぱり少し近寄りがたいんだよね。あの容姿もあるけど、家柄もねー。」
「家柄って?」
「千智は本当に何も知らないんだね。この学園に入学したのに何も知らないというのは本当に凄いわ。」
何故か、驚かれてしまった。
「会長は日本でも3本の指に入る財閥の跡取りだし、副会長のお家は華道の家元、会計のお家は警察幹部のキャリアだし、庶務の双子は世界でも有名なデザイナーの両親でブランドも立ち上げているし、書記のお家は旧華で皇族とも繋がりがあるらしいし、司書のお家は道場で本人は剣道を得意としているけど、空手に柔道、他にもいろいろ出来るって話だよ!」
翠はそう興奮気味に話してくれた。
なんというか、翠は主人公を助けてくれるサポートキャラのような気がしてきた。だからといって、せっかく出来た友達をスルー出来ない。それに、なんだかんだで私は翠のことが結構好きみたいだ。
「そうなんだ。でも、役職の中に司書ってあったじゃない?なんか聞き慣れない役職なんだけど。」
「千智が食いつくのはそっちなんだね。まぁ、司書なんて役職は私も初めて聞いたけど。
司書って言うのは簡単に言うと図書委員みたいなものだよ。本の貸し借りの統括部署みたいな。多分、本当はもっといろいろしてると思うけど。」
「なるほど、だから司書なんだ。翠、ありがとうね!」
「ううん、どういたしまして!これから一緒に生活するんだし、もっとお互いのことを知りたいし、教えたいしね!」
「一緒に生活?」
「あれ、まだ知らない?私達、一緒の部屋なんだよ?」
部屋?生活?もしかして・・・。
「寮?」
「うん!さっきクラス発表の横に貼られてた紙に書いてあったよ!私達、同室だって!」
これは迂闊だった。確かに誰も家からの通いとは言っていなかった。でも、誰が寮と考える?
しかもお母さん、荷物は?とか一言あってもいいんじゃない?
私が悶々と考えていると翠が、
「私は荷物は明日届いて今日の放課後に1回家に帰るんだ!」
と言った。
そういうことなのか。なんだろう、今の心配を返して欲しい。
「千智は?」
「え?うん、私もそんな感じ。」
「そっか!そう言えばさ、会長が言ってた連絡の子、あれって誰なんだろうね!」
「さ、さぁ?」
思い出したくない話題だ。
「なんか千智、目が泳いでない?」
「そ、そんなことないよっ!?」
「その慌て方、まさか!」
これはバレた。観念して言うしかないか。
「はい、そこまでな!」
「え?」
「仲が良いのは良いことだが今はホームルーム中だぞ?
しかも役員決めの真っ最中。クラス委員長をどうしようかと思っていた所だ。藍川、お前首席番号1番だしやるか。はい、決定ー!」
すごく嫌だ。私は極力普通な生活がしたい。そもそも、私の意見はどこにいったのか。
「じゃあ、男は・・・。」
そう言って、日向先生は生徒を見ている。しかし、男子生徒は必死に目を合わせ無いようにしていた。
「月宮、お前に決めた。」
月宮?もしかしてあの月宮君?
そう思って見てみると案の定、先程の入学式の時に話した月宮君だった。
「マジですか、先生ー。一生懸命に目を合わせ無いようにしたのになー。」
「その一生懸命さがむしろ駄目だったんだよ。」
「ついてないわー。」
ここでもまた女子が小声で話している。
「月宮君ってかっこよくない?」
「確かに!あの脱力感もカッコカワイイっていうか!」
「すっごい、顔整ってるー。睫毛長ーい!」
とまぁ、こんな感じにどこの女子も考えることは一緒。かくいう私も初対面の時はそんなことを思ったけどね。
まぁ、平穏無事に生活出来るなら相手は誰でもいっか。
「じゃあ、改めてよろしく。"千智"。」
「キャーーーー!」
「今、月宮君、藍川さんのこと下の名前で呼んだよね!?」
「いいなー、羨ましい!」
「てかあの2人、どういう関係!?」
前言撤回。平穏無事とは程遠い生活になりそうです。




