30.野外活動 2日目 夜
男子部屋に集まって、取り合えず自己紹介をした。正直、樹君と沖本君のことしか分からなかったからとても助かった。部屋にいる男子は、樹君と沖本君を除いて4人。
まず、私の左斜め前に座っているのは松本君。下の名前?そこまで全員分手が回りません。彼は、うん。クラスで1人はいるバカなことを率先してやるやつだと思う。まぁ、見てる分には楽しいからいいんだけどね。
その松本君の左斜め前に座っているのは、結城君。自分をあんまり主張しないけど大切なことはズバッと言って、気遣いの出来る優しい人っていう感じ。多分、バカなことをする松本君を止めるのは彼の役目だと思われる。
そしてその結城君と話しているのが、谷矢君。谷矢君は沖本君と同じサッカー部らしくて、たまに2人で話しているのを見かける。あまり大きく表情が動かないけど、怖い人ではなさそう。
最後は樹君と笑顔で喋っている佐野君。樹君と同じ様な雰囲気の人で気さくな感じがする。どちらかというと、樹君よりも賑やかで裏表のない感じがする。いや、決して樹君の裏表が激しいと言っている訳ではないのだけれど。すると、樹君と目が合った。
「ん?何、千智。何か失礼なこと考えてる?」
「え!な、何で?」
「いやー、別に?ただ、千智の考えてることは大体わかるから。」
マジですか。樹君はそういう能力なんだろうか。
「え、なになに?藍川さんと樹ってそういう仲?」
突然佐野君に話しかけられた。
「そういう仲?それってどういう仲?」
確かに仲間ではあるけど。
「え!?そんな直球で聞かれると言いにくいけど・・・。その、付き合ってる、とか・・・。」
付き合う?もしかして、恋愛の!?
「な、ないない!生徒会が一緒でクラスメイトだっていうだけで私達に恋愛感情なんて全くないよ!ね、樹君!」
ばっ、と樹君のことを見ると、無表情の樹君が笑いを堪えている佐野君に肩を叩かれていた。
「ッ、ククッ、い、樹っ、ククッ。」
「五月蝿い。」
樹君が佐野君の頭を軽く叩いた。え、もしかして怒らせてしまった?
「あ、あの、樹君のことが嫌いとかそういう意味ではなくてね、友達として好きだしこれからずっと友達でいれたらいいなとは思うんだけど!」
樹君が不機嫌だったので慌てて弁解した。さっきの発言で不快にさせてその上、怒らせてしまったら申し訳ない。
「ずっと友達・・・。」
樹君が小さな声で何かを呟いた。するとその後、佐野君がポンッと樹君の肩を叩いた。
「俺さ、樹みたいな奴はこういうことで困ってないんだろうなーって思ってたけど、お前も俺と大差無いんだな。からかって悪かったよ、お互い頑張ろうな。」
「あぁ。俺も五月蝿いとか言って悪かった。」
「おう。」
何故か2人は固い握手を交わしていた。え、これはどういうこと?
謎の握手の後、全員で王様ゲームをすることになった。やはりこれは定番らしい。もちろん無茶な命令はなしということで。
「こういう時のためにジャジャジャジャーン!」
松本君が効果音と共に割り箸をどこからか持ってきた。
「おぉ、松ちゃん準備いいな!」
佐野君が松本君を褒めてそのままハイタッチをしている。
「流石、俺っ!」
「松、調子に乗らない。」
「アダッ!」
結城君がスパーンと松本君を殴った。うん、良い音。女子の皆はクスクス笑っている。
「よし、掴みもオッケー、オチもついたとこで始めるか!」
レディファーストということで男子は、割り箸を引く順番を譲ってくれた。最初に引くのは翠。
「うぅ、最初は緊張するなー。んーっと、これ!」
全員が引いて同時に確認しようとなったので、引いてもまだ見れない。次に引くのは綾ちゃん。
「私はこれで。」
綾ちゃん、即決ですか。次は美樹ちゃん。
「じゃあー、これっ。」
そして私の番になった。
「えっと、じゃあこれで・・・。」
女子の最後は紗香ちゃん。
「これにする!」
そしてその後、全員が引いて同時に確認することになった。
「王様には王冠のマーク、それ以外には1番から番号が書いてあるからな。いくぞ、せーの!」
私は2番だった。どうか指名されません様に。
「王様、誰?」
・・・・・。え、全員無言?
「俺らしい。」
手を挙げたのは谷矢君だった。
「うぇ!?たにーが王様?」
うぇってどういうことなの松本君。疑問に思っていると樹君が説明してくれた。
「たにーって優しそうなんだけどさ、結構えげつないというか。的確に痛い所を突いてくる感じ?」
谷矢君を怒らせないと私は心に誓った。
「それじゃ王様、命令をどうぞ。」
当たりませんように・・・。
「1番は2番の2番は1番の、あまり知られてない秘密を1つ暴露。」
当たってしまった・・・。しかもさ、あまり知られてない秘密って所が痛いよね。胸にチクチク来る感じ?
「1番と2番、誰?」
私は手を挙げた。すると翠も手を挙げていた。
「え、千智が2番?」
「ということは、翠が1番?」
翠のあまり知られてない秘密かー。あれしかないよね。
「翠のあまり知られてない秘密は、重度の料理音痴。その腕前は、どんな食材でも翠が調理すればたちまち謎の黒い固形物になるくらい。」
「千智!!それは言い過ぎだよ!」
「いや、藍川の言っていることは大袈裟ではない。俺が保証する。」
「確かにあの臭いは凄かったよなー。」
隣の沖本君と樹君が大きく頷いてくれた。
「そんなぁー。」
「という訳で私の暴露は終わり。次は翠ね。」
ただ、私のことに関して暴露する様なネタがあるのかな。
「うーん、千智の暴露話・・・。」
やっぱり思いつかないよね。
「あ!・・・いや、あれはダメ。」
ん?あれ?
「ん、何々?上田さん、何を思い付いたの?」
すかさず松本君が聞いた。
「え、あー、その・・・。いや、これはダメ。絶対に言えない。昨日約束したから!」
昨日の約束・・・?あ、まさか!?
「ちょっと、翠!?あれは誤解だけどここで言っていいことじゃないからね!?」
及川先生の件をこんな所で軽く暴露されたらたまったものじゃない。暴露されたらあっという間に噂になってしまう。
「え、何々?藍川さんがそんなに言うことなんて俺も気になるんだけど。」
ちょ、佐野君まで!?
「もしかして翠、昨日のことを言おうとしたの?」
綾ちゃん、どうにか場を収めて下さい。
「あれ、もしかして女子は全員知ってる感じ?」
うわ、松本君痛い所を突くなー。
「そう、だね。女子は全員知ってるよ。」
私は腹を括って言った。
「それならさー、俺らに言ってもよくない?女子だけでこれだけ知ってるんだからさ、俺らが増えた位大差ないでしょ。」
何を言っているんだ松本君は。大差あるに決まっている。そもそも何故松本君はここまで掘り下げて聞いてくるのか。私は彼とほぼ初対面のはず。何かしたとも思えない。ただの好奇心か、それとも・・・。そんなことを考えているとまたスパーンっといい音がした。
「松、女子の言いたくないことを無理矢理言わせ様とするのは最低。藍川さん、こいつバカなんです。バカでアホでマヌケだけど嫌な奴じゃないんです。今回のことは都合が良すぎるかもしれないけど、無かったことにして貰えないですか。」
結城君が突然謝って来た。ただ、フォローしたいのか貶したいのかはわからないけど。
「ちょ、ゆーき?それは俺をフォローしてる?」
「フォローしているだろ。貶すのならもっと言ってる。それこそお前の黒歴史を全て・・・。」
「うわー!ごめん、ごめんなさい!藍川さん、すいませんでした!」
突然松本君が異常な程に謝り出した。え、何この変化、怖いんだけど。
「藍川さんってさ、あんまり男子と話さないじゃん。話しても樹か生徒会の人でさ。だからその・・・。」
途中で口ごもらないでほしい。続きが気になってしまう。
「その?」
取り合えず続きを促した。すると松本君が意を決した様に口を開けた。
「高嶺の花な藍川さんと喋れて浮かれてました、すいません!」
・・・・・・・・。
「は?」
微妙な雰囲気の中、時間だけが少し過ぎていった。




