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2.入学式



気付いたら私はベットの上だった。

知らない部屋。いや、知っているけど知らないが正しい。これまでの記憶と転生前の記憶の混同と言うのか。なんと言うか、不思議な感覚。

そんなことを考えていると廊下から声がした。

千智(ちさと)ー!そろそろ起きなさーい!」

この声はお母さんだった、と思う。返事をしなければ。

「はーい!」

私はすぐ制服に着替えてリビングに向かった。


「ご飯食べ終わった?」

「うん、ご馳走さま。」

お母さんの料理は美味しかった。転生前の記憶の料理と近い味がして、何故か少しだけ泣きそうになった。

「じゃあ、そろそろ行くね。行ってきます!」

「いってらっしゃーい!」

そう言って私は慣れない家のドアをくぐった。


家を出て少しして気が付いた。

「学校ってどこにあるの。」

我ながらこれには驚きだ。確か、記憶の中に学校の名前があったような気がする。

「桜凛学園。」

気付いたら私はこの名前を言っていた。

「よし。取り合えず歩いてみて、通行人に会ったら聞いてみよう!」

そうして勢いよく角を曲がった。

「きゃっ。」

「うわ!」

誰かが向こうから歩いてきていたとは気付かなかった。今はそんなことより、転けることの方が大切だ。

そう思い受け身をとろうとしたら、突然腕をひかれた。

「わ、わ!」

「大丈夫か?」

私は制服を着た男子に抱き締められていた。

そして顔が近い。前世では見たことがないくらい、綺麗な顔だった。

「だいじょう、ぶです。あの、ぶつかってすいません。そして、ありがとうございます。」

「いや、急いでいたから俺にも非はある。」

そしてその男子は私の格好を見て目を細めた。

「お前、桜凛学園か?」

「え?はい。」

「桜凛学園なら、こっちの道ではないと思うが。」

全く違う道だとは思っていなかった。

「じ、実は迷ってしまって。」

そう言うと笑われてしまった。

「高校生になって迷子か。しかも、小学生でもわかる学校の行き方がわからないというのはありえないだろう。」

そう言って未だに笑っている。綺麗な顔には毒がある。初対面の女子に対して思ったままを言い過ぎてはないだろうか。

「ぶつかったことは悪いと思いますが、そこまで言われる筋合いはないかと。先程はありがとうございました、失礼します。」

男子は呆気にとられているようだった。けれど私はすぐその場を後にした。

「おい!」

「何か?」

「桜凛学園はこの次の十字路を真っ直ぐ行って最初の曲がり角を右だ。そうすれば桜凛の生徒がちらほらいる。あとはそいつらに着いて行けば着けるだろう。これなら小学生でも出来る。」

わざわざ教えてくれたことには感謝するけど、最後の一言は必要ですか?

「重々ありがとうございました、今度こそ失礼します。」

そう言って私は走ってでその場を去った。

だから男子が何て言ったかは聞こえなかった。

「新入生か。これから面白くなりそうだ。」


あの人の言った通りに進んだら、本当に桜凛の生徒がちらほらいた。そしてすぐに桜凛学園に着いた。

「ここが桜凛学園・・・」

第一印象は大きくて綺麗だということ。これからの生活がこれだけでも楽しくなりそう。奥には温室の様なガラス張りの場所がある。植物の好きな私にはとても嬉しい特典だ。

これからに期待を膨らませ門をくぐった。


そうして今は、講堂で入学式の真っ最中だ。かれこれ30分程、学長の話が続いているせいかとても眠たい。前世も今世も、校長先生のお話が長いというのは共通らしい。

「以上をもって私からの話は終わります。

それでは新入生の皆さん、これからの生活を楽しみにしています。」

あ、終わったみたい。本当に長かった。

「続いて生徒会長挨拶。」

まだ話が続くのか。壇上に目線を向けると見たことのある人がいた。

「生徒会長の星宮司だ。」

今朝、ぶつかった人。まさか、生徒会長だったとは。これはなんというか、明らかに乙女ゲームでいう攻略対象だろう。

初日からこうだと正直、先が思いやられる。

「はぁ。」

私はそっとため息をついた。

「どうしたの?」

「え?」

隣に座っていた男子が話しかけてきた。知り合いではないよね?私の"記憶"にはない顔だ。

そもそも、こんなにも整った顔は忘れる訳がない。

「だから、そんなため息をついてどうしたのって聞いてるんだけど。」

「えっと、その。少し、驚いたというか興味深いことがあって。」

「驚くとため息が出るの?何か、変わってるね。」

そう言って男子は笑っている。

「そりゃあ、少しは変かもだけど。」

「俺、樹。月宮樹。君の名前は?」

「え?藍川千智だけど。」

月宮君は私の名前を何度か呼んだ。

「藍川千智。うん、覚えた。」

「えっと、よろしく?」

「何で疑問系?そこはよろしくでしょ。」

「じゃあ、よろしく。」

「うん。」

そう言って月宮君は、ふわりと笑った。その姿に少し格好いいと思ってしまった。




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