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21.野外活動 前日



「もうすぐで野外活動があるねー!」

「野外活動?」

私は翠の話に朝食を食べる手を止めた。

「うん!通称野活という名の合宿かなー。」

「合宿?何をするの?」

「それはね、」

翠が顔を輝かして説明をしようとした瞬間。

「なんで、ここにいらっしゃるの!?」

「朝から見れるなんて!」

「やばい!格好いい!」

何だろう。このデジャヴ感。

「役員の誰かみたいね。」

「やっぱりそうよね。」

「でも、何か今日は騒ぎ方が大きい様な?」

「確かに。」

私は気になって、声のする方を振り向いた。


「すいません。通して下さい。」

謝りながら進んでくる人が見える。大変そうだな。

「朝から澪様を見れるなんて、今日は絶対に良いことがあるっ!」

そう言って、はしゃいでいるのは柳沢さん。貴女、そんなキャラだったっけ?しかも、雪宮先輩のことを澪様とか呼んでたっけ?あ、そう言えば、前に翠に聞いたけど柳沢さんは役員の中でも雪宮先輩が一番好きらしい。なんというか、通りでという感じなのかな。

「それにしても、朝から雪宮先輩がどうしてここにいるんだろうね。千智、何か知ってる?」

「いや、全然。どうしたんだろう?」

私が不思議に思っている内に、雪宮先輩は私達の座っている場所まで来た。

「おはようございます。千智さん、上田さん。」

「おはようございます。雪宮先輩。」

「お、おひゃようごじゃいます!」

いや、翠。緊張はわかるけど噛みすぎでしょ。雪宮先輩は翠を特に気にした様子もなかった。なんというか慣れているのかな?

「隣、空いてますか?」

「えっ!?あ、はい!」

「じゃあ、失礼します。」

翠を見ると失神しそうだ。翠、落ち着いて!

「あの、どうして先輩がここに?」

「それは、千智さんと一緒にご飯を食べて登校するためですよ。」

さらっと言われた内容はとんでもないものだった。

「言ったじゃないですか。これまで以上ですからね、と。私は貴女に恋をしているのですから。」

「えっ!?」

こんなところで、そんなことを言わないで下さい!

ほら、翠が今にも倒れそうなくらいに紅くなってるじゃないですか!という私も真っ赤なんだろうけど。私が何も言えず、オロオロしていると雪宮先輩はふんわりと笑った。

「千智さん、今日も好きですよ。」

「ちょ!今の聞いた!?」

「嘘!」

「冗談でしょ!?」

「澪先輩ー!何で!?」

私は雪宮先輩の発言と周りの女子の声を聞いて、机に突っ伏した。


雪宮先輩の教室まで送るというのは丁重にお断りした。理由は、うん、言うまでもない。教室に着くと翠が息を吹きかえした。

「あれ、雪宮先輩は?」

「食堂で別れて今は教室。翠、軽く意識を飛ばしたんだよ?」

「そっか。」

「うん。」

翠が落ち着いたと思ったら、突然、勢いよく叫んだ。

「千智ー!あれはどういうこと!?私、何も聞いてない!」

「ちょ!翠!話すから。話すから、落ち着いて!」

そして私は昨日の事をかいつまんで話した。

「なるほどね。雪宮先輩も大胆ね。」

「そうよねー。」

「それで?千智はどう思ってるの?」

「え?何が?」

「何が?じゃなくて!雪宮先輩のことよ!」

「うーん・・・。格好いいと思うよ?それにすっごく優しいし、気遣いとか生徒会で一番だし。何でも出来るし非の打ち所はないし・・・。」

ただ、大胆なだけで。最後のは口にしなかった。

「でも、付き合わないと?」

「だって、私がこんな宙ぶらりんの気持ちなのに付き合えるわけないよ。それに、恋はするものじゃなくて落ちるものでしょ?」

誰かの名言だった気がする。

「まぁ、そうよね。でもということは、雪宮先輩に落ちる可能性もあるんだよね?」

「それは、まぁ。」

「何かあったら相談してよね!話ぐらいは聞くからさ!」

「うん。ありがと。」

「でもさー、雪宮先輩ファンがどう出るかなー。」

うっ。私も気になってたことだ。

「あのさ、翠は雪宮先輩ファンのこと何か知ってる?」

「んー。詳しくは知らないけど、過激な人もいるらしいよ。」

「そうなんだ。」

あ、話が重くなってしまった!何か話題を・・・。

「あ!そう言えば、さっき食堂で野外活動の話しようとしてたよね!詳しく教えて!」

すると、翠の顔が輝いた。

「そう!それなんだけどね!野活は他学年や他クラスと交流を持とうということを名目に、海に行って遊べるの!しかも、2泊3日!どう!?素敵じゃない!?」

翠が興奮気味に話してくれた。確かに、翠が好きそうな素敵な話だ。

「うん!楽しみだね!ちなみにいつあるの?」

「出発は明日だよ!」

「そっか。明日かー。って、明日!?」

「え?うん。」

「え、準備は!?」

「千智、聞いてなかったの?今日は授業は午前だけで、そこからは明日の準備をするんだよ?ちなみに、外出はOKだよ。」

「そうなんだ。」

「それでなんだけど、千智。一緒に水着を買いに行かない?」

「水着?」

「海に行くんだから水着は必須でしょ!」

そっか。泳ぐのか。

「うん、もちろんいいよー!」

「本当!?やった!千智とデートだ!」

翠の喜び様に私も嬉しくなった。


授業も無事終わり、今は全校集会。全員が講堂に集められている。理由は明日から行われる野外活動の説明と班分けをするためだ。

「説明は以上だ。これから班分けをする。野外活動はクラス、学年の垣根を越えて交流をすることを目的とした場だ。よって班も同じとする。あらかじめ、クラスでくじを引いたと思う。そこに書かれていた番号をコンピューターで無作為に分けた。その結果がこれだ。」

プロジェクターに班ごとの番号が出た。

「それぞれ、自分の番号の元に行くように。」

そうして、みんな自分の場所に向かい動き始めた。


「私の番号はどこだろ。」

ななじゅうなな、ななじゅうなな・・・。

そう、まさかのラッキーセブンのぞろ目。乙女ゲームのヒロイン恐るべし。

「あ、あった。」

講堂のステージから見て右側ね。だけど、ステージの右側が何故か騒がしい。あー、翠いないかな。

「うそっー!あそこの班いいな!」

「確かにっ!だって、役員の方々が!」

「そもそもあの班って普通の人入れるの?」

「いいな!私、あそこがいい!」

大方予想はついてた。ついてたけどさ、これってどうなの?そりゃあゲーム上、こうならなきゃいけないのかもしれないけどさ。でも、だからってこれは・・・。

「はぁ。」

私は溜め息をひとつついて覚悟を決め、騒ぎの中に突っ込んで行った。


「俺達は見せ物じゃないよな?」

「聖先輩、魔王も土下座する様な顔してますよ?」

「「聖君、怖ーい。」」

「俺は元からこういう顔だ。そして、聖君と呼ぶな!」

「聖、うるさい。」

「うっ。」

「「皐先輩に怒られたー!」」

「何で、皐には先輩呼びなんだ!」

「「さぁねー。」」

「そう言えば、書かれてる番号が1つ多くないか?」

「私はてっきり、司の仕業だと思ってましたが違うんですか?」

「いや、俺は澪の仕業だと・・・。」

「もうすぐ誰かわかるさ。」

「響の仕業だったのか。」

「あぁ。ほら、新しいメンバーが来た。」

役員全員が俺の見る方向を見た。


う、うわぁ。なんかみんなこっち見てない?気のせい?違うよね。そうだよね。でも、何か怖い。逃げ出したい衝動にかられるのは気のせいだろうか。

「千智ー!」

そう言って、樹君が近寄ろうとしたのを雪宮先輩が引っ張った。

「うわっ!ちょ、澪先輩!?」

「樹君は少し黙っててね。」

「え、何でですか!?」

「ね?」

「はい。」

有無を言わせない態度。流石です。

「千智さん。もしかして貴女が新しいメンバーですか?」

優しい笑顔で問いかけてくる雪宮先輩。さっきとは本当に別人です。

「はい。すいません、昨日言おうと思ってたんですが・・・。」

「いえ、大丈夫ですよ。入ってくれることには変わりないんですからね。」

「千智、入るのー?」

「本当にー?聖君に脅されてないー?」

「おい!何で俺をそこで出す!?」

「だって、悪役は聖君が響君しかいないんだもーん。」

「でも、響君はこの件に一枚噛んでそうだしー、そしたら聖君しかいないんだもーん。」

「お前ら、だもんだもん五月蝿(うるさ)い!」

「千智ー、聖君に怒られたー!」

「怖ーい。助けてー!」

双子は私の後ろに回り込んだ。

ずっと、黙って下を向いていた司先輩と目があった。

「千智。」

私の名前を呼んだ瞬間、騒いでいたみんなが静かになった。

「俺達の仲間になってくれて、ありがとう。」

司先輩の言葉に一瞬、声が出なかった。

「ーーっ。い、いえ。こちらこそです。」

周りを見ると、みんな優しい顔でこっちを見ている。心がポカポカとしてくる様なそんな感覚に陥った。

「あの、これからもよろしくお願いします!」

みんなは、笑顔で頷いてくれた。


「それであの、聞きたいことがあるんですが・・・。」

私はおずおずと隣にいた皐先輩に話しかけた。

「どうしたの?」

「なんで生徒会はみんな一緒の班なんですか?」

「それは、"色"の件と関係があるから。」

「"色"と?」

どんな関係だろ?

「それはおいおい説明があると思う。」

「そう、ですか。」

少し、声のトーンが低くなってしまった。

「一応言っておくけど、今説明しないのは千智を信用していないからではなく、一般生徒に聞こえるかもしれないという配慮だから。」

「あ、何かすいません。気を使わせてしまって・・・。」

「千智。もう俺達は仲間なんだから、そんな他人みたいなことはやめよ。」

「はい。すいません。」

「俺はすいませんって言われるより、ありがとうって言われる方が好き。」

すいませんじゃなくて、ありがとう・・・。

「皐先輩、ありがとうございます!」

私は精一杯の笑顔で言った。

「やっぱり、笑顔の方がいい。」

「え?」

「笑顔の方が俺は好き。」

す、好き!?い、いや、笑顔を褒められただけだ。うん、そうだ。

私は、紅くなった顔を隠すために下を向いた。

「千智?」

「な、なんでもないです!」

「なら、いいけど。」

皐先輩は不思議そうにしながら何も突っ込んで来なかった。ふぅ。よかった。


「というわけで、野外活動は班ごとで研修を行う。勝手な行動等をしないように。そして、荷物などは配布したしおりに書いてある。不要物は持ってこない様に!最後に生徒会から何かあれば言ってくれ。」

司先輩がステージに上がった。何を言うんだろう。

「皆さん、私達生徒会より1つお知らせがあります。私達、生徒会に新しいメンバーが増えました。1-Aの藍川千智です。役職は(キー)です。」

私についてのお知らせだったの!?しかも、役職の(キー)って何!?講堂がざわついてきた。

「藍川って誰?」

「生徒会に女子って入れたんだ。」

「宝探しで優勝してた子?」

「私だって生徒会に入りたーい!」

「てか、役職の(キー)って何?」

いろんな声が聞こえる。

「皆さん、もう少し聞いて下さい。役職の(キー)のことですが、(キー)はどの役職にも補佐としてつくことが出来る役職です。元よりこの役職は在りましたが、該当する者が居らず不在でした。ですが今回、藍川にこの役職についてもらいました。生徒会として学園の(キー)になって欲しいと私達は思っています。皆さんもご協力とご支援よろしくお願いします。以上でお知らせを終了します。」

司先輩がステージを降りてきた。

「頑張れよ、(キー )。」

「はい。ありがとうございます。」

私は司先輩に微笑んだ。

「それではこれで解散とします。生徒の皆さんは明日の準備にとりかかって下さい。」

こうして、ホームルームは終わった。

よし!私も翠とデートに行こう!私は翠の元に急いで向かった。


「千智とデート♪千智とデート♪」

私達が今歩いているのは学園から最も近い、大型ショッピングセンター。流石乙女ゲームだよね。きっと、デートイベントとかあるから学園の周りにいろんな所があるんだ。ショッピングセンターしかり、水族館しかりだ。こういう所はラッキーだと思うな。

「千智の水着、選んであげよっかー?」

「本当ー?」

「もっちろん!まかせんさい!」

あれ?そう言えば、今って4月だよね?いくら暖かいと言っても4月中旬の暖かさなんて知れてる。これで海に入るの?寒くない?寒中水泳とかにならないの?

「あのさ、翠。今、4月中旬だけど海って早くない?寒くない?」

「そりゃあ、この辺の海は寒いと思うよ?でも、私ら明日から沖縄だから関係ないと思うけど?」

「あ、そっか。って、沖縄!?」

「うん。しおりにもバッチリ沖縄って書いてあるし!いいよねー。南国の海、晴れ渡る空!そして青春を楽しむ若者達!本当楽しみー!」

沖縄と聞いて野外活動が更に楽しみになった。あ、日焼け止めを買わなくては!

「水着売り場に到着ー!」

「わぁ!」

シーズン前ということで品揃えがないかと思っていたけど、全然そんなことはなかった。後で翠に聞いたけど、この時期は毎年野外活動があるということで水着を買いにくる学園の生徒が多いらしい。そこで、この辺のショッピングセンターはこの時期でも水着を沢山入荷するそうだ。

「千智はこれがいいんじゃない!?」

翠が見せてきたのは、黒のビキニ。しかも紐で結ぶタイプだ。

「翠!?それは私には大人過ぎて、ハードル高っ・・・。」

「えー?そーかなー。だって千智は胸もあるしー。」

そう言って翠は私の胸を凝視してくる。

「な、何?」

思わず胸を手で隠してしまった。

「いや、何カップかなって。私の見立てでは、Bは完璧あると思うんだよね。」

「み、見立てないでよ!」

「それで?実際は何カップなの?」

うっ。

「言わなきゃ、このビキニをこっそり入れ換えてキャリーにつめるよ?」

そ、それは困る!私は腹を括った。

「C・・・。」

消え入りそうな声で言った。

「羨ましいー!やっぱりある方がいいよねー。私、Aだから憧れるよー。」

そういうものなのかな?

「あったらあったで邪魔よ?」

「それは!ある人だから言えるの!ない人の気も知らないでー!そんなこと言うんなら、今度揉んでやるんだから!」

「ごめんって!」

「冗談?だよ。」

「何、冗談の後に?が聞こえたけど、気のせい?ねぇ、翠?」

「あ!あの水着、可愛い!」

「翠さぁーん。」

私は諦めて水着選びをした。うん。翠には気を付けよう。




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