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20.決意





波乱の昼休みが終わり、今はもう放課後だった。

何故だろう。午後の授業を受けた気がしない。そして何故、私の教室にこの人がいるのだろうか。

「竹宮先輩、どうかされたんですか?」

竹宮先輩は執行部の役員ではない。ではないんだけれど、ファンクラブがある。要するに女子に人気がある。ということは、そんな人が教室に来て特定の女子を呼ぶと騒ぎになる。それが今の状況だ。

「竹宮先輩だー!格好いいー!」

「1年の教室って珍しいね。」

「あの女子、誰?」

あー、もうやけになって来たかも。

「温室に行くんだろ?だから迎えに来た。」

やはりですか。

「竹宮先輩まで・・・。何か、すいません。」

「お前、勘違いしていないか?」

「え?」

「俺達は確かに澪にいろいろと言われた。だが、皆、やりたくなければやらない。やりたいからやっている。お前に生徒会に入って欲しくて、俺達のことを知って欲しくてこんなことをしているんだ。」

「ーーっ。」

私は言葉が出なかった。前世でこんなにも人に求められたことがあっただろうか。そして、こんなにもストレートな言葉を貰ったことがあっただろうか。

私は今まで考えていたことがどうでもよくなった。他人がどうこう言うより、私がどうしたいかを優先しよう。それが私の答えだった。

「竹宮先輩。私、生徒会に入りたいです。」


温室に向かっていたけれど、急遽変更して生徒会室に向かっている。

「本当に入ってくれるのか?」

「竹宮先輩、さっきからそればっかりですよ?私はもう決めたんです!」

「いや、それならいいんだが・・・。」

そうこうしていると、生徒会室に着いた。

「入るか?」

「はい。でも、何か声が?」

生徒会室から何故か女子の声が聞こえるのだ。

「あの、生徒会って女子いましたっけ?」

「いや、聖がいる限りそれは有り得ない。」

「ですよね・・・。まさか、お化け?」

「そんな訳あるか。不法侵入者だろう。」

不法侵入者!?生徒会室に不法侵入して何するの?私の考えが分かったのか竹宮先輩が口を開いた。

「まぁ、いろんな考えの奴がいるんだよ。」

そう言って、先輩は扉を勢いよく開けた。


「そこで何をしている。」

女子生徒が2人、肩をビクッとさせた。

「た、竹宮先輩・・・。」

「これは、その。」

「お前達確か、澪のファンクラブの奴らだな。」

何故か2人の顔が輝いた。

「はい!覚えていてくれたんですか!?」

いや、何故嬉しがる!?

「熱狂的で有名だからな。ただの悪目立ちだ。それで?ここで何をしている。」

「え、えっと、別に・・・。」

「そんな訳はないだろう。」

その時、私は見てしまった。女子生徒の手にシャーペンが握られていたのを。

「シャーペン?」

私がそう言うと女子生徒は、手を後ろに隠した。

「え?何?」

「そうか。澪の持ち物目当てか。手に持っているものを見せろ。」

女子生徒達は竹宮先輩の雰囲気に圧倒されたのかおずおずと手の物を見せた。

「澪に報告だな。」

「それだけはやめてください!」

突然、2人が焦り出した。

「お願いします、見逃して下さい。」

「無理だな。これは澪に必ず報告する。そして即刻この場を立ち去れ。」

「でも!」

「二度も同じことを言わせるな。」

竹宮先輩が冷たい声で言い放った。

2人は仕方ないという風にとぼとぼと出ていった最後に私を少し睨んで。


「まだ、誰も来てないみたいだな。」

「はい。あの・・・。」

「なんだ?」

私は、さっきのことを聞きたかった。

「さっきの様なことってよくあるんですか?」

「あー、まぁ、俺達はたまにだが澪の場合はそれなりにあるな。」

「雪宮先輩だけ?」

「あぁ。実際、生徒会で一番モテるのは澪だからな。」

いや、皆さんめちゃくちゃモテてますから。でも、その中で一番っていうことは相当なんだろうな。

「そうなんですか。」

「なんか言いたそうだな。」

「え?」

「言いたいことがあるなら、言った方が楽だぞ。」

そう言われたからか、私は思ったことを言った。

「雪宮先輩、大丈夫かなって思いまして・・・。」

「大丈夫とは?」

「だって、突然自分の物が無くなるんですよ?しかも日常的に。それって怖くないですか?私なら、怖いし辛いし悲しいなって・・・。」

「悲しい?」

「はい。だって、ファンって言ったって同級生の友達や後輩なのに、そんな関わり方をされると悲しいです。」

「そういうことか。考えたこともなかったな。」

「私、雪宮先輩に助けてもらってばっかりなのに何も返せませんね。何かしたい時程、何も出来ない。」

「俺達も同じだ。澪は辛いことや嫌なことは態度に出さないからな。」

「そうなんですか。」


ガタッ


「!?」

「誰だ!?」

「すいません。聞くつもりではなかったのですが、私のことだったので出るに出れなく・・・。」

「ゆ、雪宮先輩!?今の聞いて!?」

「はい。」

は、恥ずかしい。穴があったら入りたいとはこの事だよ!

「藍川さん。」

私は雪宮先輩の方を向いた。

「私のことをそんな風に考えてくれた人は初めてです。ありがとう。」

「そんな!私、雪宮先輩に何も出来てなくて!」

「何もしてくれなくていいんです。貴女が私のことを真剣に考えていてくれたことが嬉しいんですから。」

「でも・・・。」

「そうですね。藍川さんが私に素直な気持ちを事故とはいえ聞かせてくれたお礼に、私も素直な気持ちを伝えましょうか。」

雪宮先輩の素直な気持ち?

「藍川さん。」

「は、はい!?」

その瞬間、雪宮先輩は綺麗に笑って言った。

「私は、貴女に恋をしました。」



あれからすぐに他の生徒会の皆も来た。そして今はお茶会をしている。と言っても、来たのは樹君と華宮兄弟だった。

うん。アールグレイの紅茶もスコーンも美味しい。


「なんか千智、変じゃね?」

「樹もそう思う?」

「海もか?」

「僕もだよ。」

「空もかー。やっぱり変だよな。」

「ボーッとしてるよねー。」

「おまけで、響先輩もボーッとしてるよねー。」

「あとは、澪先輩がやけに笑顔で怖いってことだよな。」

「あれは間違いなく何か良いことあったよね。」

「うんうん。かっこよさと美しさが倍増してるよ。」

「まぁそれより、問題は千智だろ。さっきから紅茶を見て百面相してるぞ。」


はぁ。わかってる。紅茶もスコーンも美味しいとか言って現実逃避してることは。でもね、でも!現実逃避しなきゃやってられないこともある!

これからどうやって雪宮先輩の顔を見ればいいのかわからない。まさか、あんなことを言われるとは・・・。

「千智。千智ー?千智ー!!」

「ふ、ふぁい!?」

思わず変な声になってしまった。

「な、何?樹君。」

「何かあっただろー!さっきから変だし。」

「「変だよー。」」

「そ、そんなことないよっ!」

樹君も海君も空君も鋭い。

「澪先輩と響先輩の様子から見るに、澪先輩に良いことがあって響先輩に動揺することがあったんだろ?」

あ、合ってる・・・。

「そして、千智の動揺の仕方・・・。」

私は唾を飲み込んだ。やばい、これはバレてる。

「差し詰め、澪先輩に告白でもされた?」

!?!?!?

「「それはないでしょー。」」

「まぁ、そうだよな。って、千智!?」

やばい、多分顔が真っ赤だ。

「え、嘘だろ!?図星なのか!?」

「ち、ちちち、違っ!」

否定しようにも顔が真っ赤で説得力がない。

「澪先輩め・・・。」

「呼びましたか?樹君。」

「ゆゆゆ、雪宮先輩!?」

私は動揺が頂点になった。

「はい、藍川さん。」

そんな優しい笑顔を向けないで下さい!

「ちょ、澪先輩。千智に告白したってマジですか?」

「澪先輩、本当ー?」

「だから響先輩が抜け殻みたいなのー?」

「誰が抜け殻だ誰が。」

そんなにズバズバと聞くの!?それなのに雪宮先輩は涼しげに答えた。

「はい。私が藍川さんに告白したのは事実ですよ?」

な、何でそんなにさらっと言えるんですか!?

「まぁ、長期戦になりそうですけどね。」

そう言って、雪宮先輩はやんわりと笑った。

「今の話は本当か。」

「司、随分遅かったですね。」

笑顔の雪宮先輩とは対照的に不満げな司先輩。何かクラスであったのかな。

「もう一度言う。さっきの告白の話は事実なのか?」

「えぇ。ですが、返事は貰ってませんよ?これからが大切ですので。」

「そうか。」

「はい。」

何故だろう。空気が重い気がする。

「というわけで!」

雪宮先輩が突然、明るく言った。

「千智さん、これからはこれまで以上ですからね。」

これまで以上?何が?私がきょとんとしていると、雪宮先輩が笑った。

「これだから私は、貴女が好きなんですよ。」

「えっ!?」

「なっ!!澪!」

「「うわー。」」

「澪先輩、それはないっすよ。しかも何気に名前で呼んでますし・・・。」

「気付きました?」

雪宮先輩は茶目っ気たっぷりに微笑んだ。


その笑顔と裏腹に私は、この先ここでやっていけるか心配になってしまった。 そうしてそのままお茶会を楽しんで寮に帰った時、私は気付いた。

「そう言えば私、生徒会に入りたいってことまだ伝えてない。」

そうして、また1日過ぎていった。




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