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15.霞草



「んっ・・・。」

よく寝たぁー。そう思い目を開くとそこには、目の前に翠の顔。

「おはよう、千智。」

「え、えぇー!?」

な、何で翠が私の部屋に!?

「え、えっと?何でここに?」

「何でって、ルームメイトでしょ?もしかして寝ぼけてるー?」

そ、そうだった・・・。確か、ここは寮で翠と私は同室だった。

「大丈夫、思い出した。」

「寝ぼけてる千智も可愛いー。」

そう言って抱きついてくる。うん、そういうことをしちゃう翠が可愛いよ。

「でもね?そろそろ、朝ご飯を食べに行った方がいいかなー?」

時計を見ると7時15分。確かにそろそろ食べた方がいい。

「き、着替えなきゃ!」

そうして私はこれまでの最高記録で着替えた。


「うわー、人多いねー。」

やはり、時間が時間だからか、人は多かった。

「席あるかな?」

私と翠はそれぞれ食べるものを取ったものの立ち尽くしていた。

「おーい!千智ー!こっち座れよー!」

「え?」

声のした方を見ると、樹君と海君、空君、そして、皐先輩がいた。

「翠、あそこ空いてるって。」

「ふぇっ!?生徒会の方々と朝から会えるだけでなく、食事も!?もう、死ねるわ。」

いや、死んじゃ駄目だから。


「おはよう、樹君。呼んでくれてありがとう。助かったー。」

「あぁ。困ってるぽかったしなー。」

「海君、空君もおはようー。」

「千智、おはよう。」

「はよー!」

「千智、おはよ。」

うっ。昨日の今日でこの笑顔は眩しすぎる。

「お、おはようございます、皐先輩。」

「うん。」

うわぁー。なにこれ。すっごい恥ずかしい。

「あれ?千智、先輩のこと名前呼びだっけ?」

「へっ!?あ、うん!昨日から!」

「ふぅん?」

流石、樹君。かなり鋭い。

「あ!紹介するね。この子はルームメイトで同じクラスの上田翠ちゃんです!」

「は、初めまして。上田翠です。よろしくお願いします。」

翠、緊張してるー。

「あ、そう言えばね、翠の言ってた取材の件、会長が許してくれて、樹君と海君、空君が受けることになったよー。」

「えぇ!?本当に!?ありがとー!」

よかったー。喜んでくれた。

「あ、3人ともよろしくお願いします!日程はまた連絡します!」

「よろしくー。」

「「 了解ー。」」


こうして楽しい食事の時間も終わり、それぞれクラスに向かった。

「じゃあ、俺らはここでー。」

「ばいばーい。」

「海君、空君、またねー。」

「放課後空けとけよー。」

「「はいはーい。」」

そうして2人は1-Bへ向かって行った。

「あれ?皐先輩は確かこの階じゃあないですよね?」

「ん?送っただけ。」

「わ、わざわざありがとうございました。」

「ん。じゃあ、俺も行く。樹、放課後。」

「はーい。」

そうして皐先輩は去っていった。やっぱり心臓に悪いよ。

「翠?どうかした?顔が赤いよ?」

「えっ!?あ、その・・・。雨宮先輩って凄いなと思って・・・。」

凄いと赤くなるのかなぁ?まぁ、人それぞれか。

「千智達入んねーの?」

「あ、入るー!翠、入ろー。」

「う、うん!」


教室に入ったら突然、クラスの女子に囲まれた。

何故、こんなことに・・・。

「藍川さん・・・。」

こ、これは乙女ゲームでよくあるイジメの始まり的なやつ!?私、水とかかけられちゃう!?嫌がらせされちゃうの!?

「昨日の執行部会、どんなんだったか教えて!」

やっぱり、嫌がらせの始まり・・・。

「へっ!?執行部会?」

「もう、昨日の夜からずっと気になってて!やっぱり、豪華なメンバーだし、楽しかったー?」

なんだ、心配して損した感じ。私、自意識過剰なのかも。気を付けなくちゃ。

「う、うん!皆さんいい人で、紅茶も美味しくてすっごく楽しかった!」

「いいなぁー!私も澪先輩とお茶したーい!」

「えー!私はやっぱり、司先輩かなー。」

「でもでも、皐先輩もカッコいいよー!」

それぞれ、きっとファンクラブにも入っているんだろうな。

「えー、でも私、響先輩とか聖先輩に罵られたいー!」

な、なんと・・・。そんな物好(ものず)、個性的な人もいるなんて・・・。

「でも、海君、空君とのお茶は楽しそうー!」

「楽しさなら、樹君じゃないー?」

あー、確かに楽しそうかも。

「でも、リードしてもらうなら生徒会じゃないけど、及川先生じゃないー?」

「あと、あのミステリアスなのがいいよねー。」

ミステリアス・・・。ものは言い様とは正にこの事なんて絶対に言えない。

「でも、日向先生もいろいろ考えてくれそうー!」

あー、確かに。なんか日向先生は細かい所まで気遣ってくれそう。

「ねぇ、藍川さんは誰のファンなのー?」

えっ。ふぁ、ふぁん?

「い、いや、私は特に・・・。」

「えー。あっ!もしかして、樹君?だって仲良いもんねー。」

「あー、やっぱり?なんかそんな感じするもんねー。」

ち、ちょっと待って。いつからそんなことになってたの!?

「千智!私、そんなこと聞いてないよ!?そうだったの!?」

「えぇ!?違うよ!」

翠までそんなことを・・・。

「なーにが、違うわけ?」

「へ?」

「だから、何の話?」

「い、樹君!?こ、これは、その・・・。」

「月宮君!今ね、月宮君と藍川さんがお似合いだって話をしててね、藍川さんは生徒会の誰のファンなのかなー?って思って聞いてたの!」

「へぇー。俺と千智がねー?それで?千智は誰のファンなの?もちろん、俺だろ?」

え、ちょっと、何で火に油を注いでるの。

「やっぱり、そうなんだー。」

「えー。私、月宮君いいなーって思ってたのにー。」

ちょっと待って!まだ名前も覚えていないクラスメイト達!

「いや、だから私は樹君のファンじゃなくて!」

「じゃあ、誰のファン?」

そう言ったのは一番気の強そうな女子。だから、私は誰のファンでもないんだけどなー。

私が言い淀んでいると教室のドアが開いた。

「なんか、朝から騒がしいなー。どうかしたのか?」

日向先生!なんともい言えないタイミング!

悩んでる時に目に入ったからだろうか。だから私は咄嗟に言ってしまった。

「日向先生。」

「へぇ。藍川さんは、日向先生なんだ。」

さっきの気の強そうな女子がそう言った。

「ん?何の話だ?」

「あ、日向先生ー。今、藍川さんが生徒会の誰のファンかって話をしてたんですよ!」

「そうしたら誰って答えたと思います?」

「澪とかその辺りじゃないのか?」

「それがですねー、日向先生って答えたんですよ!」

「ふーん。そうか。って!?えっ、俺!?」

「悠先生、大丈夫です。社交辞令です。てか、がちで照れるの止めて下さい。」

樹君、そんなに言わなくても。

「あぁ。いや、そうだよな。うん、そうだな。」

すると、チャイムが鳴った。

「と、取り合えず、席につけ。」

何で、日向先生はあんなに焦っているんだろう?

「千智って、案外罪作りね。」

「え!?それってどういう?」

「まぁ、そんな千智も好きだけどねー。」

突然の告白を受けてしまった!

「私も翠のこと好きだよー!」

「何で突然告白してんだよ。」

「あ、樹君。いや、翠に好きって言われたからお返しに・・・。」

「ふぅん?千智、好きだよ?」

え?

「え、えと、それはどういう・・・。」

やばい、多分、顔が真っ赤だ。

「もちろん、友達としての好きだよ。」

「そ、そうだよね!私も樹君のこと、友達として好きだよ?」

「何?期待した?」

「ま、まさか!!」

恥ずかし過ぎる。勘違いしたとか絶対に言えない。

「俺は期待したけどな。」

「え?ごめん、何?聞こえなかった。」

「いや、何でもない。」

「そっか。」

樹君、なんか複雑な顔をしている?

「ホームルーム始めるぞー。」

取り合えず私達は、席に着いた。


「という訳で、今日の授業は午前中で終了して午後からは明日の新入生歓迎会の準備のため部活とかに行っていいぞ。」

へー。そうなんだ。それは結構嬉しい。

「ちなみに、明日の新入生歓迎会のレクで好成績の者は生徒会より、"生徒会権限で叶えられる望みであれば叶えて貰える"という特権が与えられるから、まぁ、頑張れよー。」

それを聞いた我がクラスの皆は突然やる気を出しだした。

「ねぇねぇ、千智。明日さ、一緒にやれる競技ならやろうよっ!」

「えっ!いいの!?もちろんだよー。」

「やったぁ。」

ふふふ、翠、可愛いー。

「藍川、ちょっといいか?」

声をした方を見ると、日向先生だった。いつの間にかホームルームは終わっていたらしい。

「あ、はい!ごめん、翠。ちょっと行ってくる!」

「ごゆっくりー。」


「どうされたんですか?日向先生。」

「あー、いや、その。」

何だろう?何か、歯切れが悪い?

「さっきの事なんだが。」

さっきの?あぁ。

「ファンのことですか?」

「それなんだが・・・。俺は期待しても良いのか?」

・・・。え?何の話?

「えっと?それはどういう?」

「あ、いや、いい。今のは忘れてくれ。」

あ、もしかしてさっきの私の発言で気分を害したとか?ファンって言い方が気に入らなかったとか?

「日向先生!私、日向先生のこと好きですよ!」

「あ、藍川!こんなところで!?」

「だって、先生は細かい所まで生徒のことを見ててくれるし、まだ授業は数回しか受けことないけど、解りやすいですし!だから、私は先生のこと好きですよ!」

先生が唖然としている。

「はぁーーー。何だ、そっちかよ。」

え、これはどういう反応?私、何か悪いことを?

「あ、あの、先生。」

「ちょ、タイム。今、多分、生徒に見せれる顔してないからこっち見るなよ。」

生徒に見せれない顔・・・。どんな顔か気になる・・・。

「あ、おい、こっち見るなって。」

「人間、見るなって言われたら見たくなるんですよ。」

「ったく、誰のせいでこんな事に・・・。煽ったのはお前だからな。」

煽る?何を?

「千智、覚悟しろよ?」

う、うわぁーー。み、耳が、耳がぁー!

耳の側でそんなハスキーな声を囁かれたら、本当に死ぬから!さっきまで、何か、悶々としていたのに何で今は清々しそうなの!?

「じゃあ、また後でなー。」

そうして颯爽と去って行く・・・。一体、何がしたかったんだろ。


授業中になっても日向先生の言葉が頭の中でぐるぐると回り、全く集中出来なかった。

「千智。千智!ねぇ、千智ってば!」

「えっ!!」

びっくりした。何だ、翠か。

「どうしたの?」

「どうしたのって・・・。もう授業、終わったよ?」

本当だ。気付かなかったけど、もう皆、下校するか部活に行き始めている。

「千智は今日は帰るの?」

「ううん、温室に行こうと思って。翠は?」

「私は、生徒会役員へのインタビューのことを部長と打ち合わせするんだー。」

「そっか!頑張ってね、翠!」

「うん、千智も!じゃあ、また夜にね!」

「うん、ばいばーい。」

そうして翠は教室を出ていった。

「あ、私も行かなきゃ。」

大急ぎで荷物をまとめて私も教室を後にした。


「よし、水やり終了ー。」

自分で言うのも何だけど、結構いい感じの温室だと思う。ガラス張りだから、外から見える所にはハーブ類を避けてお花にしたし、噴水は掃除したしもう完璧だと思う。

「あ、霞草を少し貰って帰ろう。」

霞草は私の一番好きな花だ。決して目立たないけど、花束に霞草があるだけで一段と美しくなる。私はそこに魅せられた。霞草が植えられている所に行くと、そこからグラウンドが見えた。

グラウンドではサッカー部がサッカーをしていた。

「あれは確か、同じクラスの沖本君だっけ。それであれが・・・。」

嘘!あれはどう見ても雪宮先輩じゃないか。

「何で先輩が・・・。」

取り合えず行ってみよう。私は霞草の花を持っていたのも忘れてグラウンドに向かった。


「本当に雪宮先輩がサッカーをしてた。って、あれは会長!?」

なんと、学園の2トップがサッカーをしているじゃないか。いや、サッカーをするのはいいんだけどね?でもさ、明日は一応生徒会行事があるじゃないか。準備とかは大丈夫なんだろうか?

「それにしても・・・。」

あの2人、サッカー上手すぎでしょ。もう、ハイスペック過ぎて何も言えない。あの人達に出来ないことってあるんだろうか。

「お前も見ていたのか。」

あ、竹宮先輩。

「お前もってことは、竹宮先輩も明日の準備を心配して来られたんですか?」

「あぁ。流石にそろそろ切り上げてもらわなければまずい。」

「やっぱりそうですよねー。ですが、竹宮先輩?勝手に私の心を読もうとしないでくれますか?」

「流石だな、いつ俺が読心術が使えると気付いた?」

「最初に会った時です。竹宮先輩が私に力を使おうとした時、あの時、何か心がざわついたんです。だから、もしかして、と。そして今、確信になりました。でも、先輩の力は何度試しても私には通用しなかったんですよね?」

「それもわかっていたか。まぁ、その通りだ。だが、安心しろよ。もうお前の心は覗かない。そもそもお前が何を考えてるかなんて、大抵のやつはわかるだろうしな。」

「それは、けなしてます?」

「俺がお前を手放しに褒めたことがあったか?」

知り合って2日目だけど、手放しに褒められたことはない。

「大丈夫です。期待していませんので。」

「可愛くない。」

「可愛くなくて結構です。そろそろ、雪宮先輩達を呼んだらどうですか?」

「それは大丈夫だ。お前に気付いてダッシュで2人共、こっちに向かってきている。」

グラウンドに目を戻すと確かに走ってこっちに来ている。

「それで、何でお前は霞草なんて持ってるんだ?」

忘れてた。持ってきていたんだ。

「しかも、ミニブーケくらいの量があるじゃないか。」

「実は、生徒会室に持っていこうかと思ってまして・・・。まぁ、でもそれはまた今度にします。これは竹宮先輩に差し上げます。」

「何故?俺は欲しいとも言っていないし、むしろ、これを貰って迷惑とか考えなかったのか?」

「何となくですけど、竹宮先輩は霞草が好きな気がして。迷惑なら持ち帰りますが?」

竹宮先輩は驚いた顔をして少し笑った。

「いや、貰おう。」

そして、私から霞草をかっさらっていった。

「おい、1つだけ聞かせろ。お前は読心術が使えるのか?」

思ってもいない言葉に私は驚いた。

「いいえ!それは全くです。植物を育てることしか出来ません。」

「そうか。」

「何故、そんなことを?」

少し間をあけて竹宮先輩は言った。

「霞草は俺の一番好きな花だ。」

そう言われたから私は笑顔で答えた。

「それは良かったです。では、また明日。」

「あぁ。また。」

そうして私は寮に戻った。


「あれ、藍川さんは?」

「千智はどこだ?」

やっと俺と藍川のいた場所に辿り着いた司と澪が言った。

「もう帰ったが?」

「そうか、帰ったのか。」

「どうせなら、喋りたかったですね。」

「ところで、響。その花は?」

「藍川からだ。」

「響君にですか?」

「あぁ。」

俺と花が合わないのであろう。司が何とも言えない表情をしている。

「響君には花は似合いませんが、その花を持っている響君は楽しそうな表情をしていますね。」

「あぁ。俺もそう思う。表情が柔らかい。」

「奇しくも、自分でもそう思う。」

そうして俺は霞草を見た。


霞草の花言葉は"清らかな心"。

お前がそれを知っているかどうかはわからないが、お前の方がこの花は似合う。

俺はもう一度霞草を見て、生徒会室への道を急いだ。



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