14.七不思議
「そして、もう1つお前に話さなくてはならないことがある。それについては澪が話してくれる。」
私は雪宮先輩を見た。
「はい。それでは、藍川さんは昨日、校門で見た男性を覚えていらっしゃいますか?」
校門で見た男性?
「あ!下見って言ってた人ですか?」
「そう。その人です。恐らくその人物の言う下見というのは、この学園の謎に関わっていると思われます。」
この学園の謎に?
「なぜ、外部者が関わってくるのですか?」
「この学園の七不思議を藍川さんは聞いたことがありませんか?」
七不思議ってあれだよね?怪談みたいなやつだよね?
「恐らく、お前が考えてる様なものじゃないと思うぞ?」
「で、ですよね。」
あ!また読まれた!絶対に会長は読心術の能力も持っていると思う。
「まぁ、俺への文句は置いといて。澪、続けてくれ。」
「えぇ。それで、七不思議と言うのはですね、この学園の開校当初からあるんですが・・・。わかっているものとそうでないものがあるんですよ。七不思議の書いてある紙が所々劣化していまして。なので取り合えず、確信のあるものを1つ教えますね。この学園の何処かに、宝石が眠っているというものです。」
「え!?」
ほ、宝石!?話が飛びすぎて理解が追い付かない。
「何でそんなものが学園に!?」
「何でも、初代理事長は宝石を集めるのが趣味だったらしいぜー?なんでも特に珍しいものは誰にもわからない部屋で保管したとかなんとか。その保管室がこの学園の何処かに存在するっていうのが1つ目の七不思議。」
樹君、最早これは七不思議というものの枠に入るのでしょうか・・・。
「それで藍川さん。この事と外部者との関わりですが、今の話で宝石の価値は何となくわかりましたよね?」
「はい。価値があるものだということですね?つまり、外部者はそれらを狙っていると?」
「はい。理事長の一族と宝石を狙っている一族は昔、何かしらの因縁があり、今日まで仲が悪いそうなんです。」
「あの、宝石を狙っている一族ってどういうことですか?」
「昔、この辺り一帯を治めていたのが理事長の一族とその宝石を狙っている一族だったらしいんです。
幾度となく争いが起こり、結局は理事長の一族が勝利したそうなんですが、それが元で今の状況にあるらしく・・・。まぁ、正直、今となっては何が原因かなんて分からないんですけどね。ですが、"色"を持つ人間はこの学園の謎を解き、守ることが役目ですから、私達はこうやって集っている訳なんです。」
何というか、うん。この乙女ゲーム、凄いね。私が前世で生きていたらプレイしてみたかったよ。
「「まぁ、でも気楽に考えていーんだよねー。だって、期限とかないし、普通に生活して何かあれば動くぐらいで。その方が千智だって不安がないでしょ?」」
す、凄い。こんな長い言葉を息ぴったりで言えるなんて・・・。
「そうですね。そのくらいの心構えでいいと思いますよ?」
「まぁ、ある程度の構えは必要だと思うがな。」
やはり、竹宮先輩の視線は怖い。こんなことは口が裂けても言えないけど。
「でも、藍川ちゃんには温室のことはこのまま任せるからねー。」
「博、それはお前がただ単に楽をしたいからじゃあ・・・。」
「悠、何か言った?」
「いや。別に。」
ふふふ。なんか、重い?話をしてたのにいつの間にか楽しくなってる。何かいいなー、こういうの。
「藍川千智。これからお前は俺らの仲間だ。よろしく頼むな?」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
そうして私は学園の謎を解くことになった。でも、こんなに綺麗な人達の中にいて大丈夫だろうか。女としての自信を失いかけたことは秘密にしておこう。
「そう言えば、竹宮先輩って生徒会ではないんですよね?それならどういう役職なんですか?」
「おー。藍川ちゃん、良いとこつくねー。確かに響君と"俺"は普通の生徒会員じゃないんだよね。あとは響君が話してくれるよー。」
「博先生、丸投げですか。」
溜め息をついてから、竹宮先輩は話し出した。
「俺と博先生は生徒会監査なんだ。」
「生徒会監査?」
「あぁ。だが、監査と言っても、何かをしなければならない訳ではない。不測の事態が起きた時に陰で動ける人間が必要だからな。何かが起きた時に俺達は動くということだ。まぁ、俺は生徒会とは別の風紀委員長をしているが、流石に風紀の説明は要らないだろう?」
うっ。何だろう、この怒られてはいないのに胸をえぐられる様な感覚は・・・。
「は、はい。ご説明ありがとうございました。」
「あぁ。藍川、風紀の検査には引っ掛かるなよ?」
竹宮先輩がニヤリと笑った。やばい、これは粗を探してでも私を検査で引っ掛からす気だ。
「響君の検査ってすっごい厳しいんだよねー。藍川ちゃん、頑張ってね?」
「が、頑張ります。」
竹宮先輩ってやっぱりサドだったんだね・・・。これからが本当に怖いよ・・・。
「お茶会しないの?」
雨宮先輩がノアールと戯れながら言った。
「そうですねぇ。用意もありますからしましょうか。」
「やった。流石、澪先輩。」
「海君、空君、準備を頼めますか?」
「「はーい。」」
「あ。私もお手伝いします!」
そう言って私は海君と空君のあとを追った。
うわぁ。やっぱり立派なキッチンだー。器具もいい感じに揃ってるー!
「目、輝かせすぎでしょー。」
「そんなことないよー?海君。」
「え!?」
ん?どうしたんだろう?
「どうかした?」
「わかるの?俺が海だって。」
「え?うん。」
「何で?何でわかるんだ?」
「え?だって、目の色を見たらわかるよ。」
「目?」
空君が話に入ってきた。
「うーん。上手く言えないけど、2人は似てるんだけど微かに目の色が違うから。」
「「そっか。」」
そうして2人は笑顔になった。
「あ、じゃあ、これ運ぶねー。」
「「うん、ありがとー。」」
私はティーセットを持って、みんなの所に行った。
「海。僕さ、千智が仲間でよかったって思う。」
「空、僕もそう思ってたとこだよ。」
「そっか。」
「うん。」
「海ー、空ー、何やってんだよー。早く来いよー!」
「行こっか。」
「うん。」
「「はーい。今、行くよー!」」
2人の足音はとても軽かった。
「お前、手付きが慣れているな。」
紅茶を淹れている私を見て、会長が言った。
「そうですか?」
そんなことはないと思うけど・・・。前世でも紅茶が好きでよく飲んでいたからかな?
「はーい、おまちどうさまー。今日のお茶請けは駅前のシフォンケーキだよー。」
「駅前・・・。」
意外にも反応したのは雨宮先輩だった。
「お好きなんですか?」
「皐は甘いもの全般が好きなんだ。俺は甘過ぎるものはダメだが。」
そう言って冬宮先輩は、シフォンケーキを雨宮先輩の方に回している。
「それで、司。これから俺らはどうするんだ?」
竹宮先輩が真面目な顔で言った。
「取り合えずは、今まで通りだ。そう言えば、新入生歓迎会の催しがあっただろ。明後日だったか?まずはそれを優先させる。確か今年の催しは・・・。」
「宝探しですよね?」
「あぁ。そして、今回の賞品は前々からリクエストの多かった"生徒会に出来ることなら何でも1つ願いを叶える"だったか?」
うわぁ。なにそれ。要するに、基本、どんな願いも叶うってことだよね?
「あー。めんどいよなー。クラスの女子が話してたが、役員全員と写真撮るとか言ってたぞ。」
「それを嫌がるのは響と聖だけだろ?」
「皐と会長だって得意じゃないだろ。」
「でも、それを言うと、澪先輩が一番じゃないっすか?」
樹君の一言で生徒会室が静かになった。
「私は時と場所くらいは考えますよ?」
笑顔の雪宮先輩を除いて。く、空気が変になってしまった・・・。どうにかしなければ・・・。
「あ、あの、それって他にはどんな願い事があるんですか?」
我ながら頑張った。
「過去には食堂の無料券1年分とかありましたよ?」
「あとは、遅刻免除券とか。」
「あー、でも、あれは大変だったな。成績を上げろだの提出物免除だの。だから、今回の賞品で落ち着いた訳だが。」
「まぁ、皆さんが楽しいのは良いことですが、迷惑ですよね。」
確かに大変なんだろうな。ファンクラブもあるだろうし。これは、翠のお願いは言いにくいな。私から断っておこうかな・・・。
「どうした?難しい顔だな。」
うわ。そんな顔をしていたかな。
「じ、実は、新聞部の友人に生徒会役員特集の新聞を書きたいと言われてまして・・・。」
「新聞部か・・・。あそこは情報通だから、恩を売るのも良いな。樹、空、海、お前ら取材を受けてこい。」
「「「えぇー。」」」
「異論はあるか?」
「「「いえ、ないです。」」」
絶対王政に見えるのは私だけかな?
「これでいいだろ。」
「あ、はい!ありがとうございます!樹君、空君、海君、ありがとう!」
これで翠に良い報告が出来る!これから出来る新聞が今から待ち遠しくなった。
「そろそろお開きですかねぇ?」
時計を見ると、午後5時。確かにもういい時間だ。
「あの、今日はいろいろお話し頂いてありがとうございました!そして、これからよろしくお願いします!」
「あぁ。頼りにしてる。」
そう言ってみんな笑ってくれた。
「千智はもう帰った方がいいね。後片付けは良いからさ。」
「え!樹君、そんな訳には・・・。」
「遅くなったらいくら寮とはいえ危ないですからね。皐君、藍川さんを送っていってくれませんか?」
「いや、それは悪いですよ!」
「皐はそのまま帰っていいからなー。」
「了解。行こ。」
「え、いや、でも!」
「藍川さん、好意は素直に甘えるんですよね。」
うぅ。
「はい。でも、今度はちゃんと全て片付けて帰りますから!それでは皆さん、ありがとうございました!失礼します!」
そうして私は雨宮先輩と一緒に帰った。
いろんな人の視線が気になったけど、寮のことが気になってそれどころじゃなかった。
「わざわざありがとうございました。」
「大丈夫。」
「それでは、雨宮先輩、また明日です。」
私はそう言って寮に入ろうとした。
「千智。」
「え?」
今、名前で呼ばれた?今まで藍川だったよね?
「名前、皐。雨宮じゃなくてそっちで呼んで。」
こ、これは。心臓に悪い。夕日で先輩の顔がよけいに綺麗に見えて・・・。多分、私の顔は夕日じゃあ誤魔化せないくらい真っ赤だと思う。だから、私は小さな声でしか言えなかった。
「は・・い。皐先輩・・・。」
すると先輩はこれまでで一番綺麗に微笑んでくれた。これはやばい、もう心臓が持たない。
「本当にありがとうございました!失礼します!」
最後は逃げる様に帰ってしまった。だって、仕方ないじゃないか。私にはハードルが高すぎたんだもん。
そうして私は新しい部屋に着いた。
「ただいまー。」
部屋は真っ暗だった。翠はまだ帰ってないみたい。
先にお風呂に入ろう。
「ふぅ。」
お風呂に入ったからだろうか。すぐに眠くなってしまった。翠を待っていたいけど、もう限界だった。
「明日でいっか。」
そうして私の長い1日は終わった。




