12.役持ち
第一生徒会室に着いた。私は今、その扉の前で招待状を持ち、立ち尽くしている。
「ふぅ・・・。」
やっぱり、緊張するなー。だって、何回見てもこの扉は神々し過ぎる。こんなに綺麗に彫刻する必要があったのか・・・。立ち止まっていてもしょうがない。私は、この"世界"で生きると決めた。だから、前に進まなきゃいけない。
一呼吸置いて、私はノックをした。
「失礼します。」
ここからこの世界での私の1歩が始まる。
扉を開いた先はもう、壮観だった。何処を見ても、綺麗なお顔しかない。私、ここにいて大丈夫かな。
「ようこそ、藍川千智さん。お待ちしてました。」
雪宮先輩、いつもながら、その笑顔は反則です。
「千智、遅いぜー。まぁ、まだ来てないやつもいるけどなー。」
そう言うのは、ソファでだれている樹君。
「樹、もっとちゃんと座れ。またはいっそうのこと皐の様に寝ろ。」
会長が言った通り、雨宮先輩は足をくんで寝ている。足が長くてお顔が小さいので絵になります。
「藍川ちゃん、やほー。昨日ぶりー。」
そう言って、及川先生が手招きをしている。
「失礼します・・・。」
私は一言言って、及川先生達が座っているソファまで行った。
「まぁ、座って座ってー。」
と言って、及川先生は自分の隣をトントンとしている。座ろうとした瞬間、誰かに手を引っぱられてそのままバランスを失い、別の所に座ってしまった。
「及川先生の隣は危ないから、ここ。」
手を引っぱったのは雨宮先輩。起きてたんだ。
「皐君、それはどういう意味なのかな?」
「そのまま。」
「まぁ、別にいいけど。藍川ちゃん、今度は俺の隣ね。」
なんだろう、及川先生って発言は何かチャラいのにそんなにチャラさを感じない。不思議だ。
「そろそろ始める。取り敢えずは、自己紹介だ。藍川、何人か知らないやつが居るだろう。まずは・・・。」
そう言って会長は目線を私の斜め前に座っている人に移した。
「3-Dの竹宮響だ。俺は生徒会ではないが、執行部会には顔を出す。覚えておいてくれ。まぁ、よろしく。」
「藍川千智です。よろしくお願いします!」
竹宮先輩か。生徒会ではないけど、執行部会には出る・・・。不思議な感じだけど、きっと何か理由があるんだろうな。でも、何だろう。いい人っぽいけど、何かこう目線が怖いというか、サディストな雰囲気を醸し出しているというか・・・。今は取り合えず、気付かなかったことにしよう。
「次は、聖はいないから、海、空!」
「はいはーい。待ってねー。」
そう言って会長はキッチンの様な所を見た。私もそっちを向くと、同じ様な人が2人いた。
双子・・・。見分けるのが大変そうである。身長に差はないし顔も体型もほとんど同じ。これは先が思いやられる。
「紅茶をどうぞー。」
そう言って双子の内の一人が差し出してきた。
「ありがとうございます。」
とてもいい香りの紅茶だ。
「僕は華宮海。双子の兄。よろしく。」
「で、僕が華宮空。まぁ、見分けにくいけど、同じ学年だし仲良くしようね。」
「はい。よろしくお願いします。」
「あと、それもやめよう!」
突然言われてなんのことかわからなかった。
「敬語は同学年相手は禁止ー。」
「樹には敬語じゃないんだから僕たちにもね。」
あぁ。そういうことか。
「うん、わかった。海君、空君、よろしくね。」
そう言って私は一口紅茶を飲んだ。
「あ。」
「ん?どうかしたの?」
海君が私の声に反応した。
「この紅茶・・・。アールグレイ?」
「そうだよ。紅茶好きなの?」
今度は空君。
「うん。紅茶もコーヒーも飲むけど、紅茶はアールグレイが一番好き。」
紅茶を飲んだからか少し落ち着いた。
「悪い!遅れた!クラスが少し長引いて・・・。」
入ってきたのは日向先生だった。
「日向先生!」
あ。そっか。日向先生は生徒会顧問だった。
「藍川。事情は博から聞いてるからな。説明はいいぞ。あと、悪いな。恐らく俺らはこれからお前を巻き込む。まだ、何も聞かされていないんだろう?不安に思うのは仕方ないよな。まぁ、何かあったら話せよ?一応、担任なんだしな。」
そう言って日向先生は微笑みながら頭を撫でてくれた。何て良い先生なんだろう。今の一瞬で好感度がいっきに上がったじゃないか。
「悠、いつまで撫でてんのー。それ、職員的にアウトでしょー。むしろ、藍川ちゃんが汚れるから手を早くどけなよ。」
「悠先生、抜け駆けー。俺も千智に触りたいー。」
「「樹、悠先生、へんたーい。」」
おぉ!声が揃った!流石双子。
「揃いも揃って、俺を変態教師の様に言うな!」
悠先生、顔が赤い。大丈夫かな?でも、頭を撫でられるのって結構好きなんだよねー。気持ちいいって言うか、安心出来るって言うか。
「で、いつまで藍川さんに触れているのですか。」
笑顔の雪宮先輩の一言でその場は集結した。でも、笑顔が黒く見えたのは気のせいかな?うん。気のせいにしよう。黙っていた会長が言葉を発した。
「あとは、聖だけか?」
「そうっすねー。でも、聖先輩は来ますかねー。」
「確かにね。聖君は女性が苦手ですしね。」
ん?女性が苦手?
「あのぉ。もしかしてその人って翡翠色の目をしている人ですか?」
「あれ?千智って聖先輩に会ったことがあったっけ?」
やっぱり。あの人か。
「さ、さっき温室で・・・。話したというか、その・・・。」
流石に口論した、なんて言えない。私が説明に困っているとドアが開く音がした。
「すいません、遅れました。」
あ。さっきの人。でも、いくらかさっきよりは優しい雰囲気。
「聖、遅い。」
「すいません、温室で少しサボってました。」
サボってたことを堂々と言うの!?この人、凄いわ。
「いや、今日来たことが進歩だ。」
えぇ!それはどういうこと!?私が驚いている間に話は進んでいく。
「一応、藍川。こいつが冬宮聖。簡単に言うと、重度の女嫌いだ。今、お前と対峙していることも奇跡に等しい。」
そ、そんなに!?それって日常生活大丈夫なの?いや、大丈夫じゃないよね?
「聖、どういう風の吹きまわし?」
雨宮先輩が声をかけた。起きていたのか。
「こいつには効かなかった。それだけだ。」
「そっか。良かった?」
「うるさい。あと、藍川、さっきは悪かった。」
「え?あ、はい。こちらこそすみません。」
そうして冬宮先輩はそっぽを向いてしまった。この2人、仲が良いのかな?
私は全員が揃った所で気になっていたことを聞いてみた。
「あの。生徒会の皆さんは何をしていらっしゃるんですか?生徒会活動ではなく、もう1つの方をお答え頂ければと思うんですが。そして、私が関わっている事柄について教えて下さい。」
そう。きっと私は大きく関わっている。これから起こることに。
「藍川ちゃんはなかなか鋭いよね。まぁ、だから気に入ったんだけど。」
及川先生だけがニコニコしている。他の皆は驚いている。
「お前はどこまで知っているんだろうか。」
竹宮先輩の目が、私を妖しく捕らえた。
「どうせこれから全てを話すんだ。響、力は使うな。どうせ使えん。」
「それもそうか。」
「長くなるが、聞いてくれ。大切なことなんだ。」
「はい。」
そうして話が始まった。




