9.謎
「ただ今、帰りました。」
会長席に座り、仕事をしていた司が顔を上げた。
「案外、早かったな。まだかかると思っていた。」
「嫌味は後にして下さい。」
「澪先輩、言うねー。」
「樹君は茶化さないで、皐君は起きて下さい。」
「んー。」
「それで、何かあったのか?澪にしては何か焦っている気がするんだが。」
そんなに焦っている様に見えたのだろうか。私は一呼吸おいて話始めた。
「また何かが動き出したかもしれません。」
「あの件についてか?」
「あの件って、まさか。」
樹君が反応した。
「はい。恐らくそうかと。」
その時、皐君が言葉を発した。
「澪先輩、確信は?」
その言葉を最後に部屋が静かになった。私の言葉を待つかの様に。
「確信はあります。けれど、証拠となる物はありません。」
「そう。」
そうしてまた、部屋が静かになった。
少しして何かを考えていた司が顔を上げた。
「証拠はなくても確信がある。なら、俺は澪を信じて策を練ろうと思う。疑わしいことがあるのに何もしないのはおかしな話だしな。それに俺の耳にもいくつか情報は入っている。樹、皐はどう考える?」
「俺は警戒しとくに越したことはないと思いますよー。」
「同じく。」
「わかった。ならば、明日、執行部会を開く。予定を空けておけ。そして、あいつを呼ぶ。藍川千智。あいつは恐らく俺らの仲間であの件のキーだ。」
「それは・・・。」
私が戸惑っている間に話が飛躍する。
「へー。千智は仲間かー。どんなことが出来るんだろーなー。」
「猫と戯れること。」
「いや、それは千智もだけど皐先輩もっすから。」
「そう?」
このままだと、話が当分続くのでしょう。
「すいません。もう少し私の話を聞いてくれますか。」
「まだ何かあるのか?」
「えぇ。もう1つ懸案事項があるんです。それは、あの件に関わっているかもしれない人に藍川さんが気に入られたかもしれないと言うことです。」
部屋の空気が変わった気がする。
「何・・・。面識があるやつなのか?」
「いえ、先程校門で会った程度ですが、いくつか言葉を交わしました。その際、今日は下見に来ただけだと言ってました。」
そう、下見とだけ。
「下見・・・。」
「うわー。その人本気っぽいっすねー。」
「澪先輩、それ確証って言う。」
「えっ。そうですか?」
「そんなことはどうでもいい。今、大切なのはあの件に関わるやつのことだ。取り合えず、樹。役持ち全員に連絡をしておけ。必ず明日は顔を出すようにとな。」
「役持ち全員っすね。了解しましたー。」
「皐、お前の力を借りるかもしれない。今日は早く寝てくれ。」
「了解です。」
「そして、澪。お前は・・・。」
司、言わなくてもわかりますよ。
「藍川さんですね?」
「流石。頼めるか?」
「えぇ。もちろん。明日の朝でいいですか?」
「あぁ。悪いな、わざわざ。」
「いえ、司の方が大変なんですから。」
「でも、世話になりっぱなしだ。」
「持ちつ持たれつと言うやつですよ。でも、嫌味はどうかと思いますよ?今日だって溜まった仕事があったんですし。」
「なっ!それとこれとは別だろう!」
「そうですか?」
「澪、案外根に持つんだな。」
「何か?」
「いえ。何でも。」
「会長ー、澪先輩ー!そろそろ帰りましょうー!」
「そろそろ帰るか。」
「そうですね。今日はこれで休戦です。」
「わかった。今日はこれで終わりだ。澪、帰ろう。」
「えぇ。」
帰る間際、生徒会室から見た窓の外は藍色だった。
まるで、これからの謎を深めるかの様に。




