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幸せなら手を叩こう

作者: 相沢つとむ

 太陽が赤く染まり、辺りを照らしていた。橙色になった歩道をトボトボと力なく歩いていた。

 ふぅー、とため息をついてネクタイを緩めた。

「やってしまったな」

 そう、ひとりごちてから車道を行き交う車を睨みつけた。

 もう少しだけ車の運転が上手かったらな、と思ってもすでに後の祭りだ。僕が失敗してしまったことにはかわりないんだし、そもそも、車の運転の問題ではない気がする。

 仕方なかったんだ、あれは。僕ではなくて、他の誰かがやっても失敗するのだ。なんて、心の中で言い訳をしてようやく歩きだした。

 公園が見えてきた。子どもたちの笑い声がする。

 柵によりかかり公園の中を見た。

 走り回る子どもにボール遊びをする子ども、犬の散歩をする中学生くらいの子にケンカをしている子どもたちもいる。あー、そんなに叩いたら泣いてしまうよ、と思った瞬間、一人の子どもが泣きはじめた。

 あははは、と笑ってから僕もあんだけ思いっきり泣けたらな、と考えた。大粒の涙を流して大きな声を出したらどれだけすっきりするのだろうか。

 背中から柵にもたれかかり、足下を見つめた。

 夕陽に照らされた柵の影が格子状に伸びて僕の影に重なっている。まるで犯罪者を閉じ込めている牢屋みたいだと思ってしまった。

 社会人四年目の結婚二年目。妻のお腹の中にはようやく一人目の子どもが宿ったばかりだ。

 まだまだこれからだ、というときに僕はなんていう失敗をしてしまったのだろうか。ごめんな、お父さんはこんなんだよ、とまだ男の子か女の子かもわからない未来の子どもに語りかけた。



 僕の会社は布団を卸売りする会社だ。昔の言葉で言うなら問屋だし、今の言葉で言うなら商社だ。

 今日は久しぶりに大口の注文が入ったのだ。すでに、お客さんが商品を待ってられる、ということだったのでそれを僕が配達することになっていた。

 しかし、行く途中スピードを出しすぎたせいか、カーブのときにハンドルが上手く回らずにそのまま縁石に乗り上げてしまった。

 急いで会社と警察に連絡をして、なんとか配達の段どんりをしようとしているとき、得意先から連絡が入り遅いのでもういらない、と断りの電話が入った。

 その後、会社からも得意先からもバッシングを浴びた僕は、まだ会社内で仕事が残っているのにもかかわらず十七時半の定時で会社を出ていった。



 今日の失敗を思い出してまた頭を抱えた。明日、どんな顔して会社に行けばいいのだろうか。

 休んでしまおうか。もう、逃げ出してしまいたい。

 牢屋に捕まっている影も僕と一緒に頭を抱えていた。

 子どもの大きな笑い声が後ろから聞こえた。後ろを振り向いて公園の中を見てみるとさっき泣いていた子どもが手を叩きながら笑っていた。

 ケンカした子と仲直りでもしたのだろうか、一緒に笑って一緒に手を叩いた。

 そうか、泣いても笑ってしまおう。手を叩いて大きな声で笑って失敗を吹き飛ばしてしまえばいいのだ。

 前を向いた。牢屋に捕まった影ももう頭を抱えていない。

 歩きだした。しっかりと前を向いて。格子状の影から抜け出した。これで僕はもう犯罪者ではない。

 どこかの家からカレーの匂いが漂ってきた。そういえば、今日、僕の家もカレーにする、と言っていた。

 今夜のおかずはなんだろうな。

ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] それなりに興味のある一文が流れているところですね。 橙色になった歩道、ここに興味を惹かれて読みました。 [気になる点] なんとなく、シナリオが崩れている気がします。 [一言] ありがとう…
2014/02/10 17:12 退会済み
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