"死定了"
掲載日:2026/02/13
ビバークのつもりで入った雪中は、本当に暖かかった
問題は、『助かる見込みが無い』という事だ
山に行くとは誰にも話して居なかったし、着て居るものだって普段着同然だ
静かに過ごしたいから来ただけで、実のところ山の知識は皆無に等しかった
眼前が、絶えず朦朧として居た
空腹によるものだろう
ポケットに入って居る、君から貰ったチョコを思い出した
冷え過ぎて棒のように固まっている5本の指で、なんとか包みを解いていく
右も左も前も後ろも雪だし、足の下も雪だ
当然だろう、死をかろうじて回避する為に雪に潜って居るのだから
チョコを口に入れると、少しは眼が視えるようになった
自分の指が紫みたいな色をして居て、ぎょっとする
飢えて居たのか、チョコは瞬く間に無くなってしまった
飢え死にしかけて興奮しながら食べたのか、指を少し噛んでしまった様だった
血が出て居るのに、少しも痛みを感じない
背筋が段々と冷え始めて居た
上を視る
唯一雪に埋もれて居ない、頭上の景色を
暗くて解らないが、吹雪は依然、終わる事無く吹き荒れ続けて居た
「助かりますように」
言葉が、口を衝いて出た
もう腹が空き始めて居た




