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桑道家抄:理屈っぽい私と、エントロピーな日常の謎  作者: コワモテ
行方不明の荷物

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3/9

比翼:すれ違っていた翼

あれから、見守りGPSは見つからないまま月を跨いでいた。宅配会社や販売元に問い合わせもしたが、発送も配達も正常に完了しているという記録が確認されただけだった。


ミサキは予定が狂うことをひどく嫌う。レンの入学準備が進まない苛立ちは、いつしか私への不信感へと変わっていた。


自治体の案内によれば、明日から資源ごみの回収曜日が変わるらしい。予想していた通り、ミサキのシフトの都合で担当は私になった。猫のトイレ掃除とで分担していたが、両方を私が担当することになるのは致し方がないと理解している。


猫からイタズラされる心配がないため、キッチンに集めておける空きビン、空き缶、ペットボトルを先に仕分ける。その後で、手間のかかるダンボールを各部屋へ取りに行くのが習慣になっていた。


洗面所に入ったとき、洗濯機の上の棚に山積みになった未開封の箱が目に入る。ミサキがパートに出るようになってメイク落としの使用頻度が減ったものの、定期購入を解除するのは面倒だという理由で、発送の間隔を長くして継続したのだ。もう最初の山は天井まで届き、2つ目の山が生まれていた。


「まったく、よく溜め込んだものだ」

呆れて首を振ったその時、洗濯機と壁の隙間に茶色い箱が挟まっているのが見えた。毎日の脱水の振動で、棚の端に近い新しい山から滑り落ちたのだろう。私は手を差し込み、そのダンボール箱を救出した。思った通り中身が入っている重みもある。


「山の成長に手を貸すことになるとは…」

そう呟いて、棚に戻そうと頭上に持ち上げたとき、私の指先は止まった。


違和感。積まれている箱の群れに対して、手の箱は仲間はずれのように感じる。見比べてみて違いに気付いた。山の箱は側面にブランドのロゴと商品名が印字されている。だが、今拾い上げた箱の側面は無地だった。


「あったぞー!」

私の声に、リクとレンが駆け寄ってくる。ミサキはキッチンから手が離せないようだった。


「これ、僕の!?」

レンは待たされた分だけ嬉しかったようで、同じ物を持っている兄に自慢している。


「信じられない!そんなところに?」

メイク落としの箱とGPSの箱は、どちらも宅配会社の規定サイズで、形が全く同じだった。帰宅直後の慌ただしい時間、ミサキは玄関にあるそれを「いつもの定期便」だと思って、そのまま洗面所へ運んだのだろう。


見つけてすぐにミサキが来ていたら、もしかすると苛立ちをぶつけていたかもしれない。子ども達が先に来てくれて、レンの喜ぶ顔を見たあとだからか、ミサキが荷物の場所を自分で分からなくしてしまったことも、すっかり忘れていた。


「あれ、トオル?グリーンを注文したんじゃなかったの!?」

「えっ!」

うっかり間違えて、リクと同じブルーのGPS端末を注文してしまったようだ。私たちは顔を見合わせ、お互いのミスをかき混ぜるように、久しぶりに笑い合った。


資源ゴミを出し終えたその夜、私はふと考える。


色々な偶然が重なって起こった事件だった。時間はかかったが、最後には笑って解決できて本当に良かった。時間はかかったが。


時間。半年をかけて積み上がった箱の山は、果たして偶然の重なりだけで生まれるものなのだろうか。見慣れたはずのダンボール箱に、異物がまだひそんでいるような得体のしれない不安を、私は覚えたのだ。

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