表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桑道家抄:理屈っぽい私と、エントロピーな日常の謎  作者: コワモテ
おばけのコマ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/19

水明:更新される定義②

「リク、ガイスターするぞ!」


私は急いでリビングに戻り、リクを呼んだ。6×6の盤面は、実家の新聞紙を折りたたんで作った。トランプのデッキから1〜8のカードを抜き出して、赤と黒のペアに分ける。半分を盤上に並べ、残りを手札にする。


「いいかリク。パパの手札にある数字と同じカードが『悪いおばけ』だ。それ以外は『良いおばけ』だぞ」


リクにはまだ少し難しいらしく、ミサキがサポートについてくれた。


「コマを取ったときに、相手が同じ数字の手札を出してこなかったら、そのコマは良いおばけってことだよね?」


「そういうこと」


ゲームが始まると、トランプ版ガイスターは驚くほど自然に機能した。カードはすべて表向きで、数字が見えていても構わないし、手札と盤面のカードを見比べるときの目線で、コマの善悪がバレてしまうことも無さそうだ。


「パパが取ったのは、悪いおばけでしたー!」


リクが勢いよく手札を捨てる。悪いおばけを相手に取らせた時、手札から同じ数字のカードをバシッと出すカタルシスは、本家以上かもしれない。


リクもガイスターをやり込んでいるだけあって、いい勝負になったが、手札を捨てるのが楽し過ぎて、お互いに悪いおばけを3つずつ取っていた。


「リク、もう気軽に取れないな」


負けるのが怖くて相手のコマが取れないということは、出口からの脱出という第三の勝利条件でしか、勝負がつかない展開になってしまった。敵陣出口までのスピード勝負は、リクのほうが一手早かった。あとは出口を守っている私のコマ次第だ。良いおばけならば脱出できてリクの勝ち、悪いおばけならば4つ取らせて私の勝ちだ。


「パパのコマが悪いお化けだと思ってるでしょ。もしそうだとしても、……取らないと次のターンで、パパの攻めてるコマが出口に着いちゃうからね〜」


ブラフで言った通り、守っている私のコマは悪いおばけ。つまり手札にはコマと同じ数字のカードが残っている。一手前で読み間違えたフリをして、わざと負けることもできたのだが、それは相手に失礼というものだろう。リクが私の4枚目の悪いおばけに手を伸ばす。これを取れば、私の勝ちが決まってしまう。楽しい旅の思い出を勝利で飾ってやりたいが……。


「パパは取らせたいフリをしてるだけで、本当は良いおばけだー!」


リクが私の悪いおばけのコマを取ったその時、新聞紙で作った6×6の盤面の上を、猫が横切った。


(……シュレディンガーの猫)


善悪の重ね合わせだ! リクが取ったコマはまだ、悪いおばけと良いおばけが重ね合わさっている。手札を明かすことで、悪いおばけだと確定するならば、もし私が手札を明かさなければ、「良いおばけ」として確定するのではないか?


「くっそー、その数字のカードは持ってないや〜。逃げ切られた。出口から脱出されてパパの負けだぁ」


私は大げさに悔しがってみせた。リクが嬉しそうに飛び跳ねる。


「やったー! パパに勝った!」


ミサキが私を見て、小さく笑った。気づいているのかもしれない。私もオトナになったものだ。子どもが生まれる前は絶対に勝負に負けたくなかったのに、今では子ども達が楽しんでくれることが、一番の喜びだと知っていた。


「トランプがもう1つ見つかったよ〜」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ