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桑道家抄:理屈っぽい私と、エントロピーな日常の謎  作者: コワモテ
おばけのコマ

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16/19

水明:更新される定義①

翌朝、私は昼前まで寝ていた。日本酒を飲み過ぎたようだ。ドスンと腹の上に重みを感じる。


「パパ起きてー! お腹すいた!」


子どもたちの容赦ないモーニングコールだった。「お昼どうする?」と母に聞かれ、私が反射的に「卵かけご飯!」と答えると、ミサキと子どもたちも賛同してくれた。実家の醤油はとろみがあって甘い、いわゆる「刺身醤油」に近いタイプだ。醤油差しのフタは記憶の中の赤色ではなかったが、出てきたのは見覚えのある真っ黒な液体だった。ドキドキしながら、崩した卵に回しかける。混ぜ切らず、白身と黄身と醤油がまだらな状態にするのが私の好みだ。箸ですくって口へ運ぶと、記憶の中の味とぴったり一致した。


「これだ……」


あの頃の思い出の味そのものだった。裏の目的を達成して私が一人で悦に入っている横で、子どもたちは「甘くて美味しい!」と喜んでいるが、ミサキは「私はいつもの新鮮な醤油の方が好きかな」と苦笑している。


貧乏学生時代は卵すら買えず、マーガリンと醤油を茶碗の真ん中でご飯と混ぜて、それをおかずに周りの白米をかきこんでいた。父は卵かけご飯にバターを落とすのが好きだったが、私の味覚のルーツはそこにあるのかもしれない。父はところてんをきな粉で食べるような、少し変わった人だった。


食後、私はトイレに立った。住んでいた頃は和式だったが、父の体調が悪くなる前に洋式にリフォームされていた。老後を見越しての改装だったのだろう。


昨夜は帰宅してから、コンビニで買ったダブルクリップを使って、コマを試作してみた。クリップで挟めばトランプは自立するが、コマをドミノのように倒して、嘆くリクの姿がすぐに想像できた。試行錯誤していたら寝るのが遅くなってしまった。


スマホで時間を確認すると12:34。不思議とこの時間に時計を見ることが多い気がする。印象に残りやすいだけだろうか。スマホのロック画面には、宇多田ヒカルの曲のジャケ写が表示されていた。昨日の帰り道、途中まで聴いていたからだと思い当たる。


狭い空間ではつい考え事をしてしまう。ガイスターの本質と量子もつれの、無意識の連想ゲーム。6x6の盤面。自分だけに善悪が分かる。離れていてもつながっている2つの粒子。観測するともう一方の状態も確定する。状態の重ね合わせ。盤面は2次元、プレイヤーは3次元。コマとプレイヤーを結ぶ見えないつながり。相手から見るとコマの善悪は観測するまで確定しない。善悪の重ね合わせ。離れてもつながっている2つのカード。


「離れてもつながっている2つのカード」


声に出していた。盤面のコマとしてのカードと、対になる善悪を決めるためのカード。善悪を決めるカードを手札として持つのはどうだろう?


「……いけそうだ!」


最後にもう一押し。手札は善悪どちらにするか。ガイスターの醍醐味は、自分の「悪いおばけ」を相手に取らせた瞬間だ。ならば、手札と同じ数字のコマは「悪いおばけ」というルールが一番盛り上がるはずだ。


「リク、ガイスターするぞ!」

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