共鳴:バカ話の本質①
居酒屋に入ると、奥の席でイムラとアキヤマがこちらを指さして笑っていた。
「きた、きた」
「いやあ、だいぶ白髪増えたな」
「お前もな。ていうか、太った?」
「うるせぇ」
言葉を交わすと、あっという間に数十年の距離が溶けていく。2人とは高校時代からの付き合いで、卒業後は住む場所が遠くなったが、お互いの結婚式にも参列していた。
ビールで乾杯して、お互いの近況を伝え合う。嫁さんのことや、子どもの年齢の話をしていると、刺し身の盛り合わせが運ばれてきた。店員さんが丁寧に説明してくれる。アジ、イカ、マグロ、白バイ。
「白バイ!」
思わず声が出てしまった。
「父さんの好物なんだけどさ。ちゃんと食べたことなかったんだよね」
「トオルは地元を離れるのが早かったもんな」
「甘くて旨い!」
「この時期はたくさん水揚げされてるよ」
白バイ貝は父の大好物で、入院の合間に親族で会食したときにも、メニューには無いのに店の外で貝殻を見かけて、「あるならば絶対に食べておきたい」と店員さんに確認したくらいだ。
ビールを飲み干して、料理を追加注文する頃には、飲み物も日本酒に変わっていた。徳利とお猪口で注ぎ合っていると、自然と会話も盛り上がる。私は忘れないように、トランプでガイスターを再現する方法について、概要を伝えておくことにした。
「あとで、ちょっと知恵を貸してほしい相談ごとがあるんだよね」
「なんだ?出張のアリバイ工作なら乗るぞ」
「そんなんじゃねぇよ」
私が今日の出来ごと、ミサキがガイスターを置いてきてしまったこと、リクが残念がっていること、そして父が「トランプで遊べる」と言っていたことを話すと、二人とも興味が湧いてきたようだった。
「まあ、まだ7時過ぎだし、悩むのは話題が尽きてからでも良いんじゃないか」
まずはバカ話がしたい気分だった。
「親父さんが亡くなってしばらく経つけど、おばさんは元気にしてるか?」
「ああ、猫達の世話もあるし、前から庭で野菜を育てたりしてて、やることがあるから気が紛れてるんじゃないかな」
イムラが心配してくれる。アキヤマは父にちなんだエピソードをひねり出してくれた。
「そういえば、トオルが親父さんのオールドパーをこっそり拝借してきて、みんなで回し飲みしたことあったよな」




