迷宮:実家のあしらい方③
帰省を最高の思い出にしてやりたい。リクが楽しみにしていたガイスターを、実家にある物で代用できないだろうか。夕方、子どもたちが早めのお風呂に入っているあいだ、私は一人で考えていた。だが、その道のりは険しかった。
ガイスターには、おばけのコマが16個必要だ。おばけには善悪があり、自分だけに分かるようにコマの背中に赤と青の印が付いている。見た目で判別できないように、同じ形のコマを8個ずつ揃えるのはかなり難しい。
ふと、父が入院していた頃の電話で、ガイスターの話題が出たことを思い出した。肺がんで声が弱くなっても、電話越しでは必ず冗談を言って笑わせてくれた。「リモートで将棋でも指せたらいいのにね」と、私が軽口を叩くと、父は少し間をおいてから「昔は手紙で指す人もいたんだぞ」と返してきた。
「手紙で将棋はスゴイな! でも、お互いの情報が見えないゲームじゃ難しそうだね。例えば、ガイスターって知ってる?」
父は意外にもそのゲームを知っていた。
「船に乗ってると、波待ちの時間が長くてな。ボードゲームに詳しい連中が多いんだ」
海の上では手近なものでゲームを再現することはよくあるらしい。
「花札をトランプで再現しようとしたときは苦労したな。あれは素直に買ったほうがいい。でもガイスターなら、トランプがあれば遊べるぞ」
なんとなく分かった気になって、具体的な再現方法を聞かなかったことが悔やまれた。実際にトランプで遊ぶことを想像すると不可能に思えてしまう。だが、父の言葉が確かならば、鍵はどこかにあるはずだ。
一人では解明できそうにないが、今夜は高校時代の悪友たちと飲みに行く約束がある。バカ話に終始する可能性が高いが、一応相談してみよう。自由な時間を作ってくれたミサキに、感謝しなければならない。
私は玄関のうるさい引き戸の、あしらい方を思い出してから、ポケットにトランプを忍ばせて居酒屋へ向かった。




