迷宮:実家のあしらい方②
休憩もそこそこに、ミサキが荷解きに取りかかると、横で見ていたリクが突然叫んだ。
「あれ? ガイスターは? 持ってきたよね?」
「ごめん……あれ箱が大きすぎて、スーツケースに入らなかったの。置いてきちゃった」
ミサキが申し訳なさそうに手を挙げる。ガイスターはリクが夢中になっているボードゲームで、おばけのコマを動かして、相手の良いおばけを捕まえるか、自分の悪いおばけを取らせれば勝ち、というシンプルなルールだが、心理戦の要素が強く、大人も一緒に楽しめる。
おばあちゃんと一緒に遊ぶのを楽しみにしていたのだろう。リクの顔が曇り始めたのを見て、私はすかさずフォローを入れた。
「まあまあ、この家には面白いものがたくさんあるぞ。みんなで探検しに行こう」
リクは少し不満そうだったが、レンとアキラが「探検!?」と盛り上がり始めたので、気を取り直したようだった。
「おいアキラ、あそこの天井を見てな」
私が壁際にぶら下がったロープを引くと、ギギギ、という音とともに天井がゆっくりと開き、折りたたみ式の階段が降りてきた。
「うわぁ! 忍者屋敷だ!」
子どもたちの歓声が上がる。階段の途中にある倉庫と、この屋根裏部屋までは、私も父が作るのを手伝ったことがある。だが、押し入れの奥からつながる隠し倉庫の存在は、私も今まで知らなかった。子どもたちがそれを発見したときは、本当に驚いた。
父は本当に器用な人だった。1階の部屋の増築も自分でやっていたし、私が生まれる前には祖父と2人で車庫まで建てたらしい。この家は、父と祖父が作り上げた迷宮のようなものだった。
「かくれんぼしようよ!」
アキラが誘う。都会の自宅では、やり尽くしていたかくれんぼも、この迷宮のような実家なら無限に楽しめそうだ。はしゃぐ孫たちと私を、母とミサキが居間で微笑ましく見守っていた。
ひとしきり遊んだ後、私はリクの残念そうな顔を思い出していた。ガイスターを気に入ったきっかけは、リクがまだ小さかった頃だ。もとは私が好きで一緒に遊んでいたのだが、彼が考えた「コマを肩車すると2マスジャンプできる」「敵のコマに乗っかると無敵になる」という、自由な発想のオリジナルルールに、いたく感心した。私がとても喜んで褒めたことが、彼にとっての特別な体験になったらしい。
帰省を最高の思い出にしてやりたい。リクが楽しみにしていたガイスターを、実家にある物で代用できないだろうか。夕方、子どもたちが早めのお風呂に入っているあいだ、私は一人で考えていた。だが、その道のりは険しかった。




