帰り道、コンビニ前で別れたはずだったのに(1分で読めるショートショート)
【帰り道、コンビニ前で別れたはずだったのに】
今日は楽しかったなー。
そんな言葉が自然と口から溢れ出していた。
恋人が私の誕生日を全力でお祝いしてくれたんだもの。
つないだ手を大きく振りながら隠すことない笑顔でたわいもない会話をする。
しっかりしていていつも引っ張って行ってくれる彼女の手。
こんなに小さいだなと、並んだ彼女の短い影と一緒に見ていた。
でも終わりはどんな時も平等に来てしまう。
いつもお別れするコンビニの前。
名残惜しくてつい強く手を握ってしまった。
ちょっと困った顔を二人でして、お互いがお互いを見送った。
1人の帰り道は寂しくて、今日の思い出を何度も何度も嚙み締めた。
やがて家につき、門扉に手をかけたその時ーー。
遠くから聞き馴染みのある足音がいつもよりずっと早く響いてきた。
勢いを殺さず私の前までくると荒い息を整える事すらせず引き寄せられ抱きしめられた。
少しだけしょっぱい湿度のある香り。
「今日ずっと外だったから寂しかった」
最後に小さな声で『おめでと』と耳元で囁くと小さく手を振り夕闇に溶けていった。
「ほんともう!こういうところなんだよなあ」
うずくまりしばらく動けないでいた。