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全てが嫌になった夜に猫とコーラを|ちょっと凹んだ日常

嫌なことが重なった日。

私は全てに嫌われている。

そんな風に思っていた。

嫌なことが続いた夜って、どうやって今日を越えてきたかな。

心からやりたかったプロジェクトから外されたり、彼氏からLINEをブロックされたり。

私の実力不足、思いやり不足。

原因は私の中にある。

それが分かるからこそ、理解出来るからこそ、悔しくて、歯がゆくて。

生きる力が湧いてこない。


二つ前の駅で電車を降りて歩く夜道。

三十分くらいの距離。

冷たい夜風で頭が冷えると思ったけど、すれ違う多くの人々が全員幸せそうに見えて。

みんなが私を笑っているように見えて。


どこまでも沈んでいく心。

全てが消えてなくなればと、星が見えない空を見上げた。

私はここにいる。

だれか見てください、みつけてください、必要としてください。


見えなくなった明日。

小さくなった歩幅。

浅くなった呼吸。

私の足は動くことを拒んだ。

住宅街の真ん中。

生活音に囲まれた場所で。


「はー」


息が白くなるほど寒くもなく、和むほど暖かくもない。

少しずつ命が削られそうな夜。

せめて暖かいものを。

道端の自動販売機に手を伸ばす。

苦いコーヒー、甘いココア、しょっぱいコーンスープ。

色んなぬくもりがあった。


でもなんでだろう、私はなぜこれを?

ボタンを押して落ちてきたジュース。

黒くて炭酸で冷たいコーラ。


最後に飲んだのは何年前だろう。

記憶にすら無い。

握った手がかじかむ。


プルトップを開けると炭酸が抜ける音と、薬っぽいスパイスの香り。

ひと口飲むときつい炭酸と、歯が溶けそうな甘さ。

喉奥から食道まで焼く刺激。


今の私にとって、全部嫌いで全部ちょうどいい。

だってさ、望まれない私と望まない味だから。

マイナスとマイナスが体の中で混ざり合って、少しだけプラスになる気がするんだ。

無理やりな気休めだからこそ、そう思える。


いっぽいっぽ歩き出す。

ひとくちひとくち飲み干していく。

遠慮なくしたゲップと一緒に、嫌なことが少しだけ出ていった。

冷え切った体温が心地良い。


ようやくたどり着いたアパート。

明かりの付いてない部屋の鍵を開けた。

真っ暗な室内から近づいてくる足音。


電気をつけると小さな猫が行儀よくおすわりして、お出迎えをしてくれた。

まんまるな瞳と、ピンとたった尻尾。

スーツに毛がつくのを気にせず抱き上げた。

喉を鳴らしながら頬ずりをしてくれる。


「人ってどこまでいっても一人になれないものね」


腕の中のあたたかさ。

顔を舐めようとするのを、メイクを落とすまで待ってと止めた。

明日も私のご飯、君のカリカリ。

そのためにも頑張るか。

君が愛してくれる私のために。

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