2回入れ替わった荷物|恋愛コメディ
パジャマを好きな人と買いに行った。
好きな人が試着した服が私の眼の前に。
スーパーの二階にある激安な服屋さん、イヨーゴフク。
私は友達に手を引かれてそこに来ていた。
「寝るときのあったかいやつ欲しくてさ」
雑にたくさん並べられている服を端から見てる友達。
「最近急に寒くなったもんね」
私も買おうかなって隣で棚をあさる。
値段は魅力的なんだけど、何とも言えずださいなー。
「なにこの服」
友達が笑いをこらえた声でふるえてた。
手に持っている服を見ると、仁王立ちした微妙にリアルな猫が前面にプリントされたスウェット。
「キモイ、ダサい」
私もなんとかガマンしたけど、家だったらおなかを抱えて転げていたかも。
値札をみると三百円と書いてあった。
「……お手頃すぎる」
私の一言で友達がガマンできず噴き出した。
「あー、もう。
これ気に入っちゃった試着しよ」
一緒に着ようよと、同じ服を手渡された。
これ着るの?
私の中の美意識が少し拒否反応。
でもあの娘とのお揃い?
なら着るかあ。
試着室で制服を脱いでかぶる。
下着の上に直接着ても肌触りは悪くない、
それに思った以上にあったかい。
「なんで質は良いのよ」
胸のところにいる猫ちゃんに聞いてみた。
……だんだん可愛く見えてきた。
「どう?」
試着室からでると、ちょうど友達も出てきた。
お互いがお互いを見た瞬間、同時にしゃがみこんだ。
『だっさ』
あーもうだめだ。
あんな可愛い顔してる友人がこんなの着てるなんて。
息も絶え絶えに何とか私は立ち上がる。
「もうあれだね、これは買うしかないね」
「私もそう思うよ」
それからお会計を済ませた。
初めてのお揃いがこれっていうのは少しあれだけど、喜んでいる自分。
単純だなあ。
「ごめんトイレ行きたい」
私に学校のカバンと服が入ったレジ袋を渡してきた。
「いてらー」
近くにあるベンチによいしょっと座った。
することがなくて、足をぶらぶらさせて待っていると、ふと手元にある袋が目に入る。
左手のは私の服が入ったレジ袋。
右手のは友達の服が入ったレジ袋。
中身も袋もおなじだからもちろん見分けがつかない。
これってすり替えても気づかれないんじゃ?
あいつが素肌に着た服が手に入る!?
思わず立ち上がった。
でもこれって倫理的に良くないよね、でも、えええー。
私の心の悪魔が叫ぶ!
『欲しいんだろ?やっちゃえよ!ばれないから』
私の心の天使が叫ぶ!
『きっといい匂い!はやくはやく!』
全会一致だ!
素早くがさっと左右の袋を持ちかえる。
心臓がバクバクと音を立てていた。
やっちゃった、やっちゃった。
でもやったー!あの子が着た服だよ!
もったいなくて飾るしかないよ。
嬉しくて足を大きくぶらぶらさせた。
「おまたせ」
出てきた友達が私の顔を見て不思議そうにしてる。
見られてない!ばれるわけはない!平静をたもつんだ私。
「変質者みたいな顔してる」
「しっけいな」
外れてないだけになんかごめん。
ごまかすように私は立ち上がった。
「わ、私も行ってくるから荷物よろしく」
「ごゆっくりー」
トイレに駆け込んで鏡を見た。
うわ、赤っか。
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なんか友達がトイレに走っていった。
我慢してたの?
よくわからない。
渡されたふたり分の荷物をベンチに置く。
それにしても不用心ですなー。
服が入ったふたつの袋。
私は友達の服と自分の服をすり替えた。
あいつさっき下着の上に直接着てた。
そんなお宝を目の前にして黙ってはいられませんよ。
帰りにジップロック買って帰らないと。
密封してできる限り現状保存。
そして少しだけチンをすると匂いとかよみがえる裏技があるんだ。
しばらくこれで夜が楽しくなる。
「お宝げっとですな」
三百円でこれとかお得すぎんか。




